表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話 我らが敵

その時だった。


「ふふふ……王国の犬と外の者が一緒にいるとはな」


女騎士と薫の周りを、四人の男たちが囲む。


「貴様ら――何者だ!」

「我ら教団の『駒』……死んでもらおう!」


男たちが刃を見せる。


「たった四人か……」

「待て、ここは町中だ。激しく暴れる訳にもいかぬ……耳をふさげ」

「耳? わかった」


女騎士の言う通りにする薫。

騎士は目をつぶり、唱える。


「『音よ響け……貫け音よ!』」

「なっ……ぐはっ!」


激しい音が男たちの耳を襲う!


「今だやるぞ!」


薫の肩を叩く女騎士。


「承知した!」


ひるむ男二人を殴りつける薫。

即座に剣を広い切り裂く女騎士。

一瞬の早業であった。


「教団の奴ら……こんな町中まで」

「ここは危険か……場所を変えよう」


***


所変わって食堂。


「『音よ世界を閉ざしたまえ』――魔法をかけた。これで秘密の話もできる」


薫は頷き、サンドイッチを頬張る。

一方女騎士は頼んだトーストとカプチーノに手をつけることはなかった。


「うまいなこれ、流石おすすめされるだけある」

「貴様、聞いているか?」

「もちろんだとも――これを見ろ」


そう言うと、薫はバッグからバッチを十ほど取り出し、机に放り投げる。


「全部襲撃者から奪ったものだ。これ以上はかさばるから持ってきていない」

「命を狙われていると?」


紅茶を一口だけ飲み、頷く。


「そのようだな。何分問答無用で襲いかかってくるもんで、話は聞けていない」

「そうか……申し訳なかった。勘違いということか」

「わかってくれたならありがたい。ところで」


薫はカップを置き、写真を取り出す。


「この女を知っているか」

「ふむ……いや、見覚えはないな」

「そうか……残念だ」


ここで女騎士はカプチーノに手をつけ始める。


「俺はこの彼女、妹を探している。おそらく教団の奴らは妹について何か知っていると踏んでいるのだが」

「私も手がかりを探してみよう。君が命を狙われているのとこの少女、関連性はあるかもしれない。誘拐やその類い……だとしたら」

「教団は……何を企んでいるんです?」

「わからない。だが最近あまり良くない事件を起こしている。解決のため、目的を探っているわけだ」


トーストをかじる音が小気味良く響く。


「教団の活動が激しくなってきたのはつい数か月前――この大陸に8つの搭が現れた。その周りにモンスターが大量発生し被害を与えている。そこで現れたのが――勇者だ」


薫は紅茶をすする。


「最近隣国の帝国でそう名乗るものが活躍している。そのバックには――教団があるという」

「勇者とやらは男か、女か」

「白い鎧を来た細りとした少年、と聞いている」

「男装女子の可能性は捨てきれんな。誰かみたいに」

「……これ、そんなに男に見えないだろうか?」

「体つきがそう見えない。率直に印象を語ったのみだ」

「くっ……話を戻そう。隣国という事だが……この大陸は四つの国でできている。知っているな?」

「いや知らん」

「ええ……」

「いや本当に知らない、申し訳ないが……王国とあと何?」


ため息をつき、頭を抱える。


「随分と田舎者のようだな……まず我が王国。説明不要だ」


説明が必要なんじゃないかなあと薫は思ったが、詳しく聞くのはやめた。


「まず連邦。山を越えた先にあるから交流はあまりない。いくつかの国が合併してできたらしいが………あまりわからない。大事なのが隣にある公国と帝国だ。公国は比較的仲が……そんなによくないが、比較的いい部類だ。おなじ教会を信仰しているからな。帝国だがこちらは我が国と対立することが多い。そして――教団を保護しているという話もある」

「そこで、教団か」

「今の所、帝国で勇者が活動しているという。そして、さらに大事なことだ」

「大事な事?」

「どうやら、その勇者がこの王国に現れたらしい」

「……」

「詳しいことはわからん。だが、接触しなければならないだろう」

「なるほど、妹の姿を探すだけではらちが明かないと思っていた……勇者とやらを探すのも悪くない」

「協力を頼む、という事でいいだろうか?」

「至れり尽くせりだ……感謝する。――だがいいのか本当に、こんな旅人に情報を教えてしまって」

「迷惑料だ。こちらとしても協力者は欲しい。だが教団の情報をつかんだらすぐに知らせてくれ」


住所の書いたメモを取り出す女騎士。


「これは?」

「ここに私の協力者がいる。王都のど真ん中だが知らせるときはここに連絡を頼む」

「了解した」

「こちらからも頼む……教団は、私の誇りにかけ、なんとしてでも倒さねばならないからな」


そう言って立ち上がった彼女の目は、ひどく恐ろしく見えた。


***


それから町を回ってしばらく教団について、勇者について、何よりも妹について調査を始める。

教団についてはほかの町で調査した通り何か怪しいという話が大半だった。

今まで調べていると口を紡ぐ者や、睨んでくる者、手を出すなと諫める者がいる。

進展なし。といったところだ。

勇者については噂話おとぎ話のたぐいが多かった。

ひどく凜々しく、強いらしい。

残念ながら女だという噂はない。

そして妹については、何も進展がなかった。


***


まもなく日が沈むという頃、ディアナさんの家の前にたどり着く。

しかしそこではどこか様子がおかしい。人が集まり、騒がしくなっていた。

その中に道具屋のおばさんの姿を見る。


「どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもないよ、あの子がさらわれたって言うんだ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ