第八話
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「まだ正式な勇者じゃない?」
「はい。伝承によるとある時を境に勇者だと本人は気付くそうです。それと同時に過去の勇者様が残してくれた物の場所が自然とわかるようになります」
「それはわかったが、なぜ正式ではない?」
「勇者だと決定するのは神託により名前が判明して、ネファリウスと呼ばれる王家で正式に授与されてからですね。過去に間違いはなかったので絶対視されています。ただ神託によって名前がわかる時期は曖昧なようですけど…」
とエレンは困ったように言う。自分が勇者であるかどうか不安だったのだろう。だがゼロが来たことで勇者だと決まったようなものだ。召喚できるのは勇者だけなのだから。
「正直不安でしたけどゼロさんが来てくれたおかげでそうでもなくなってきました」
「それはよかった。俺も来たかいがあった」
「そうだ!オーガを倒すとき魔装を使ってましたけど、どうやるんですか?」
魔装、ゼロにとっては初耳だ。あのときは勝手に、いや自然と使えていたのだ。いくら記憶が優秀で使えても説明まで優秀だとは限らない。そのためゼロは
「何度も挑戦して自分の形を作ることだ」
「えぇー!?それ答えになっていませんよ?」
あーだ、こーだと抗議するエレンをよそに道を進む。そもそも魔装に関しては冒険者や宮中にいる騎士でも習得に時間がかかる。問われても答えずに無言でいると諦めたのか違う話題を話し始めた。
「ゼロさんはこの世界のことをどれくらい知っていますか?」
「なにも知らないと言ってもいい。勇者の目的はもちろん、どこになにがあるといったこともわからない。そこを教えてもらえると助かる」
「私も勇者がなぜ必要とされているのかわかりません。行くのは簡単だったんですけど、書物が残されていた場所はかなり古くて読めないものも多かったですし、私の前の勇者が杜撰な方だったようで武器とかも使い物にならないものばかりでした。使えそうだったのが召喚に関するもので、ゼロさんを呼んだんですけど……、ごめんなさい結局なにもお答えできなくて」
「いや、…大変だったんだな」
「うぅ…。わかってもらえますか、グス…」
エレンが涙ぐむのも無理はない。情報が少なすぎる。早めに神託がおこなわれ、そこで情報を得るしかないようだとゼロは考える。
二人は知る由もないが、エレンの前に勇者が存在したのは五百年も前のことであった。そのため伝わるはずのことも残らなかったのだ。前勇者が杜撰だったことも間違いがないが。
「あれが街か」
街道に出ると少し行ったところに何かが見える。それが二人の目指す街であった。気を取り直したエレンが教えてくれる。
『ハフト』、そこが街の名である。中規模ながら王都に負けず劣らず商売の盛んなところであり、様々な人が暮らしているという。二人が最初に向かうのは冒険者の集まるギルドである。冒険者になることで依頼をこなしお金を得る。神託がまだない以上暮らしていくにはこれ以上にない方法でもある。さらに実力をつけることも可能なためであった。
街の傍まで来た。数人が列を成して門のところで待っており、二人もそれにならう。中規模とは言いながらも、ゼロから見れば十分に大きい。この世界では比較対象が王都であるためそれも仕方ないことであった。
二人の番となる。残念ながら身分を証明できるものがエレンの冒険証しかないため、ゼロの代わりにエレンが銀貨一枚を納めるという事態はあった。街に入る際、門番が一言
「ようこそ、ハフトへ」
やっと街に着きました。
これからも頑張りますので次回もよろしくお願いします。