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お茶会も、終盤に近づいていた。
それとともに、私のお腹も満腹に近かった。美味しかったのだもの、仕方がないだろう。
お腹が満たされ、幸福感に浸っている私とは違い、数名のご令嬢方はどこか疲れているように見受けられた。初めの自分をよく見せようとしていた姿とは、えらい違いである。
「皆様、疲れているようですね」
スサナ様に聞いたが、彼女もお茶菓子に夢中になっていたらしく、知らないようだった。
これは本人達に聞いてみるしかないか。
「アンヌ様。なんだか疲れていますね。どうかされたのですか? 」
スサナ様は気になるのか、耳を傾けている。
アンヌ様は力なく首を振るだけだった。けれど、リュシール様を一瞥した。リュシール様関係で何かあったのだろう。
「ちょっとこっちへ」
アンヌ様は私とスサナ様を、バラの生垣まで誘導した。ここならリュシール様どころか、誰にも話し声など聞こえないだろう。
「リュシール様ってば、自分の気持ちばかり押し付けて。殿下が鬱陶しがっていることにも気づいていないのよ。いやんなっちゃうわ」
近くで繰り広げられるバカバカしいやり取り、というよりもリュシール様による茶番劇に辟易していたらしい。
「アンヌ様もおつらいでしょう。ご自分が慕うお方が絡まれているなんて」
スサナ様が痛ましそうに言った。たしか、アンヌ様は先程殿下に似合うよう……云々と言っていた気がする。
けれどアンヌ様あっけらかんとしていた。
「別に、私は殿下の婚約者になりたい訳では無いのよ。国や家のためを思っているのは誰でも同じでしょう」
「ええ」
アンヌ様は国や家のためを思って来ていたのか。私もそうであったし、スサナ様もどちらかといえばそういうことになるのだろう。
鉄鉱業のご令嬢は分からないが、リュシール様は違う。
目的は同じでも、理由が一人だけ違うから目立って見えるのだろう。
「言動はどうであれ、あんなに一途に思われているなんて。殿下が羨ましくも思うわね」
スサナ様がのほほんとした口調で言った。
確かに。周りが見えていない……いや、よく言えば一途な姿はそう滅多に見られるものではなかろう。
私たちはお茶会が終わるまで、色々なことを話した。
お茶会での収穫は、友人と呼べるであろう人達を得たことだろう。
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お茶会は終わったはずなのに、私達はまだ帰れないでいた。
理由は簡単。
エド兄様と馬車へ向かう途中、殿下に捕ま……呼び止められたからだ。
「エドウィン。今から帰るとこかい? 」
「ああ、そうだが」
殿下の呼び掛けに、エド兄様は砕けた口調で返した。案外、仲が良いのだろうか。不機嫌さを微塵も隠そうとしない様子からも、そう思う。
「お茶でも飲んでいくかい? 君は大人たちと一緒にいて、退屈していただろう」
エド兄様はお茶会の間、別の部屋で他の親族達と一緒にいたらしい。情報交換の場、と考えたらいいのかもしれないがまだ子供であると考えたら、つまらないものであっただろう。
「いや、今日はこれで帰らせてもらう。マーティと出かける約束をしているのでね」
そうであった!
お茶会が無事に終われば、王都にあった菓子店へ連れて行ってくれると、約束していたのだ。
「そうでしたね、エド兄様。無事に終わりましたものね」
「ああ、そうだね。マーティ」
喜びに目を輝かせエド兄様を見上げると、エド兄様も楽しみにしていたのか口元が緩んでいた。
けれどそんな様子が面白くないのが、殿下である。
「無事、ねぇ。あんなことがあって、無事と言えるのかな」
殿下が不穏なことを口にする。
エド兄様はその事に直ぐに気づき、先程まで緩みきっていた口元を真一文字に引き結び、真顔になっていた。怖い顔である。
が、私はなんの心当たりも無いもので。内心首を傾げるのであった。




