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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
学園編
34/62

7

 確かめたいことがあって、領地に戻り秘密基地へ向かった。


 雷に打たれて葉っぱで生い茂ることの無くなった大木は、借りてきた本に書かれているものと酷似していた。

 場所を変え、湖が見える位置に移動する。湖の大きさは違えど、この場所からの景色もとてもよく似ていた。

 本当に、同じものなのだろうか。


 大木に近寄り、ぽっかり開いた穴のふちに手を伸ばす。記憶の中のものより、穴が広がっているような気がする。朽ち始めているのかもしれない。


 穴の中に入り、そこから覗く青空を見上げた。


 **


 その日、クラスのみんなはどことなくソワソワしていた。何かあっただろうかと思い出してみるが、何も出てこなかった。

 スサナ様に聞くと、楽しそうに笑った。


「今度、魔法の模擬戦がありますでしょう? 今日はトーナメント表が張り出されるのですよ」


 模擬戦は、学年別に性別関係なく対人戦を行う。力差も関係なくランダムに相手を組み合わせられるので、誰に当たるかというのも大事なのだ。

 なるほど。それでソワソワしていたのか。


「今年は勝者にはいいものをくれるそうだから、張り切ってらっしゃるのでしょう」


 いいものが貰えると聞いて、張り切っているのは私も同じであった。だって、いいものが貰えるのだから。

 いいものが欲しいというのも本心だが、本来模擬戦の目的というのは、自分の力を確認するというものだ。言わば力試しというもの。

 自分の力がどれほど成長しているか分からなかった私は、力試しができるというのも楽しみにしていた。



 そして迎えた模擬戦。同じ組み分けには、ルルちゃんもいる。


「マーティナ、ちょっといい? 」


 試合が始まるのを待っていると、リノに呼び出された。頷くこととで了承し、二人で壁際へ移動する。


「ルル姉とあたるでしょ? 」

「順調に勝っていけばですが」

「その時は、変に手加減なんてしないでよね」


 拍子抜けである。

 てっきりルルちゃん大好きなこの人は、私に手加減でもなんでもしろと言ってくるかと思っていた。見くびっていたようだ。


「分かっていますよ。ちゃんと真面目に戦うつもりです」

「下手な小細工はルル姉に効かないからね」


 でも、と思う。

 実はリノも同じ組み分けにいて、私よりも先にルルちゃんと戦うことになるのだ。だからさっきの言葉は、まるでリノが負けると決まっているかのようだ。

 リノは決して弱いわけではない。ルルちゃんととても力の差があるわけではないのに。


「リノこそ、狡をするのではないですか。ルル様を勝たせてあげるために」

「そんなことしないよ! 」


 心外だとでも言うように、リノはむくれてルルちゃんの方へ向かってしまった。怒らせるつもりなんてこれっぽっちもなかったのに。


「見ていればわかるよ」



 しばらくして私の初戦が始まった。相手は同じクラスの女の子だ。

 私が火属性を得意としていることを知っているため、水属性の攻撃を使ってきた。が、私は得意としているだけで、他が使えないわけではない。

 風属性を使うかたわら、こっそり無属性を発動させ少々魔力を頂戴する。

 無属性を使えるのは内緒にしているので、決してバレてはいけない。だったら使わなければいい話だが、私は勝っていいものを貰うつもりなのだ。魔力を温存していかなければならない。

 何度か裏をかく攻撃をくらわせ、無事に勝つことが出来た。



 それから何人かと戦い、次の相手を待っている時だった。

 隣のフィールドで歓声が上がる。勝者が決まったようだ。誰になったのかと見てみれば、そこにはルルちゃんとリノがいた。

 ルルちゃんとリノは向かい合い、握手を交わしている。


「お二人とも、お疲れ様です。どちらが私のお相手ですか? 」

「私です。マーティナ様」


 ルルちゃんか。

 奇しくもリノの言っていた通りになった。

 ルルちゃんが準備のために離れているすきに、リノに話しかける。


「話していた通りになりましたね」

「見ていて分かったでしょ? 」

「あ、いえ。私もちょうど対戦中だったので見ていないのです」


 そう言うと、ため息をつかれた。呆れを含んでいる。


「ルル姉は強いんだ。それ以上に強制力が働く」

「強制力? 」

「うん。ゲームの流れに持っていこうとする力」


 言い訳に聞こえるかもしれないけど、と前置きしてからリノが説明する。

 曰く、いくら優勢に持っていこうとも、いつの間にか劣勢に立たされているのだという。ルルちゃんをゲーム通りに勝ち進めさせるために。

 ルルちゃん自身の強さも影響しているらしいけど。


「けど、マーティナには効かないようだね」


 その言葉に、素直に頷く。

 だって、ゲームのマーティナは勝ち進むことはおろか、そもそもこの大会には出場していないのだから。きっと、家の力でも使ったのだろう。だから自分の力を過信していた。


「だからね、マーティナ。頑張ってよね」


 リノが真面目な顔で、珍しく素直に言うものだから、吹き出すのを堪えるのが大変だった。


「ありがとう」


 **


 対峙したルルちゃんは、やっぱり強かった。

 治癒の使い手ということが有名であるが、元が真面目で優秀なのだ。それに加え部活でも魔法の技術を高めている。弱いはずはなかった。


「!! 」


 ルルちゃんが放った魔法が、動きが遅れたために避けきれず頬を掠めた。そこだけ熱く感じる。血でも出ているのかもしれない。

 ルルちゃんは顔を狙ってきたか。なかなか容赦がないようだ。


「なかなかやりますね」

「お褒めに預かり、光栄です」


 ルルちゃんが肩で大きく呼吸をしている。今の攻撃で、かなり魔力を込めていたのかもしれない。

 うん。最初が肝心だものね。


 再び放ってきた魔法を、今度はしっかり避ける。土埃がまい、竜巻が出現しこちらへ向かってきた。

 この属性は、おそらく風属性と土属性の混合物だと考えられる。本来なら相性の悪い組み合わせだ。

 やっぱり、ルルちゃんは強い。魔法の扱いに慣れている。


 厄介な組み合わせだな。


 まずは土埃を大人しくさせようと水属性のものを発動させる。上に手を伸ばし、雨のように大量の水滴を振らせた。


 さあ、土埃はおさまった。残りは風の渦だけ。魔法を避けつつどうしようかと考えていたら、いいことを思いついた。

 ――弾いたように見せかけ、無属性を使ってみよう。

 ふふんと笑った私に気づいたのか、ルルちゃんが不思議そうに見ていた。



 この競技大会は、場外に行くか制限時間まで終わらない。早めに決着をつけたいものだ。

 その気持ちはルルちゃんも同じようで、渦の速さを加速してこちらに向かわせてきた。ならばと私もスピードの速い渦を発生させ、ぶつけさせる。弾いて、無属性を使う。

 かなりの魔力が入ってきた。やっぱり決めどこにしたのかもしれない。

 弾くものが無くなった私の出した渦は、真っ直ぐにルルちゃんの方へ向かっていく。そのまま場外へ押し出した。



「マーティナ様。無属性を使いましたね」


 試合後、ルルちゃんが恨みがましそうにこちらを見て言った。無属性を使えると知っているので、気づかれてしまったようだ。

 何も言わずへへっと笑うと、ムッとルルちゃんが頬を膨らませた。可愛い。可愛い子がやるとさらに可愛い。


 つつきたい衝動に駆られたのを、必死に我慢した。



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