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猫の消えた4月22日  作者: 汐見圭
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Appendix

 ある日、東京の偉い学者先生が、数年ぶりにこの町に帰省してきました。

 町長さん達はこれをこぞって歓待し、彼の散歩に付き添いました。

「この町の名前を猫復(ねこがえり)町とするのはどうでしょうか」

 ある時、とある廃墟ビルの前に手向けられた、すっかり枯れ果てた花束の跡を見て、先生はそう言いました。町長さんはきょとんとしてそれを見つめています。

「昔、この町で猫が消えた日があったでしょう」

「ありました。町中の野良猫や、首輪のついた飼い猫も含めて、町から全て消えてしまったのです。あれはたいへん不思議な出来事でした」

「実はあの翌々日に、事故に遭いながらも一名を取り留めた方が居ました。その人が言うには、『猫さんに助けられた』と言ってきかなかったそうです」

「そのニュースなら、朧気ですが存じております。私が六歳ぐらいの頃のお話ですので」

「――その方は、私の祖父に当たる人です」

 先生は、おじいさんから聞いた話を詳らかに伝えてくれました。

 どうやって猫に助けられたのか。

 そこでどんなものを見たのか。

 助かった後、町中の猫がいつの間にか戻っていたこと。

 そして、普段から猫と話をしたいと考えていたが、終ぞ叶わなかったこと。

「そして必ず、『必然の上にあぐらを掻かずに精進せよ』と言っていました」

「それは、どういうことでしょうか。お祖父様は、普段から猫と戯れていたからこそ、猫に助けられたということではないのでしょうか」

「それは、全く違いますよ」

 学者先生はもう何も言わず、ある程度のお金を寄付して、翌日には町を去っていきました。

 その翌年から、猫復(ねこがえり)町では、四月の二十二日を『猫無(びょうむ)の日』と呼ぶようになったそうです。

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