第二十七話
体調が悪く遅くなりました。
しばらく身じろぎもしなかった女性であるが、突如動き始める。扇は畳まれた状態であったが、開きこちらへ向け振った。
『何を?』と思ったゼロだったが、きらりと何かが光ったのを見て避けようとするが、少し間に合わず何かがコートを掠めていった。コートは見た目より丈夫なため何事もなかった。
敵から視線を離すのはよくないことだが、何が起き、通ったのか確認をしない訳にもいかない。ゼロの後ろにある襖に刺さっているそれは
「式札…?」
そう式札であった。刺さっても壊れない襖も襖だが、かなりのスピードで放たれた式札は曲がってもいない。
飛んできたものがわかったものの、新たな疑問もできた。それは何も詠唱されていないにも関わらず魔法が飛んできたことだ。確かにそれまで戦っていた騎士でも魔法を使っていたが詠唱はなかった。出現する数が少なかったため気にも留めていなかったが異常だった。
その理由として以前にエレンと話していた事が理由としてあげられる。エレンに質問したことがあったのだが、曰く
「詠唱をしないで魔法を使う事ですか?それはありえません。そのような事ができればどんなに便利かと思いますけどそれは夢物語です。魔法を使うには必ず詠唱がいる。これは不変の真理です」
そう答えをもらっていたからである。エレンが嘘を教えた可能性、知らなかった可能性もないにはないが、今は問題ではない。詠唱されずに攻撃が来るという事はいつ攻撃されるのかわからず、どのような魔法かもわからないことが問題だった。
扇が開かれることで魔法が来るのではないか、そう考えたゼロだが実際はそうでもない。閉じた状態でこちらに扇が向けられると魔法が飛んでくることもあれば、はじめのように開かれて振うことで来る事もある。
ゼロに向けて四方八方から式札は彼を襲う。辛うじて避けきれてはいるものの、時折避けきれない場合には刀で弾く。その際にはとても式札で攻撃されているとは思えない威力を感じる。
ゼロのスピードであるからこそ避け、刀で弾くことができていると言ってもいい状態が続く。だが彼自身が気付いている事だが、いつまでもこの状態が続けられないと思っていた。
稀に攻撃のラグが起きる事に気付いたゼロ。その一瞬を逃す手はない。『次の魔法の後に必ずそれが起きる』、自らの反撃のイメージを描きながら避ける。ところが、『テンポが変わった?それにこれは…』
テンポが変わっただけでなく、魔法陣がゼロの周りの空間にいくつも浮かび上がる!
『違う魔法!?避けられない、魔装を…』
次の瞬間、爆発が起きる!辺り一面を煙が覆い、どうなったのかがわからない。
やがて晴れてくる。と、少し汚れてはいるもののなんとか無事なゼロがいた。女性はそれが意外であったらしく表情を変えるがゼロには見えない。
「ごほっごほっ……。さすがに危なかった…」
再び女性から魔法が放たれるが、ゼロは大体を見切っていた。今まで攻撃に出なかったのはそのためである。魔装を少し高めに施し、式札を斬る。続けざまに放たれるが躱し、死角からのさえも躱す。
それなりの距離が二人の間にはあったが、反撃に転じたゼロがどんどんと近づいていく。一瞬の隙、女性の魔法が止まる。『奥の手で決める』
「斬の型、始」
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