第二十一話
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完全に囲まれ、その存在が相手に恐怖を与える。
そんな緊張感の中、一体のトレントが枝を鞭のように冒険者たちに向けて振った。ゼロはサッと動き斬り捨てた。
「エレン、時間を稼ぐ。皆を指示してくれ」
そう言われエレンが動く。
「火よ!我の壁と成れ、デュアルバリア!」
トレントと冒険者の間に火のカーテンができた。ちょっとやそっとでは破られそうにはないが維持するには長く持ちそうにない。
「皆さん固まらないで!じゃないとやられてしまいます!」
「だけどどうしようもないだろ、こんなに囲まれてちゃよ」
「それに魔法でここまでできるんだろ?他にも何かしながら逃げればいい!」
一人が逃げようと言い出すと皆も同じように言い始めた。
トレント。木に宿る魔物を言い、敵に対して枝や木の葉を使い攻撃を仕掛ける。やっかいなのは根を周辺の木々に伸ばし支配することができる点にある。周りの木々を倒しても根を斬らねば復活し、また本体を倒さなければ敵の数が増えてしまう。トレントの年齢が高ければ高いほど生命力も強くなり、支配下における木の数、本体の強さも上がる。
今回は本体がどこにいるかわからないため、敵わないとなると逃げようとなってしまうのも仕方ないのかもしれない。囲まれていては逃げられる相手でもない。各々が自分勝手に意見を言う。時間のない中、声を上げたのはエレンだった。
「逃げても街はどうするつもりですか?逃げ切れたとしても街まで追ってくるでしょう。そうなると被害が広がってしまいます。ですがここで倒せれば助かります!私とゼロさんが本体を相手します」
「オレたちは何をすればいい」
それまで黙っていたマテヴがそう聞く。彼もまたエレンのように覚悟を決めたのだろう。
しかしエレン自身は戦え、皆を鼓舞することはできるものの、どう指示すればよいのかはわからない。その手の事は苦手なのだ。
その時、木を利用してバリアの範囲外、つまり上からゼロは戻ってきた。
「魔法や弓が使える者は常に円になり、手数で攻めるようにしてくれ。剣に覚えがある奴はそこを援護。時間を稼いでくれ、すぐに決着を付けてくる。マテヴ頼めるか?」
「わかった。俺が指揮しよう」
「お願いします。必ず倒しますから!」
デュアルバリアが消える。木の魔物であるトレントは火が苦手で攻めてこなかったが、消えたとなると怖いものはない。そう言わんばかりに一斉に木が動き始める。
「右から来るぞ!戦士どもまずは止めろ!」
マテヴの指示が飛ぶ。数人が向かい、枝による攻撃を食い止める。その間にも他の木々が攻撃を仕掛ける。魔法が飛び、トレントを怯ませる。だが実力者が少ない今の冒険者たちでは次第に追い込まれていくのは目に見えていた。やはり本体を倒さなければならない。
「ゼロさん、トレントの本体を倒さないと意味がないみたいです」
「そうだったな。…一際気配が強いところがある。そこにいるかもしれない」
「すぐに向かいましょう!」
マテヴに向かうことを伝える。『さっさと頼むぜ!』と言われ、本体がいるであろう所に向かう。当然トレントも簡単には向かわせようとしない。右から左からと攻撃を仕掛ける。ゼロはそれに対して刀を振るう。
「援護は俺がする。とにかく真っ直ぐ進んでくれ」
「わかりました」
トレントからの攻撃はエレンに一切届かない。それはゼロが防いでいるからである。その姿はまるで王女を守る騎士を彷彿とさせた。
次は本体と戦います。
次回もよろしくお願いします。




