第四話
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「さて、では行くことになるが異世界には戦いもあり九条君の想像以上なものもある。魔法も当然ながらあり、さすがにそのままでは生きていくことはできない。そこでその世界に必要となる力を与えていくことになるが、大丈夫かのぅ?」
「大丈夫です。そこに行くことが俺にとっていいような気がしていますから」
「それは嬉しいことじゃ。九条君のことをワシは気に入っておる、じゃから君にはあらゆる系統魔法の最上級が使えるようにしておこうかのぅ。他にも付けていくことになるがどうじゃろう?」
と嬉しそうに神は話す。九条もその意見に反対するつもりはなかったのだが、魔法よりも
「神様お願いがあります」
「ふむ、よかろう。なんでも言ってみるとよいぞ」
「魔法ではなく剣や刀といった身体能力を強くしてもらえませんか?俺にはそっちの方がいいので」
「本気かの?言うまでもなく魔法が楽じゃぞ?」
「そうかもしれません。でも大きすぎる力は責任が伴います。身の丈に合わない魔法は勘違いしそうなので。代わりに装備や身体能力がほしいんです」
神は『やはり人間は興味深い』と思っていた。転生する者を今までに何人もの数を送り出していたが、このようなパターンは初めてであった。それに理解しているというべきか、達観した姿勢は見るものがあると感じてもいた。『人は間違うもの』そう認識して、いつものように目の前にいる人の心をなにも言わずに見てはいる。大概の者は浮かれてしまい、このような異世界やゲームの世界に行くとなると行きすぎたことをしてしまうことが多い。それに力を持ちすぎて周りが見えなくなることもある。
それがどうであろうか。九条は特に言及しなかったが、内心では行く気はあるのはわかっていた。だが、どうにか生きて等のようにしっかりと考えているではないか。今後行きすぎてしまうかもしれないが、それは神自身が見切れなかっただけである。『この時点での評価を見ればかなりのもの』そう考えた神は、彼が考えている以上の力を必ず与えようと決めていた。彼が彼でいられるように。
「よかろう、そのようにしておく。他にはあるかの?」
「ありがとうございます。後は……日本に戻れなくても構いません。その分家族の記憶から俺を消して、幸せにしてあげてくれませんか?」
「当然可能じゃが…。ふむ……。じゃが本当にそれでよいのかの?」
「はい。必要な選択ですから」
そういう九条の顔に覚悟を見て取れ、内心も確認した神は『非情な選択を迫ってしまったか』と後悔をしたが後の祭り。彼の言うことにしたがって、実行するまでである。
「そうかの。それではすぐに能力が使えるように君に記憶を送りこんでおこうかの。じゃから後は向こうで確認をしてくれるかのぅ」
「わかりました。神様ありがとうございます、無理なお願いを聞いてもらって」
「なに、これも神の務めじゃろうて。さぁ、行ってもらうとしようかの」
「はい」
神が指を振うと九条の体は光り出した。家族と仲が悪かったわけではないが、自分が転生している間に家族の時間が止まってしまうのは嫌であった。そのためこのような選択をしたわけである。『新しい自分を見つける』、そう心に決めた九条は覚悟を示していたのだ。家族が少しでも幸せになるのだ、なにも思い残すことは無い。
一瞬記憶が飛んだ後、目覚めると薄明るいところに九条はいた。
ここから彼の物語は始まったのである。
異世界前最終話となります。
おそらく皆様が待ちわびている冒険がこれから始まります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。