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プロローグ

「「俺(私)たち、もしかして入れ変わってるぅ!?」




ごちゃごちゃした部屋の中から、鍋らしきものを見つけた。

部屋の奥には、随分と古めかしいカマドがあるが、長い間使ってないみたいだった。

よくわからない物だらけだか、現代で製造されたようなものはない。

古びた本が所狭しと並び、臭う薬草やら、古代の実験用具的なのがあちこちに放置され、その中に生活用品が無造作に投げ置かれている。

腐りかけたトマトのような野菜達の中に、まだ食べられそうなパンがあり、せっかくだからスープと一緒に食べようと思いたったわけだ。

外に出ると、先程見つけた井戸から水を汲んだ。

そして、鍋にこびり付いた食べ残しを綺麗に洗い流す。

水を少し入れて、足元を掻き分けて部屋に戻り、カマドの上にセットする。

埃を被ってはいるが薪はあったので、近くにマッチか何かがあると思い探してみるが見つからなかった。


「とりあえず掃除からだな」


部屋を整理しないことには、見つかるものも見つからないだろう。

しかし、よくここまで散らかしたものだな。

小一時間かけて大雑把に片付けると、床は概ね見える具合にはなった。

しかし、チャッカマンなどの現代的なものはもちろん、マッチは見つからなかった。

もしかして原始的な手段で火起こしをしているのではあるまいな。

元来、インドアな自分にとって、そのようなスキルは持ち合わせていなかった。

途方に暮れていても仕方がないので、欲望のままパンだけでもを食べようとすると、あたまに鈍痛が走る。

急激な眠気が襲ってきた。

食欲を上回る眠気に導かれながら、元から唯一何も物が無かったベッドに倒れ込んだ。

割と短い夢だったな、と思うまもなく意識が飛んだのだった。






「ッハ!」

疲れのせいか軽く居眠りをしちゃたみたい。

思いのほか短時間とはいえ眠れたみたいで、身体の調子はよい。

身体を起こすと、床に放置していたはずのお気に入りのガウンが無くなっている。

それどころか床の木目が見えるくらいに物が無くなりそれらは綺麗にあるべきところに整頓されていた。


「寝てる間にママがきたのかな」


探すのも面倒なので、簡易呪文を唱えると、長らく壺か何かに塞がれていたはずのクローゼットが開き、例のガウンが飛び出てきた。


「……って、なんで裸なのっ!?」


ガウンの肌触りが直に感じられて、思わず飛び上がった。

そういえば夢の中での自分(正確には見慣れない世界の男になっていた!)も裸だったことを思い出す。

身体を見回してみるが特に変わった事はなかったので、何かされた訳ではなさそうだった。


「寝ぼけてたのかなあ……」


兎にも角にも下着は身につけたいと思い、いつも溜め込んでいる服の山を見たが、あるはずのところには何も無く、木目の床が見えている。


「まさか、下着泥棒!?」


と、言ったものの思ったが念のため例の簡易呪文で下着一式を呼んでみた。

この呪文は半径5mに対象の無機物を手元に呼び寄せる簡易的なものだ。

すると、頭に開放感を感じると共に、頭上から主に下半身に履くはずの下着が降ってきた。


「……へっ?」


もしかして私、パンツ被ってた?

混乱した頭を整理する間もなく、とにかく履くものを履くことにした。

ちなみに上につける下着は、ベッドの下から出てきた。

外し方が分からずに、無理やり腕と頭を通して脱いだみたいなようで、若干伸びていた。






「ゆ、夢かあ……」

妙にリアルな夢を見て、起きた瞬間に現実世界という事を認識してとてつもなくガッガリすることがあるだろう?

まさにそれ。

夢の中での俺は、特に女装願望はないが、なかなか可愛いエルフ女になっていた。

といっても短時間だから特にナニしたわけでもない。

ゲームの世界であるような古代の家っぽい所で、とにかく片付けをしていただけだった。


「ぐぐ、ぐう!」


壮大な腹の音で腹が無性に減っていたことと、海鮮パエリアを作って、いざ食べようとした時に寝落ちしたことを思いだした。

ふと周りを見渡すと、隅々まで計算尽くされたMy Roomが壮絶な荒らされ方をしていた。

自作PCは横倒しになり、30インチディスプレイはあろう事か、ど真ん中にぽっかりと空洞が出来ている。

本棚にしまっていたはずの、主にピンクで構成されている背表紙の漫画本は、言葉どおり『爆散』していた。

それに俺の海鮮パエリアはというと、無残にも完食されていた。

……少し寝ている間に、何かとんでもないことに巻き込まれたようだ。

天井や壁には大きな異常はなかった。

壁に貼り付けていた少し卑猥なポスターが『爆散』していただけだ。


……しかし、それ以上に俺は違和感を感じていた。

も、もしかして……


「部屋なのに服着てるぅぅぅ!!」



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