夢と魔法と心と悪⑤
学校帰り午後4時頃を回り、朱音の弟が帰宅してきたらしい。
弟らしき人物は、たまのと対面し驚いて硬直している。
すると朱音はすかさず双方の紹介を始めた。
「緑!あちらは猫田 たまのちゃん。」
「こ、こんにちは…」
「で、こっちが弟の 白牛 緑。」
たまのは、挨拶をしたが緑からの返事はたどたどしい一礼のみであった。
「たまのちゃんはね、野良の魔法使いかもしれないんだよ。ていうか十中八九そう!」
朱音は嬉しそうに弟にそう報告している。
「野良のって、魔法使いの家系じゃないの?」
緑は『野良の』と言う点が気になり、朱音に聞き返した。
「そう!魔法を感じることができるし、記憶にも残らないし。で、今スピリットの確認をするところなの!」
朱音はグイグイ話す。
「そ、そう、じゃ俺は課題があるんで。」
朱音の勢いに緑は、鬱陶しそうにしながらそう言って二階に上がって行った。
朱音は、頑張ってね! と課題には大げさな返事をし、たまのの方を見た。
「たまのちゃん、おまたせ。じゃあ、撮ってみてもいい?」
朱音はカメラをこちらに向ける。
たまのは、「は、はい!」と言って思わず立ち上がってしまう。
「じゃあ撮るよ!」と朱音がシャッターを切る。
撮れた写真に朱音はしばらく止まった。
その様子を見てたまのは、急いで駆け寄った。
たまのの、スピリットは小さな白い点が中心にあるのみであった。その周りは暗闇である。