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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
生まれてからのいろいろ編
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 ようやく! ようやく帰って参りました、我が家へ!



 たった数時間であったはずなのに、何日も帰っていなかったように感じるとは、不思議なものである。


 家に着いてすぐに、ローラやセザールにただいまの挨拶をして、まだ帰っていないお父様を待つ間、私は蔵書室に向かった。

 言わずもがな、殿下が使っていた転移のような魔法についてである。ミラルダ先生が次に来てくれるまで日があるし、この家にはないと思うので、時間さえあればこの間行けなかった王立図書館に行く予定だ。


 ワクワクして、自然と足も軽くなる。

 スキップをしてしまいそうな程だ。



 蔵書室に付くと、片っ端らから読み始めてみた。

 案の定、どこにもなかった。


「セザール。今日これから王立図書館へ行ってもいいかしら? 」


 日は傾き始めていたし、望みは薄そうだったけれど試しに聞いてみた。

 セザールは首を捻って考えたあと、首を横に振った。


「なりません、お嬢様。時間も遅いですし、今から行ったところで、開いていないかと。それから、そろそろ旦那様がご帰宅予定の時間ですよ」


 セザールの言葉を聞いて、慌てて壁に架かった時計を見る。

 王立図書館の閉館時間はもう三十分後に迫っていたし、お父様のご帰宅もあと十数分後であった。


「そう……残念だわ。わかりました。また後日にします」


 渋々頷く。ああ、また行けなかった。

 そう思い、背を向けているセザールに隠れて、肩を落とした。




 しばらくして帰ってきたお父様を出迎えて、その頃ちょうど夕食の用意が整った。


 スコーンを頂きすぎてあまりお腹の空いていなかった私は、こっそり夕食前に料理長に私の分だけ少なくしてもらうように頼んだ。

 料理長の作ったものはなんでも美味しいのでとても心苦しいが、お腹も苦しいので仕方がない。


 よく噛んで味わっていると、お父様が今日のことについて話し出した。


「今日は突然悪かったね。どうだい、楽しんだかい? 」

「ええ、お友達も出来ました」


 それは良かったね、とお父様は笑ってくれた。けれどただそれだけで何も言わない。

 もともと特に何かを期待しているようでもなかったから、別にいいのかもしれない。


「父様。そのことについて、後で少しお話ししてもよろしいですか」


 ひとり安心していると、エド兄様が真剣な顔をしてお父様に話していた。

 また怒られるのだろうか……と思いながらも、私の名前は出なかったので大人しく食事を楽しむことにした。


 あまりお腹が空いていなくても、美味しいものは美味しいのだと実感した。



**



 マーティナが食後の紅茶を楽しんでいる頃。


 エドウィンは父親の部屋で、仏頂面で椅子に腰掛ける自分の父親と、対面していた。


「それで、話とは婚約者候補のことであったか」


 何を話されるか分からない警戒心からか、父親の声はどことなく硬い。


「はい。アルノルフ殿下はマーティを筆頭にするつもりのようです。ですが……」


 そこで区切り、一息に言う。そこまでは帰りの馬車に乗る前に、耳打ちで聞いたものだ。

 そしてここからは控え室で得た情報。


 リュシールの家以外は王様が見繕った家らしく、うち一つの家は打診中だとか。その他もそこまで絶対ということではないようだ。と。


「なるほど。たしかうちと同格の公爵家だったな。そこに頑張ってもらうほかないか」


 父親は長くため息を吐いた。エドウィンもまた疲れたようにそれに倣った。



 そう。

 二人は王家へマーティナを嫁に行かせるつもりは無いのだ。苦労することがわかっていて、誰が可愛い娘、妹を嫁がせるものか。

 お茶会へだって、殿下直々のお誘いでなければ行かせるつもりはなかった。


「もとはといえば、エドウィン。お前のせいではないか。殿下に話をしなければ……。まあ、言いたくなるのも分からないではないが」

「そうですね。興味を持たないはずないですから。誤算でした」


 エドウィンもまさか自分が会う度に妹の話をしているとは思っていないし、父親もまた同じことをしているとは思っていない。


 家では優しい父と兄であるが、外では真面目で、そんな二人をデレデレしてしまう人物に興味を持たないものがいるはず無かった。


「ですから、殿下が初めてあったばかりで好意を持つなんて、思ってもみませんでした」

「何? 好意をもっただと? それはまずいな」


 父親が眉間に皺を寄せ、低く唸る。

 エドウィンだって初めてでそう思うなんて思わなかったから、二人が仲良くなったことを喜んでいたし、もっと仲良くなれるよう殿下にアドバイスだってした。


「はい。どうにかしなければ」

「それ以上好感を抱かせないように、接触は控えてもらおうか」

「それはいいかもしれませんね」



 父親がそう言うと、二人して向かい合い笑った。それはそれは黒い笑顔で。


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