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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
生まれてからのいろいろ編
14/62

14

 席につき、改めてご令嬢達を見渡す。


 殿下の右横を陣取っているのが、何代か前に王女様が降嫁した公爵家のご令嬢。リュシール様。

 その反対側に紙を特産にしている侯爵家のご令嬢。

 私の右隣が鉄鉱業が盛んな侯爵家のご令嬢。左隣が辺境伯のご令嬢である。

 ちなみに、殿下の向かい側が私だ。


 どういった席順なのか。



 ティーセットと、お茶菓子にスコーンが運ばれてきた。

 お父様が王宮の食べ物は美味しいと言っていたので、堪能することにする。


 まずはプレーンでそのまま。小麦とバターの香りが香ばしい。サクサクとしていて、中はしっとり。

 なんて美味しいのだろう。

 次にベリー系のジャムをつけて。甘酸っぱくて、バターの甘みといい感じに調和する。

 美味しい。持ち帰ったり出来ないだろうか。それか、レシピを知りたい。


 教えてくれたりするかな、と殿下の方を見ると目が合ってしまった。

 そして微笑まれる。

 何故。


 紅茶を一口飲んだ殿下は、私をもう一度見てから全体を見渡して言った。


「楽しんでくれているようで何よりだ。君たちは私の婚約者候補ということだけれど、それは聞いているかな」


「ええ! もちろんですわ。わたくし殿下のことずっとお慕い申しておりましたから、とても嬉しいです」


 真っ先に反応したのがリュシール様。元気が有り余っているのだろうか。

 というか、ずっとってなんだ。まだ10歳だぞ。

 それに追随するように、反対隣に座っていた製紙業のご令嬢、アンヌ様も声を出した。


「わたくしも存じ上げております。まだまだ未熟ですが、殿下に見合うよう教育も受けておりますの」


 アピール合戦か? いつそういった流れになったのか。


 辺境伯のご令嬢も鉄鉱業のご令嬢もそれに倣ってアピール? をしているが、辺境伯の方はあまり熱を感じない。


 ふむふむ、と考えていると皆の視線が集まった。何か言えということか。


「えーと、私も公爵家の方から聞いております」

 ちゃんと聞いているし、個人ではなくお家に来た話だというのも理解している。

 ただ事実を言っただけなのに、うち一人の視線は冷たいものだった。

 いや、そもそも殿下のことなどゲームの知識以外知らないからな。生で会ったのだって、さっきの温室が初めてだし。


 解せぬ思いを抱えていると、話の主導が殿下に移った。

 庭を案内してくれると言うので、皆が立ち上がる。

 他の人がチョロチョロと流れる小川を見ている中、その隙に辺境伯のご令嬢に気になったことを聞いてみた。


「スサナ様。あなたはあまり乗り気ではないのですか? 」


「!? 」


「漏らすつもりなんてありませんわ。そういう方もいるでしょう」


 辺境伯のご令嬢、スサナ様にこっそりと耳打ちをしていうと、怪訝そうな顔をされた。唐突過ぎたか。


 慌てて内緒にする旨を伝えると、少しだけ近づき小さな声で話してくれた。


「はっきり言って、このお話は私の家にはなんのメリットもありませんの。今まで独自にやって来ましたし。先程は流れに乗って言うほかありませんでしたが、今日は取り敢えず来ただけですのよ。辞退することは、もう今朝方殿下に伝えてありますの」


 スサナ様ホワホワしてる印象を受けたけれど、とてもしっかりした人なのだろう。

 下に兄弟が沢山いるらしく、慕ってくれているとか。

 まるで……


「エド兄様のようですね」


「え? 」


「ああ、ごめんなさい。私にも兄がいるのですが、優しくて頼もしい、自慢の兄様なのです。スサナ様もきっと、ご兄弟方にそう思われているのでしょうね」


 スサナ様の手を握って熱弁すると、しばらく瞬いた後笑った。花が綻ぶような笑顔だった。




「マーティナ、君はまた他の人と手を繋いでいるのかい? 」


 和やかな、友情を築いている(と思っている)シーンであったのに、殿下が現れた。

 周りに群がっていたご令嬢方は、どこにもいない。


「殿下。繋いでいるのではありません。握手です。友達になってもらおうと思って」

「え、ええ。よろこんで、マーティナ様」


 取り繕ってそう言うと、スサナ様も乗ってくれた。

 ありがたい。




「君はさっきから一度も私の所に来ないね」


 これで話は終わりと、ご令嬢達の元へ行こうとしたが、私だけ引き止められてしまった。


「そうでしょうか? 」

「ああ、そうさ。折角エドウィンから君のことを聞いていたから、話してみようと思っていたのに」


 また拗ねたように言う。

 てか、エド兄様と知り合いだったのですね。


「エド兄様は、私のことをなんと? 」

「また、エドウィンか。別に。なんとも」

「はぐらかすのですか? 」


 詰め寄り尋ねるが、殿下は視線を逸らしてしまった。終いには、近寄るなと言う。

 さっきは近くに来ないことを怒っていたのに、今度は近くに来たことを怒るなんて。

 なんだ。なんなんだ。


「殿下は私にどうして欲しいのですか? 」


 少し距離を開けて問うと、殿下は顔を覆ってしまった。体も後ろを向いている。


「大好きなエド兄様にでも聞いたらいいだろう」


 耳を真っ赤にしてそれだけ言うと、殿下は行ってしまった。




 分かりました。エド兄様に聞くことにします!


 けどまずはお茶会が終わらなければ。

 早く終われっ、と念を送った。


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