第五十五話
ゼロの声に反応したゼノピアだが剣を握る暇はなかった。一瞬の隙を確実にものにする、それほどまでに侵入者となった彼女を殺す事ができる罠だった。そこにゼロが存在しなければ。
ゼノピアの前に体を割り込ませたときには既に刀を抜いており、
「斬の型、波」
斬撃は矢を壊し、奥にあった射出装置も破壊。無駄の無い一撃。二人はケガを追う事もなかった。
ゼノピアにとってそれは衝撃だった。咄嗟の判断に加え、攻撃から身を守る術もだが己のようにスキルを使用したからである。それも生半可な威力ではない。魔法に対抗できるほどの威力を秘めているのは明らかだった。『彼はいったい…。それに私をかばってまで』、そう彼女は考えつつも、
「ゼロ様ありがとうございます。お怪我は?」
「いや大丈夫だ。ゼノピアの方は」
「私も異常はありません」
「問題がないようなら離れるがよい」
イラッとしたアサギからの声により、はっとした二人はすぐさま離れる。なんともいえない甘そうな雰囲気が流れかかったのには、ゼロに恋心を向けるアサギには面白くなかったのだ。すぐさま切り替えたのはゼロだった。慎重に部屋を覗き込む。
「…奥に似たような扉が見える以外は特に矢の心配はなさそうだ」
三人とも罠対策ができるような知識もスキルも持ち合わせてはいない。あったとしても先ほどの矢を防げたかはわからなかった。
「家の者しか開けられない上に、来た者を殺すような罠。先に何があるか気になるな」
「このような事態になるとは思いもせず、巻き込んでしまい申し訳ありません。ここまで来たのですからよろしければ…」
「共に言ってやるから安心するがよい」
アサギはご立腹の様子。それでも綺麗さとのギャップが生まれるのだからずるいだろう。
「それでは扉を開けます」
扉の向こうは暗い部屋だった。三人が入ると扉は閉まり開かなくなってしまった。すると壁に備え付けられていた松明の一つ一つに火が灯っていく。魔法のおかげだろうが技術は素晴らしい。全てが灯り終えると部屋はかなり明るくなった。
部屋の中央には魔法陣が刻まれている。ゼノピアが近づくとそれは起動し始めた。
先ほどの罠とは違い構える余裕が三人にはある。何かを召喚していたそれは起動を終える。中から現れたのは、顔は悪魔のようだが体はほとんど肉の落ちた骸骨でできた生き物。いや魔物だろう。フシューと息を吐いた魔物はこちらの様子をうかがっている。
「あの魔物に見覚えは?」
「…ありません。ですが」
強い。それだけはゼノピアにもわかる。業物だとわかる二本の剣を腰に携え、こちらをじっと見つめる魔物は今まで見たこともない。王都にある図書館やギルドが所蔵している魔物辞典を見ればわかるかもしれないが彼女はそこへの出入りが制限されていたため、A・Bランクの魔物はほとんど知らなかった。それを知っているのはこの場ではアサギしかいなかった。
「あれはソードデーモン。多少知性も持ち合わせている少し厄介な魔物じゃ」




