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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
学園編
32/62

5

 私がお腹の中にいた時から記憶があったと伝えると、とても驚かれた。リノが記憶を思い出したのは、ヒロインちゃんが学園に入学すると聞いた時だったらしい。

 元々このゲームのヘビーユーザーで、推しはヒロインちゃん。記憶を思い出す前から好意は持っていたそうだが、それが加速したらしい。


「この話は内緒です。他言無用。分かってますよね」

「分かってる。悪かったよ」


 私がルルちゃんに対し何もしていないことなど、リノが言ったことについて尽く否定し説明すると、ようやく理解してくれた。


「本当に俺の知ってるマーティナとは違うんだね」

「そんなことはありません。ちょっと性格は違うけど、エド兄様や近しい人を大切に思っていることは、変わっていません」


 ゲームでは少し暴走してしまっただけなのだ。大切に、大好きだと思っていたからこそ、取られたと思い寂しくなってしまったのだろう。


「ところで、あなたは」

「リノって呼んでよ」

「では私のこともマーティナと呼んでください、リノ」


「……変わってるね、あんた」

「マーティナと」


 再度念押しすると、嫌な顔をしながらも頷いてくれた。身分について嫌悪していたのに、その壁を壊そうとすると突き放そうとするとは。よく分からないものである。


「それで、リノはこのゲームを全てクリアしたのですか? 」

「当たり前だよ。全スチルを解放することに力を注いでいたからね」


 では、隠しキャラも知っているのか。ならば話は早い。


「私は安全かつ迅速に魔王を倒そうと思っているのです」

「ふーん。俺は別に興味無いけど。いいよ、手伝ってあげる」


 それから、ルル姉との幸せのためだからね、と付け足す。この人はツンデレ属性でもあるのかもしれない。


「ありがとう、リノ」

「下の者にそう簡単に……」

「友達になったと思っていましたが」


 そう言うと、照れたのかつっけんどんに、別にいいけど、とボソッと呟いた。

 私は結界を外してから、セザールに近づく。


「話は終わりました。帰りましょう、セザール」


 不審がっているようだったが、そこは出来る従者である。セザールは荷物を抱えた。


「先生……は寝ているようですね。放っておきましよう。では、また明日」




 馬車乗り場への道すがら、セザールは遠回しにリノとのことについて尋ねてきた。何も知らないようだったから、防音の結界はちゃんと機能していたようである。


「リノはやっぱり思い違いをしていたみたいです。あ、私、リノと友達になったの」

「どういった流れを経たら、自分を悪し様に言っていた人物と友人関係になるのですか。私は殿下になんと説明すればいいのか」


 先程せっかく出来る従者だと褒めたばかりなのに、セザールは珍しく額に手をあて、呆れを隠しもしなかった。なぜ呆れられているのか。


「そのまま伝えればいいのじゃない? 友達になったというのはまぎれもない事実よ」


 よく言うじゃないか。昨日の敵は今日の友と。こちらとしては敵だったつもりは無いが。

 セザールはなおも納得出来ていない様子だった。


「まあ、いいか」


 記憶持ちということで意気投合したわけだから、セザールや殿下に詳しく説明することなど出来まい。理解など出来ないだろうし、変なことを言っていると思われかねない。




 私はこの日、初めて魔王に対する協力者を得た。

 けれど、まだまだ情報は足りていない。隠しキャラにも会っていないし。


 精進が必要だ。


 **


 あれから、リノとは何度か話をするようになった。リノはヘビーユーザーだっただけあって、私よりもゲームの知識が豊富だった。

 リノばっかりに頼ってしまうのは申し訳ないので、私も努力を怠らないようにした。


 そして今日は学園の図書室に来ている。入学してから何度か来ているが、ここは蔵書数がとても多い。私が気になっていた魔族関連だけでも、百冊近くもあった。この数は王立図書館にも劣らない。

 そこから魔物や魔王についてを調べてみる。


「……ないな」


 魔物が遠方で現れてるようになってから年月が経っているのに、詳しく書かれているものはなかった。


 ……探し方を変えてみよう。


 今まで魔族や魔物、ひいては魔王についても調べていたが、魔族というのは私たちの祖であることを忘れてた。つまりこの国の建国に魔族は関わっている。

 以前ミラルダ先生に、魔族と魔物のは近いものであると聞いた。建国について調べれば、魔物について分かることも出てくるかもしれない。


 建国についての本を読むために、カウンターにいた図書委員の方に棚を尋ねることにした。黒髪にメガネをかけた(見た目で判断してはいけないが)真面目そうな男性だった。


「お尋ねしてもよろしいですか」

「なんでしょう」

「魔族についてと、この国の建国について調べたいのですが」


 図書委員の方は、適当なものを見繕ってくれ紙に書いてくれた。本の名前と、数字が書かれている。この数字は整理番号だろうか。どの棚に入っているか、分かるようになっていた。


「参考程度に。これらの本なら、どちらのことについても触れていると思います。詳しく知りたいなら、こちらの本です。左奥12番目の棚です」

「ありがとうございます」

「いえ」


 ものの数分で紙を渡してくれた。本の情報が頭の中に入っているのだろうか。すごい。私はこの人へ密かに尊敬の念を送った。

 本棚についてから、とりあえず見繕ってくれたものを探した。初めの本には、確かに私が求めていた両方について載っていた。


 本によると、魔族同士の戦いが起こっていたらしい。人間もそこに加わっていたとか。勝ち残った魔族と人間が、新しい国つまり現在のこの国を立ち上げた。魔族と人間の共生する国を目指していたらしい。

 この魔族同士の戦いというのが、以前ミラルダ先生が言っていた魔王派とそうでない派の対立の可能性が高い。


 他国には、魔力のあるものの方が少数の所がある。探せば、魔法なんて存在しない所もあるだろう。魔力が少なからず流れている所というのは、多少は魔族からの恩恵を得ているということらしい。

 言い換えれば、人間には元々魔力など流れていなかった。


 そんな人間が、敵対する魔族……魔物と戦うことなど出来るのだろうか。普通の剣や他の武力で倒すことなど難しいのではないか。


 新たな疑問が生まれてしまった。


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