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序盤で死ぬなんて耐えられない  作者: ききたれ
生まれてからのいろいろ編
13/62

13



「大丈夫です、エド兄様」



 若干震えたそんな声も虚しく、エド兄様はこちらに来てしまった。

 ほら、殿下の視線が突き刺さってるよ! 痛いほどに!


「マーティどうした? ……って!? 」


 エド兄様は殿下を見つけたが、上げそうになる大声を飲み込んだ。流石エド兄様である。何か事情があると察したのだ。

 殿下もそれがわかったのだろう。小さく頷き、静かに立ち上がった。


「じき案内のものが来る。時間が来るまでゆっくりしているといい」


 そう言ったきり、殿下はいなくなってしまった。消えたと言った方が正しだろうか。きっと転移か何かの魔法だろう。



 頭の隅で、今度先生に聞いてみようと考えていた。


**


 しばらくして、何処かに案内されている。


「エド兄様、今度は何処に行くのでしょうね」


 エド兄様を見上げて尋ねるが、よく分からないようで首を傾げるばかりだった。


「僕も以前父様に連れられて、一度来たぐらいだからな」


 少しだけ不安な気持ちになり、エド兄様の服の裾を掴んだら、手を握ってくれた。




 道中の王宮の中はとても煌びやかだった。

 なんだか高そうな壺や花瓶が等間隔に廊下に並んでいて、歩くだけでもビクビクしてしまう。トラヴァース家でも見た事の無いものばかりだ。


「エド兄様、あそこにある花瓶の柄のお花は何ですか? 」

「あれか? なんだろうな」


 白磁に一箇所だけうす桃色の小さな花の絵が描かれている、凛とした佇まいの花瓶を見て尋ねたが、エド兄様は知らないようだった。

 すると、案内してくれている執事のおじさんが、にこやかに笑って教えてくれた。


「お嬢様、あれは東洋のナデシコというお花です。先々代の王妃様が東洋から持ち帰られたものだそうですよ」


 先々代……。

 とっても古いものということではなかろうか。

 ナデシコは前世の実家に植えられていたな、なんて思っていたのに、目が飛び出でるだろう値段を想像してしまった。


「エド兄様、凄いですね」

「ああ、そうだな」




 コソコソと話しながら、今度は大人しく執事さんの後をついて行くのだった。


**


 そうこうしているうちに、目的地と思われる場所に着いた。


 今の王妃様のお気に入りの中庭らしい。

 ここも先程の温室のように花に囲まれている。


 中庭の中心には、花々に集う蝶々よろしく数人のご令嬢が誰か一人を囲んでいた。


「私達が最後でしょうか」

「……そのようだね」


 またコソコソと話していると、こちらに気づいたのか中心の中から一人やってきた。


「私がアルノルフだ。ようこそ、トラヴァース家の姫君」


 初めましてと挨拶する殿下ではあるが、さっき会ってしまっている。

 さっきの出来事は忘れろということだろうか。


 本来なら年長のエド兄様が挨拶するところだが、今回は私が招待されたので、きっちり身につけた令嬢としての挨拶をする。


「お招きいただき、光栄に思います。マーティナ・トラヴァースと申します。こちらは私の兄のエドウィンです」

「同行を許可していただき、感謝致します」


 エド兄様が私に続いて述べると、殿下は私の方へ手を差し出した。

 ……どういうことであろう。


 エド兄様の方を見、助けを求める。エド兄様は口を開きかけ、閉じてしまった。


「マーティナ。兄君とばかり手を繋いでいないで、私とも繋いでくれないか? 席までエスコートしよう」


 拗ねたような殿下の言葉に、私は今の状態を改めて思い出す。そういえば、先程手を繋いでもらったのだった。

 エド兄様も私が握っているから、離せないでいたのだろう。



「ごめんなさい! 」



 羞恥で顔を赤くし、パッと手を離す。

 兄とはあまり手を繋がないものなのだろうか。


「エド兄様も、ごめんなさい」

「いや、いいよ。さあ、行ってきな。親族は別の部屋で待機らしいからな。終わりまでお別れだ」


 そうだったのか。不安だ。けれど乗り越えなくては!

 エド兄様の目を見て頷いてから、差し出された手に自分の手を重ねた。


「君は兄君と仲がいいんだね」

「え? はい。そうですね」




 自分から聞いたのに、殿下は私の返答につまらなそうにふーん、と返すだけだった。


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