第三十三話
遅くなりました。
夜に行われた会議では、とにかく先制攻撃が重要視され、エレンの魔法で大多数を討ち取る作戦が考えられた。強めの魔法を用いることで数を削ぐためである。
皆がなかなか寝付けない夜を過ごした翌朝に戦いは始まった。ところが戦功を焦った冒険者が丘近くまで勝手に行ったことにより、魔物を刺激してしまい、魔物全体が冒険者たちの野営していた場所へと向かってきたのだ。
「静まれ、乱れるな!正面から来ているだけにすぎねぇ!弓や魔法を使う奴は構えろ!」
マテヴ本人も慌てている中で指示を飛ばす。先行した冒険者よりも後ろで構えていたから指示の余裕があったのだ。『放てぇ!』の掛け声とともに一斉に魔法や魔法によって強化された矢が飛んでいく。先頭集団の魔物を吹き飛ばす!
しかし数が数なだけにひるむ様子はない。
「統率され過ぎじゃないか?」
「ふむ、そのように見えるの。これほどに知性があったのか」
「二人とも冷静過ぎですよ!?もうすぐぶつかるんですけど!」
「エレン、魔法で多数を削るんだったろ?」
「あ!そ、そうでした」
少し時間をかけ、魔力を籠める。『焔よ!敵を焼き尽くす、焔火!』、トレントを倒した時よりも多い数の火の玉が魔物へと向かって行く。轟音と共に一気に爆発を起こす!
魔物を倒すことに成功するもまだ数がいる。魔物はほぼ全部が丘から下り、冒険者へと向かってきているようだった。
アサギも魔術を繰り出している。ゼロとの戦いで使用したような魔法陣をいくつも空中に浮かべ、そこから無数の式札が魔物に襲い掛かる。各個撃破を確実にしていく。混戦となっても使えそうである。エレンも負けじと違う魔法を放っているが、数は減らしているが魔物の勢いは止まらない。
とうとう混戦へとなってしまった。あちこちで冒険者と魔物が戦いを繰り広げている。
「オ、オーガだぁぁ!!」
「重装備者はオーガを止めろ!軍隊ウルフが右翼から来てる!弓構え!」
「うわぁぁ!助けてくれぇ!」
「いやぁぁ」
予定外の事態で混乱を極めている。なんとか魔物と戦えているものの、このままでは負傷者だけでは済まなくなるかもしれない。ゼロはマテヴらギルドの者がいるところに向かう。
「マテヴ、このままじゃ持たないぞ」
「わかっちゃいるが、こんなに統率がとられているのは初めてなんだぞ」
「撤退を視野に入れた方がいい。負傷者が多い」
「そいつは…」
「マテヴさん、早い方がいいですぜ」
ゼロとギルドの職員に言われ、マテヴは決断した。
「撤退だ!合図を出せ!」
合図が出され、冒険者たちが後方へと下がっていく。時間がかかりそうだ。
「ゼロの旦那。悪いが殿を引き受けてくれねぇか?」
「わかった。引き付けてくる」
そう言いゼロは前線へと向かって行く。魔物を一刀の下で斬り捨てていくゼロ。それも異常なスピードでだ。統率がとれていたはずの魔物たちだからこそ、誰が本命なのかに気付く。
「グオォォ!」
「ギャギャギャ!」
魔物が奇声を上げながらゼロへと襲い掛かる。しかし魔物は横から飛んできた式札に刻まれていく。
「一人で向かうことはないぞ主様。勇者殿は後方でなにやら防御魔法で魔物の進路を防いでいるようじゃが」
「とりあえず引き付けるに越したことは無い。もう少し減らしたら俺も引き上げる。手伝ってくれるか?」
「愚問じゃ」
エレンが粘ったおかげもあり、冒険者たちは命からがらといった状態で後方へと引き上げることに成功した。その裏にはたった二人で多くの魔物を討ち果たしたゼロとアサギの存在があったことを忘れてはならない。
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精進していきますので今後ともよろしくお願いいたします。




