第二十九話
閲覧ありがとうございます。
記憶はそこで終わった。
「結局なんだったんだあれは」
「あれはの、人工兵器の完成体を作る作業じゃ。成功したにはした。それに完璧じゃった。が、原因不明のまま制作者は全員死んでしもうた。残された我は長きに渡り誰に知られるでもなく存在しておったのじゃ」
「完成体なんだろう?誰も探さなかったのか」
アサギは首を振る。
「それはわからぬ。我は動けぬ代わりに周りの事を多少把握できる状態で存在していた。そして実験の結果、話す事が出来、魔術が使えるようになった。あの術者たちの話し方、魔力、クセ等が我に備わった形での。それ故、話し方であったり同じような魔術をしてもたまに違うことが起きる。主様は気付いていた様じゃが魔術も威力、制御等は完璧じゃが、稀に隙が発生する。それに彼らの自身の記憶はほぼ残っておらぬ。それ故なぜあのような実験が行われたかは知り得ぬ」
彼女、アサギが人工兵器、所謂ホムンクルスだとは思わなかった。正確には違うのかもしれない。
ホムンクルスはあらゆる知識に聡いと何かで読んだ。代償が作り出した者の命だとは思わなかったが。
あらためてゼロはアサギを見る。エレンとは違い可愛いと言うよりは綺麗と言うべきか。黒目黒髪はゼロと同じであり、セミロングくらいの髪はどことなく陰陽師や巫女らしくはないものの、これはこれでいいのかもしれない。身長はエレンよりは高く、ゼロほどではない。これが作り出されたとは思いにくかった。
「他に同じような存在はいないのか?」
「おらぬ。それはあの者らがそう言っておった。詳細はわからぬが、戦争で使うために試していた様じゃ。が、我を作るので精一杯だったようじゃ」
「それと魔術か」
「珍しい代物ではないと思うの。違うのかの?」
「俺も全てを知っている訳じゃないからわからないが、この世界は魔法だと言っているな」
それを聞き考え込むアサギ。『うむむ』と言い、『おそらくじゃが』と前置きをして
「主様と我の時代が離れているからじゃ。それで魔術自体が変わったとしか思えぬ」
「だろうな」
詠唱がいらない魔術をわざわざ魔法へと変える必要性が感じられない。
あまり悩んでも仕方ない。そう決めると、ゼロは気乗りしないながらも先延ばしにしていた質問を投げかけた。
「それで主様、いや存在意義について教えてくれ」
「それについては簡単じゃ。好きになった、それが答えじゃ」
臆することなくそう言われ、ゼロは答えに窮した。こうもストレートに感情を伝えられるとは思わなかったからだ。こちらを見るアサギは嬉しさ半分、不安半分といったところか。気持ちはわからなくもない。
卑怯だとは思いつつも聞いてしまった。『俺でいいのか』と。
「もちろん主様がよい。簡単な奴だとか企んでいるんじゃないかとか思われてしまうのも当然じゃ。我とて先ほどまで戦っていた者にそう言われると勘繰ってしまう。しかし主様。これは嘘偽り無きこと」
「はぁ…。わかったついて来い」
「やった!どこまでもついていくのじゃ」
不本意ではない。嬉しさもあった。ただゼロにとっては気恥ずかしかったのだ。
次回もよろしくお願いします。




