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1章3

 そして放課後がやってきた。


 授業が終わりを告げた途端一目散に鞄を背負い帰る人、部活動に精を出すべく部室へ仲間と共に行く人と様々だ。


 常に一人から多くても三人程にしかならない病室に何年もいた礼にとってはこうやって自分以外の意思を持った大勢の個体がいる空間というのは新鮮でもあり気持ち悪くもあった。


 で、智紘はと言うと。


 午後から結局授業には参加し、今はこうして友達と帰路に着くところだった。


 ちなみに彼女は午前中授業に出なかったにも関わらずなぜか先生からのお咎めも何もなく当たり前のように過ごすことが出来てしまっていた。


「(優秀だと授業をサボっても許されるとか? 高校というところは中学とは似てるようで色々とシステムが違うのかもしれない)」

「それじゃちーちゃん帰ろー!」


 智紘の友達A、名前を知らないため仮称。が彼女を連れて学校から出て歩き出す。


「ってちーちゃん!? 誰だそれは」

「いい加減やめてよ、その名前」

「えー、かわいいじゃん! 私このあだ名気に入ってるんだけどなー」

「私は気に入ってない」

「後なんだかんだ午後から授業出よって誘ったら出てくれたしねー」

「出なきゃ鹿子後でうるさいから」

「あはは、ツンデレさんめー」

「むー」


 頰を膨らませながらも美しさを維持しているという奇跡的な顔の作り。


「(僕が恋に落ちているからこれは完全に過度な表現になってしまっているのかもしれないが、とにかく恋というのは盲目なものなのである)」

「(そういえば確か昼休みに弁当持って智紘さんを誘いに来てたなー。ああやってお昼を誘って流れで授業まで参加させるってのが智紘さんの友達である鹿子さんの作戦なのだろう)」


 ああ、僕も一度でいいからちーちゃんと呼んでみたい。


 そんな心の叫びをそっと内にしまっておく礼。


「(今だって智紘さんの鞄を無理やり鹿子さんが奪って教室から出ることで放課後実験するという選択肢を無くさせているわけだもんな、なかなかの才女のようだ)」

「それより今日の山田さあ〜」


 帰りながらの女子高生二人の会話、しかも片方は恋い焦がれている女性とあっては耳を一瞬たりとも他に向ける余裕などない。


「まあ、ほとんどが鹿子さん発信な上に大体が先生の悪口なんだけどね」


 それに対して智紘は特に口数は決して多くはないものの時々見せる笑顔は僕が惚れた笑顔とは少しだけ違う信頼した友達に見せるものだった。


 どうやらあんなに無理やりでめちゃくちゃな鹿子のムーブは結果として人見知りな智紘さんの心を開いてくれているのだろう。


「(ああ……良かったね智紘さん。心を許せる友達が出来たんだね)」


 そう礼は中学の机に寂しそうに座っていた智紘を思い出し安心する。


「ってかちーちゃんさあ今日も午前中授業来なかったけどいつも理科室に篭って何やってんのー?」


 話は変わり智紘を問い詰め出すと鹿子。


 このこのーっと智紘の肩を攻撃するがそれは華麗にスルーされてしまう。


「目の錯角による実験。私は…早くお父さんの汚名を返上しなきゃいけないから」

「出た! またお父さん!そんな若い頃から志高くしてどうすんのさー。気楽にいこーよ」

「ダメ、私には時間がないから」

「時間がないかあ、確かお父さんって何かの研究者なんだったっけ?」

「うん、心霊現象の研究をしてて」

「え!?」


 礼はあまりの発言に耳を疑う。


「心霊って今の僕にタイムリー過ぎやしないか運命よ」

「ほほん? じゃあ、ちーちゃんはそれを引き継ぎたいわけ?」


 鹿子のその発言に表情が暗くなる智紘。


「(あれ? なんか雲行きが怪しくなってきてる?)」

「ううん、逆。お父さんそんなオカルトみたいな研究ばっかりしてるから大学から追い出されてしまったの。今でもそれが認められずに家で妄言ばかり唱えて夜遅くまで狂ったように研究という名のお遊戯をしているわ」


 その言葉からは刺々しさが痛いほど伝わってくる。


「(なんてこった、まさか逆も逆だったなんて。お父さんは間違ってなんかないってのに)」


 もし化けて出る術を知っていたら今すぐにでも目の前に出てきてヒュ~ドロドロな感じで脅かして嫌でも存在を証明してあげたい。


 礼は一番近くにいながらもそれが出来ないことにもどかしさを感じずにはいられない。


「そ、そんな言わなくても……。ゆ、幽霊だってもしかしたらいるかも? なーんて私は思うけどなー、なんて」


 智紘のそのあまりのお父さん批判に同情を感じたのかフォローを入れる鹿子。


 しかし、それは火に油となり。


「鹿子に何が分かるの! お父さんが論文偽造だってニュースになった時、当時小学生だった私が学校でどんな扱いを受けたか、鹿子には分からないでしょ!」

「ああ、ちょっと落ち着いてちーちゃん。何もそこまで言わなくてもって思っただけで」

「いいよ、別に鹿子は知らなくて。じゃあ私ちょっと用事あるから」


 智紘はそれだけ言うと駆け足で立ち去ってしまった。


 その場には鹿子だけが取り残されてしまう。


「あーあ、やっちゃったよ。明日からどうしよっかなあ」

「いや、どうしよっかなあじゃないよ! 早く追いかけないと!」

「そんなのしたって無駄だよ、こういう時って相手は大体頭に血が上ってて取り合ってくれないもんだし」

「通じた?今確かに反応したように感じたけどまさか鹿子さんって」


 ここは押すしかない。


「今反応したよね、僕はここにいるよ!僕を証明してくれたら全て解決するはずだよ!」

「あれ? 私今誰に文句言って……もしかして幽霊!?」

「そうだよ! ここに、すぐ横にいるよ!」


 しかし鹿子さんはこれ以上礼の声に耳を傾けることはない。


「ぎゃあああ! オバケ~!」


 鹿子はそそくさと智紘さんとは違う方の道を逃げていった。


 礼はそれを見て智紘の方が心配だったから智紘さんが消えて行った方を追いかけようとして。

 鹿子の言葉が頭をよぎり二人とは違う道をふらふらと当てもなく進むことにした。

次回は今日の夜九時です。

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