第三話
閲覧ありがとうございます。
老人はゆっくりと話し始めた。
「まず名乗るとするかのぅ。ワシは神。あらゆる世界を管理している者じゃ」
想像していなかったわけではなかったものの、九条は表に出さないながらも内心驚かずにはいられなかった。自分がなにかをしたわけでもなく、突然神と名乗る人物に出会ったのだから。
「神…様。それで俺はなぜここに呼び出されたのでしょうか?」
「そこまで慌てずとも説明はするし、君、いや九条君には選択する権利がある」
『選択…か』そう思わずにはいられなかった。ここに来てまでまた選択。人生が選択の連続とはよく言ったものだと感心せずにはいられない。それでも、九条は自分が重要な選択を迫られていると確信し、話を聞く。
「それでどのような話しなのでしょうか」
「九条君にここに来てもらったのは他でもない。君に異世界に来てほしいと願っている者がいる」
絶句した。急にこのような世界に連れてこられたかと思えば、異世界召喚の話が来ているという。九条はその手の話を知らないわけでもない。小説を時々読む彼ではあるが、アニメ好きな友達に勧められてその手のファンタジー系の話も読んだことがある。周りが『俺も転生とかできたらなぁ』などと話していることを聞いたのは、両手で数えられないくらいにある。だがそれでも所詮は物語と思っていた自分がいた。そのためこのような話しは現実離れしすぎている。
ここまで冷静に対応してきた九条であったが、さすがに理解の範囲が飛びぬけており言葉を発することができない。それを見かねた神は
「ゆっくり考えてよい。君が行くようになる先は今は時間が止まっている。慌てずに理解をしていくとよい」
「……ぁ…りがとうございます」
と今の九条には答えるのが精一杯である。
この手の主人公はあっさりと喜び、冒険を進めていくものだが、実際にはそうはいかない。急な展開に、現実離れしたことが続けばよくわからなくなってしまうものである。
神に気を使ってもらったおかげか、それともその和やかな雰囲気を自然と醸し出す存在感のおかげか、持ち前の冷静さを取り戻し、そして頭の回転の良さを生かしてしばらくの間、情報整理に努めた九条は、その先の展開をいくつか予想し、後れを取らぬようにした。そして神に
「続きをお願いします」
「よかろう。君が行く世界は当然のことながら日本ではない。それどころか地球でもない。行く先には戦いもあれば、平穏もある。楽しいことも悲しいことも起こる。それを理解しておいてほしいのぅ」
「そうですよね異世界ですし。それでなぜ俺が呼ばれたのでしょうか」
「召喚者が求めたからという理由しかないのぅ。ただわかることは、その願った者は九条君自身を願ったのではなく、条件に合致したからであるのぅ。残念ながらそこから先は向こうで聞いてもらうしかない。」
これは予測できていなかった。そうなってくると疑問が浮かんでくる。
「それだと俺が行かなくても問題が無いようにも思えますが」
「確かに問題はない。じゃが九条君が行かないとなると、その願った者のところには誰も行かないものとなり、困ったことにはなるがのぅ」
「……それは俺に選択が無いようにもとれますが?」
「非情な選択も時には必要じゃ。神とて万能ではない。それに、仮に九条君が向こうの世界に行って死んでしまったとしても、日本に戻ってくることもできるし安心して行くことができるぞ」
九条自身、異世界に行ってみたい気持ちはあり、断る気はなかった。それでもなかなか話を進めきらなかったのに理由はなかった。ただなんとなく、素直に行くのは自分らしくないと心の中で思っていたからかもしれない。
それに『非情な選択』それを言う神に哀しさが見えたのは気のせいではないであろう。そのため九条にとって今後の行動に少なからず影響を与える言葉となった。なぜなら、
『神ですらできないことはあるのだから』
なかなか場面が進展しませんがご容赦を。
400アクセス越え、ユニークは100を超えました。
拙い文にここまでしていただき、本当に感謝いたします。
改めて、今後ともよろしくお願いします。