第五十八話
扉を開ける。そこには、
「これは何でしょうか…?」
ゼノピアが聞いてくるが、ゼロにもアサギにも答えられない。あるのは魔力を帯びることができそうな装置。それしかわからない。
とりあえずのところは触れないように周りの戸棚や落ちている紙を見ていく。
「これは、こんな事が…」
一枚の紙を見ていたゼノピアがそうつぶやいた。他の紙を見ていたゼロやアサギもこのような事実を見て、本当にやっているのかと目を疑う。
そこに書かれていたのは、『魔導装置実験開始およびそれを利用した魔物使役の戦闘行為』と。
「つまり先日の魔物の大量発生は、やはり仕組まれていたという事かの」
「エレンたちが見かけたと言っていた何かの装置と言うのはこの実験の事だろう。かなり実用的な段階まで来ているが、目的がわからないな」
「この話が事実であればどこかの部署が王宮を裏切っている事になります。父はこのような実験に加担していたのでしょうか…」
「それはないじゃろ。いやおそらく参加させられていた途中、もしくはどこかの過程でこの実験の目的に気付いて何か行動を起こそうとしたのがバレてしまい、始末されたと考える方が正しいかの」
何故魔物を使役できる技術を作りだせているのかという疑問もあったが、どうにかしてこれを止めなければならないという考えが三人には生まれていた。それは自然な事だった。
「私はこの実験を軍の一員としても王に仕える身としても止める所存です。お二人もご協力願えませんか?」
悩むゼロ。
彼にとって人から頼られる事はこれまでにもあった。しかし、国が絡むような大きな事件はない。ただこれ以上誰かの思惑通りに進ませるのはさせたくないと思った。久しぶりに彼が己の意志に従おうとした。これが彼にとって初めての目的や夢に繋がる第一歩でもあった。
「了解した。俺も誰かの思惑通りにさせたくはない。まずはどこか秘密裏に調べてくれるところはないか?」
「ありがとうございます。王宮内部を調べさせるおつもりですか?それならばラグスにある軍の情報部を頼ってみましょう」
「大丈夫かの?どこが関与しているかわからぬ」
「確信がある訳ではないですが、元は父が治めていた都市です。未だに慕ってくれている部下もいますからその方を頼ってみようかと」
ゼノピアがそう言うのであれば二人に異論はなかった。まずは敵を知らなければならない。
すぐに彼女はラグスにある軍の施設に向かった。だが彼女は思いの外早く、少し慌てた様子で戻ってきた。
「依頼を済ませると同時にラグス近郊の森付近にドラゴンが目覚めたとの知らせが入りました。私たちにも出陣命令が」
『ドラゴンね』と聞いてゼロは少しだけ悩むと、一つの策を二人に伝える。
「こちらが強いと判断すれば敵も必ず接触してくるはず。そのために俺は力を出す」




