第五話
五話目となります。
やっと異世界です。
九条が目を開くと、辺りはうっすらと明るかった。神の言う通りであるならば、彼を召喚した人物がいるはずである。辺りを確認するように見渡せば、フードのようなものをして、こちらを向いている者がいる。九条は口を開き尋ねる。
「お前が俺を呼んだのか」
勇者の末裔である女は、自分に問いかけられているとわかっていたものの、とっさに答えることができなかった。なぜなら、現れた男を注視していたからである。黒髪の者はいるものの黒目は初めて見るものであり、なおかつ見た目もいい。体格は黒いコートに包まれているためわかりにくいが、戦えないことはなさそうである。左腰には女にもわかる、かなりの業物であろう剣が携えられていた。おそらく剣士である彼を長く見つめてしまったのは、『強き者』と願ったものの、願い通りすぎたことであっけにとられてしまったからであった。だが、
「答えてくれないとこちらも困るんだが……」
と言われ、はっとしてフードを取りながら答える。呼び出したのはこちらなのだ、真摯に答える必要があるし、勇者の末裔としても答える義務があった。
「来てくださってありがとうございます、剣士さん。私は勇者の末裔のエレンです」
エレンはなんとか明るく答えた。九条はこちらも名乗ろうとして、『名前をどうしたものか』と考え、『神から恩恵をもらったとはいえ、もともと力のない俺だからな』と思い、こう答えた。
「俺の名前はゼロ。よろしく頼む、エレン」
「はい、よろしくお願いしますゼロさん。それで今後のご説明はしていきますけど、とりあえずのところ一緒に旅をしてくれませんか?」
どうやらエレンは多少ゼロのことにおびえているらしい。自分へと視線を向けたゼロはコートに包まれているのを確認する。さらに自分が今まで以上に周りの気配を感じることができ、感情の抑制が強くなっているのに気付いた。そのおかげで冷静さが増し、少し自分が自分でないように感じられた。
戦闘に関する知識などの記憶も神が言っていたようにあり、ハイスペックになりすぎている。見た目がなんともよろしくなさそうであるため、おびえられる理由に気付きながらも、この世界のことは知らないのだ。それに召喚の理由などわからないことも多い。が問われずとも、また自分がなにも知らなくても、もとより共に旅をするつもりで来たのだ。
『大丈夫だ』、と答えるとエレンはほっとしたように『こちらから地上に出られるのでついてきてください』と言って歩き始めた。一方のゼロはその後ろをついていきながらエレンを観察していた。彼女はこの世界でも美少女と言っても過言ではないものだとゼロは感じていた。ブルーの瞳は外国人を思わせ、その顔立ちはゼロのいた世界ならば確実にモデル等になれるであろうというくらいには可愛らしい。さらに両サイドで作られた三つ編みをバレッタのようなもので留めている銀色の長い髪は誰もが目を引くであろう。年齢はゼロよりも多少若いと思われるが、スタイルもよく女性らしい。
なぜこのような美少女が勇者の末裔なのか。不安が消えたのか、どこか楽しそうに歩くエレンの後姿を歩き見ながら、ゼロはそう思った。
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