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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
学園編
28/62

1

 今日入学式を迎える訳だが、改めてこのゲームについて思い出してみる。


 国立の学園に平民でありながら高い魔力、それから光属性の中でもとても珍しい治癒の使い手、ヒロインちゃんが入学することから始まる。


 同級生の王子や、優しい先輩。幼なじみとの交流などが、初めのうちの目的だ。次第に恋愛要素も増え、自分をいじめる人の従者とロミジュリ感を味わえたり、相手の心に寄り添って問題をクリアしていったりする。

 ただし、それだけではない。現時点では友人であるが、その人のレベルも上げていかなくてはならない。推し一人を上げてしまえば、すなわち魔王との決戦でゲームオーバーとなる。

 好感度を上げつつ、全体の戦力も上げていかなくてはならないのだ。


 かつ! 魔王になってしまった人を見つけ出し、助けなくてはならない。大変面倒臭……一筋縄ではいかないものであった。



 そんなことを考えていたら、学園の入口に着いてしまった。早めに行きたいと無理を言ったので、生徒の姿はまばらである。

 馬車から降りて、事前に知らされていた教室へ向かう。セザールとはここでお別れだ。


 早めだったからか、教室には一番乗りであった。席は自由らしく、窓側の日向ぼっこのできる一番後ろに座る。先生からはよく見える席だと聞いたことがあるが、そんなことは関係ない。お昼寝のできるベスポジである。

 しばらくしてぽつぽつと生徒が入ってきた。ゲームでは違ったが、殿下とクレイグも同じクラスのようだった。


「マーティナ様。同じクラスですわね」


 明るい声を響かせたのは、スサナ様であった。初めての場所に、知り合いがいるというのは安心するものである。

 軽く話をしていると、教室の中が少し騒がしくなった。誰かが入ってきたようだ。殿下は既にいるし、誰であろう。


「誰か来たのですか? 」

「マーティナ様。ご存知ありません? 治癒の使い手様ですわ」


 ヒロインちゃんか。変更しない名前は、ルル・オッグ。艶やかなブロンドの髪は長く、サラサラだ。


「お名前は、何と言うのですか」


 渦中のヒロインちゃんを遠目で見ながら聞く。風がないのに髪が靡いているように見える。これがヒロイン補正か。エフェクトがかかってんじゃないかってぐらいにキラキラしている。


「さあ? 挨拶しに行きましょ」


 スサナ様が私の手を引いて、ヒロインちゃんの元へ向かった。公爵家と実質侯爵家である辺境伯の伯爵家の貴族令嬢が、いきなり話しかけに来たらびっくりしてしまうだろう。例えこの学園が身分の差が無いといっても、気にする人は気にするものである。

 そんなふうに訴えても、スサナ様はどこ吹く風。気にしていないようだった。


「初めまして。スサナ・ミドルトンと申します。これから仲良くしてくださいね。ほら、マーティナ様」

「マーティナ・トラヴァースです。よろしくお願いします」


 キラキラした人を前に、少し緊張して硬くなってしまった。だって可愛いんだもの。

 ヒロインちゃんはにこやかに笑って、こちらを向いた。


「……初めまして。ルル・オッグです。よろしくお願いします」


 やっぱり可愛い。すんごい可愛い。そりゃキャラ達が惚れるわけだわ。


 悶える私と違い、スサナ様はルルちゃんと仲良さげに話している。誰とでも仲良くできるのだろうけれど、ルルちゃんもなかなか物応じしない性格なのだろうか。

 傍目には和やかなムードの私たちを見て、クラスの人も静かになった。私たちが普通に話していたからというのもあるのだろう。物珍しそうに見ていたのに、それが変わっていた。いい影響を与えたようだ。


 少しして、担任の先生がやってきた。

 顔の良い、けれど無精髭が生えている。そこが残念な先生。そう攻略キャラである。禁断の恋というやつだろう。


「君たちの担任のラルフ・マッケランだ。専門は魔法。まあ、よろしく頼む」


 気だるげな、やる気のなさそうな先生である。顔が良いだけのようだ。あとは声か? 低くいい声だ。

 私が失礼なことを考えてる間に紹介や説明が終わり、入学式のために移動することになった。エド兄様が在校生代表の挨拶を話していた。


「エド兄様、さすがです」

「マーティナ様のお兄さんなんですか? 」


 私の漏らした声をルルちゃんが拾い、可愛らしく小首を傾げた。よくぞ聞いてくれた。ゲームとは違くなってしまうけど、エド兄様を売り込むことにした。この子いい子そうだし。


「はい。エドウィンといいます。優しくて頼もしい兄です。しかも文武両道な尊敬できる方なのです」


 スサナ様がまた始まったと苦笑しているが、気にしない。私はエド兄様の素晴らしさについて、力説した。そうしたら、先生に睨まれてしまった。式の最中であることを忘れていた。


「お兄さんが大好きなんですね」


 ルルちゃんに微笑まれてしまった。そうだけど! 望んでいた結果とは違くなってしまった。ここで興味を持って貰わなければいけないのに。



 帰宅の時間になって、私はエド兄様と帰るために教室で待っていた。エド兄様は学生会というものに属しているらしく、少しだけその仕事が残っていたらしい。

 教室にも人がいなくなって、自分の席で貰った教科書を読んでいると、殿下がやって来た。今から帰るところなのかもしれない。


「やあ、マーティナ。まだ帰らないのか? 」

「エド兄様を待っているのです」

「そう。エドウィンといえば、君は式中に彼を力説していたようだね。クレイグから聞いたよ」


 指摘され、うっと言葉につまる。クレイグは席が近かったので聞こえていたのだろう。それを殿下に告げ口をしたということか。


「君は本当にエドウィンが大好きなんだね」

「はい。大好きです」


 間を開けずに答えると、殿下にも苦笑されてしまった。何かおかしなことを言っただろうか。


「アルノルフ様はどうなんですか? お兄様いらっしゃいますよね」

「兄上か」


 そう言ったっきり、黙ってしまわれた。天才過ぎて同じ人間に見えないらしい。殿下の方こそおかしなことを言う。


「私、以前エド兄様を観察したことがあるのです。エド兄様のようになるために。そのおかげで、エド兄様の色々なところを発見できました。もっと好きになりました」

「……僕のこともたまには観察していいんだよ」

「それは……」


 そんなことを言うなんて、殿下は変わっている。見られたいだなんて。

 参考にしてみるよと言い残し、殿下は帰られた。



 何冊目の教科書を読み終わった頃、仕事を終えたエド兄様が迎えに来てくれた。疲れきった顔をしている。


 ――セザールに何か、疲れを取れるようなハーブティーを淹れてもらおう。本当は私が淹れてあげたいけれど。


 そう考えながら、馬車乗り場へ向かった。


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