第七話
前回の戦闘はあっさりとし過ぎていたかもしれませんが、ゼロの強さが際立つところであり、強さが伝わっていただければと思います。
魔力を持っているということはこの世界では珍しいことではない。いわゆる生活魔法と呼ばれるような超初級魔法は親等から教えられることが多いため使える者は多い。だが、戦いに用いられるような規模となると使用者のセンス、個人差のある魔力量の運用等の要素が絡むため一筋縄にはいかない。また極稀にではあるが魔法に使われる魔力を感知できる者がいる。奇襲等を察知できるため王宮や貴族に重宝される。
エレンは魔力を感知できる数少ない人物の一人であった。そのため魔力の運用には目を見張るものがあり上位の魔法も使えたが、戦闘にはあまり慣れていなかった。慣れていないと言ってもCランクともなるとこのあたりは少ないからだ。だがゼロが戦うと言い出した時には頑張ろうと思い、私が魔法でやると声をかけたつもりであった。
それがどうであろうか。単体とはいえCランクはあるオーガを一撃で倒してしまったではないか。それも見たこともない形状の剣を使い、魔力を帯びさせた状態でだ。魔法の使用も難しいが、武器に魔力を帯びさせることで切れ味を増したり、劣化を防ぐ魔装もまた難度が高い。生半可な武器では逆に壊れてしまい、またうまく魔力を纏うことができなければ普通の状態と変わることがなく、無駄に魔力を消費してしまう。
感知できていたからこそ知り得たのは、ゼロの魔装の完成度の高さであった。完璧と言って差支えがないだろう。魔物の体はその名の通り魔力のようなもので覆われている。ランクが低い魔物ほど大したことはないが、オーガ程となると魔法ならば当てさえすればそれほど苦労はないが、武器で直接となると何度も傷をつけ、相手の魔力を剥がなければならない。魔装でも数度は斬りつけたりしなければならないが効率が違う。それをゼロは魔装をしているとはいえ一撃で倒してみせた。
エレンはゼロと共に戦うことでこれからの困難に立ち向かえるという確証を得た気分でいた。
一方のゼロは自分自身の能力を改めて自覚したこと、さらには魔物とはいえ人型を戸惑いもなく切れたことに対して戒めのような気持ちを抱いていた。戸惑いがない理由は神が戦えるようにしてくれたのと同時に感情の整理もしてくれたのだろう。だからこそ『判断を誤ってはならない』と思う。この世界は一瞬の隙によって、簡単に命を奪われる世界なのだ。
「魔法の準備、必要ありませんでしたね」
「そうでもない。オーガの攻撃が当たっていれば負けていたのは俺だ」
「移動していたのはほとんど見えてません。けど、攻撃が当たるとかそんな風には思えませんでした」
「そうか。とりあえず…」
「私が解体しておきますよ。なにもしないってのはちょっと」
とエレンは率先して討伐証明部位等、解体をしてくれた。それを見ていたゼロにとって、戦闘よりも解体の方をやることは気分が悪くなりそうであった。
解体し終えたエレンは必要なものを身に着けている腕輪に近づける、と次々に一瞬で消えていく。ゼロの記憶の中にそれを説明してくれるものがあった。エレンが持っている腕輪はアイテムボックスと呼ばれるものであり、収納に限りはあるもののいれておけば重さを感じさせないものだとわかった。それに記憶と自分の認識のズレを早めに整理しなければならないと考えていた。
収納し終えたエレンはゼロに向き合い、
「それじゃ行きましょうか」
「そうだな。色々と話が必要だ」
「私が色々と説明していかないとですね」
『大変だなぁ…』とつぶやくエレンにゼロは思わず苦笑した。
今回は解説のような形となりました。
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