For you.
「どっちにしよう……」
そう呟くと、白い息が淡く蕩けるように空中へ霧散する。
私は今非常に悩んでいる。
右の方を見ると綺麗にラッピングされた贈呈用チョコレート。左の方を見るとなんの変哲もないただの板チョコ。
さて、どっちを選ぼうか。
可愛い、美味しい、彼好み。そんな三拍子が揃ったようなチョコなんて、私には作れない。でも少しでも『好き』って気持ち届けたいの。
絶対彼は後者の方が喜ぶ。それはわかってるけど、『好き』と一緒に『不味いもの』はあげたくないから。
「どっちにしよう……」
少しずつ身体も冷えてきた。そろそろ決めなきゃって焦れば焦るほどぐるぐる思考が回ってしまって。ああ、なんだかもう。
レジに置いたのは贈呈用チョコレート。
一つ白い息を出す。それと共にでた言葉は
「これも一緒でお願いします」