夢と魔法と心と悪④
こうして、改めてリビングを見渡してみるといたって普通であった。漫画やアニメに見る魔法使いらしさは、微塵もない。最も全室見たわけではないが。
しばらくして、二階から朱音が戻ってきた。朱音は若干違和感を感じるデジカメらしき物を手にしている。
「おまたせ!」そう言って朱音は、手に持つ物を見せてきた。やはりカメラのようだ。
「このカメラで写真を撮ると、スピリットだけが写るの。これでなにか写れば、たまのちゃんは魔法使いってことになる。」
「まずは、私をとってみて。使い方は、普通のカメラと一緒だから!」そう言いながらカメラを、たまのに渡した。
たまのは、恐る恐るシャッターを切った。本当にデジカメと同じで、撮影された画像が液晶に映し出された。しかし、その写真には朱音は写っておらず真っ黒の背景に牛の様な白いシルエットが浮かび上がっている。
朱音がカメラをのぞき込んで言う。
「これが私の、スピリットの牛ちゃんです。ちなみにお父さんスピリットがお皿で、お母さんがドレスだよ。」
「え?両親どっちかと同じじゃないの?」
たまのは少し意外に思った。牛のスピリットが代々受け継がれているからこその『白牛』ではないらしい。
「意外なことにそうなんだ。私も小学生くらいまで同じだと思ってた。つまり、スピリットって言うのは完全にランダムらしいくて誰にどんなスピリットがつくかは予測できないんだって。」
朱音がここまで説明すると、玄関の開いた音がきこえた。
「あっ!弟が帰ってきたかも。」
午後4時頃であった。
カメラは魔法使いの技術者が作った市販の家電です。