第六話
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「エレンはここに一人で来たのか?」
「そうです。というよりここは勇者とその後に召喚された者しか入れないようになっているそうです。残念ながらその原理はわかりませんけど」
「なるほどな。静かなわけだ」
などと他愛のない会話を続けながらしばらく歩いていると、大きな結晶石が浮かんでいるところに来た。どうやらこれを使って外に出られるようだ。
「これに私が魔力を流すと外に出られます。帰りにしか使えないのが難点ですけど、今は関係ないですよね。えっと、外に出てからは近くの街まで行きます」
「了解した。俺はこの結晶石に触れていればいいのか?」
「はい。ではいきますよ」
と言うとエレンはゼロと同じように結晶石に触れると、魔力を流し始めた。浮き上がるような感覚を感じた次の瞬間には、二人とも外にいた。出た場所こそ開けているが辺りは草木に覆われている。それだけであるならば日本にいても行く場所によればそのようなところはある。しかし、はっきりと違うのは見たこともない植物があることだ。『妙なことで異世界だと感じさせられるとは』とゼロが考えていると、エレンが出会った時とは違う装いになっていた。急いで着替えたようだ。
「ここの一帯には魔物が出ませんが一応注意しておいてください」
「そうか。ところでエレンはどれくらいの強さがある?」
「…あまり期待はしないでください。魔法も剣も使えますけどそんなに経験がないので……。それに勇者だとわかったのは最近でして冒険者になったのも同じ時期ですし、まだ駆け出しもいいとこのEランクですから」
そのような話しを聞きながら、新たに聞かなければいけないことが増えたとゼロは思っていた。と思っていると、ゼロの気配のなかに感じるものがある。
「どうやらなにか魔物がいるらしい」
「えぇ!?この辺りにはいないはずなのに!」
「エレンが見た本だか資料だかがいつのものかは知らないが、こちらに向かってくる気配があるのは確かだ」
「ど、どうするつもりです?」
「逃げられればそれに越したことはないが、あいにく俺には街に着いたとしても手持ちがない。街に行けば換金できるところがあるだろう?倒せそうなら倒しておいた方が金に困らない」
「それはそうですけど…」
「来るぞ」
ドスンドスンという音が近づいており、木が倒れていく音もしている。武器を構える二人の前に現れたのは鬼のような生き物であり、片手に大きな斧を持っていた。ただなんとなく歩いてきたようであったその生き物は二人に気付くとこちらを見る。いや、見下ろしていた。ゼロは日本で見た本に出ていたことを思い出し、『…オークか?』とつぶやいた。それが聞こえたエレンは
「違います!オークならここまで大きくないです!これはその上位にあたるオーガです!Cランクには値していますよ!」
と叫ぶ。つまるところあまり敵対していいものではないらしい。とそのようなことを聞かされながらもゼロはオーガから目を離さない。
「エレン。少し下がっていろ。俺がやる」
「……信じてもいいんですか?時間をかければ私の魔法で倒せると思いますけど…」
「騒いでいた割には頼もしいじゃないか。手こずるようならそれで頼む」
そう言うとゼロはオーガに向かっていく。後ろからエレンの『ちょっと!』と言う声がするが、ゼロはオーガに負ける要素を感じていなかった。
一気に接近する。だがオーガはそのゼロの速さを追えていない。自らの命の危険を察知したのであろう、渾身の力を篭めて斧を振り下ろすがそこにゼロはいない。斧の柄の部分に飛び乗ったゼロは刀を一閃。それはオーガにとっては致命傷を負ってから、剣が振られていたのだと気付かされるくらいに速く、的確な攻撃であった。それでも倒れることなく立って絶命したのはオーガの意地であった。
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