表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女DS  作者: 壱壱零五
第一部 魔法少女DS
4/28

魔法少女ダークストーカー -Ⅳ-

登場人物紹介その2

挿絵(By みてみん)

ハルの親友『レミ』

『ダークチェイサー』達の宿主であり、それらを指揮している人間。


因みに、一見肌に見える部分はダークチェイサーの皮膜で

決して素肌を晒している訳では無い。

●しんゆう


レミ「オジャマしまーす!へー…ここが二人の愛の巣かー」

ハル「そ、そんな…愛の巣だなんて…もぅ」


ディーティーとの決別。あれから三日後…ハルがクラスの友達を俺の家に連れて来る事になった。

ちなみにその友達と言うのが………あろう事か、ダークチェイサーの親玉…あのレミである。


俺「魔法少女の敵がクラスメイトで親友とか、ベタ過ぎにも程があるだろ…」


同じ学年である事は知っていたが、まさかここまで近しい存在だった事は予想外だった。

しかも聞いた所によると…お互いが今の立場になる前からの親友だったとの事。


とりあえずは三人で夕飯を一緒に食べる運びとなり、ハルが食材の買出しに行く…という流れになったのだが


俺「レミ…お前、よくもノコノコと…」

レミ「良いじゃない。ディーティーが居なくなった今となっては、そんなにギスギスした関係な訳じゃないんだし?」

俺「お前は良くても、こっちは全然良くない。頭ん中に爆弾入れられてて、気が気じゃ無いんだぞ!?」


レミ「あ、ゴメン。あれ嘘」

俺「……はっ?」


レミ「だから嘘だって。脳幹にちょっと残ってるのは本当だけど、爆発とか害とかは無いわよ。と言うか…むしろアンタに適応しちゃってるんじゃない?」

俺「…………」

いや待て、つまりはあれか?俺達はレミにいいように踊らされて、仲間割れしてディーティーを排除させられただけか?

………こいつは何を企んでいる?

俺「お前の目的は一体何なんだ?ダークチェイサーを使った世界征服か?虐殺か?さっぱり判らん」


レミ「ダークチェイサーの子達と穏やかに暮らす事よ。出来れば、悪人を懲らしめつつ…ね」

俺「悪人とか…人を襲っておいて、どの口が………ん?まさか、俺以外の被害者って…」

レミ「そ、全員悪人。と言っても、命まで奪ったのは本当に許せないような奴等ばっかりだけど」

と言われて思い出したのは、遊園地で殺された男女の二人組。


あの時の状況とレミの主張を重ね合わせ…俺は、その意味を理解した。


俺「んでも…被害者は全員死んだみたいに聞いたんだが?」

レミ「そんな事無いわよ。ちょっと悪い事しただけの軽度の悪人には、それ相応のお仕置きをしただけだもの」


………つまりはあれか?

明らかに被害者な…死者なんかはカウントしているが、軽度の被害は無関係だと踏んで見逃していたのか?

ディーティーの奴め……ザルにも程があるだろ。


俺「………何か、悪の親玉どころか正義の味方みたいだな」

レミ「アタシはそのつもり…だったんだけど。やっぱり、正義って一つじゃないのよね。アタシの正義も他人から見たら悪になるって思い知ったわ」

俺「当然だな」

レミ「だから…アタシは正義の味方じゃなくて、アタシの正義の味方になる事にしたの。ま、あんまり変わってないけどね」


俺「いや、認識の違いを認めるようになったのは大きな進歩だろ」

そう言って俺は、わしわしとレミの頭を撫でてやる。何かこう、こいつ思って居たよりも…

俺「思って居たよりも良い奴なんだな、お前…」

レミ「ちょっ、髪型がみーだーれーるー。それに、思ってたよりって何よー」

そして…褒められて照れる辺り、まんざらでも無い様子なのが可愛らしい。


俺「で、話は戻るんだが…今日は一体何をしに来たんだ?本当に俺達の愛の巣を見に来たって訳じゃ無いだろう?」

レミ「うん……ディーティーも居なくなった事だし、ハルに全部話そうと思って来たの。あ、アンタにも一部は教えてあげるわよ」

俺「…一部だけかよ」


レミ「全部は………まだ話すべきかどうか迷い中。ハル次第ではアタシから話す事になるかも」

俺「そっか…」

そう切り返されては、問う物も問えはしない。俺はこの場ではそれ以上の事を聞けなかった。



そして……ディーティーやダークチェイサーに関してのレミとの会話が終わってしばらく後。

買い物を終えたハルが、俺達の下に戻って来たのだが…


ハル「二人とも…」

俺「ん?」

レミ「何?」


ハル「何で…レミちゃんの髪、乱れてるの?何があったの?ねぇ?ねぇ?」

ヤバい………

困った事に、ハルが勘違いでヤンデレモードに入ってしまった。


こうしてこの後、改めてハルに納得して貰うための説明に30分近い時間を要し…

本来の予定である食事会が大幅に遅れてしまった事は、言うまでもない。



●うちあけ


レミ「ごちそうさまーっ」

俺「ご馳走様…相変わらずハルの料理は美味かったな」

ハル「その…お粗末様でした」


夕飯が終わり、ハルが食器を片付け始める頃……満腹になった腹を摩り、至福のひと時を感じる時間。

おまけも居るが…隣にハルが居て、同じ時間と空間を共有している事を実感しながら…ずっとこの時間が続けば良い、なんて事も考えてしまう。

だが…それは叶わない。その幸せをかみ締めたからこそ、活力にしてこの先の話へと進めなければならない。


俺「じゃぁ………本題に入るか」

レミ「…そうね」

ハル「え?何…?二人して…え?もしかして………」


………ハルの目がヤンデレモードに入ってしまっている。

あぁ……二人同時に切り出したせいか、また完全に勘違いしているようだ。


俺「いや、そうじゃない、そうじゃないから包丁を仕舞って落ち着いて聞いてくれ。ダークチェイサーに関わる事なんだ」

ハル「あ、何だ…私てっきり……って、え?!ダメですよ!レミちゃんが居るのにその事は…!」

俺「だからこそ話すんだ」

ハル「え…どういう…事?」


レミ「アタシから話す…って言うか、見せた方が早いわよね?」

そう告げてからレミは立ち上がり…レミが着ていた制服が、黒く染まり始める。あぁ…こいつアレをやる気だ。

俺は咄嗟にレミから視線を逸らして、横を向く。



ハル「え………レミちゃん…だったの?何で?どうして?何であの時、レミちゃんが私を…」

レミ「違うの、まずはそれが誤解で………」

俺「と言う訳だ、誤解だったらしい。聞いてくれ」

レミが色直しを終え…始まった会話。俺はそこで狼狽するハルを抑え、話しの舵を取る。


レミ「順番はちぐはぐになっちゃうけど…まずは、彼をダークチェイサーに襲わせた時の事について謝罪するわね」

ハル「…うん」


レミ「アタシはあの時、てっきり彼もディーティーの手先…あいつ同様にアタシ達を殺したい側の人間だと勘違いしてたの。その理由は…」

ハル「あ…そっか……私と彼との距離…そう言う事、だよ…ね?」

ん?どういう事だ?俺とハルの仲の事を言ってるなら、順番がおかしいんじゃないか?


レミ「そう…それで次に、他の被害者…と言っても悪人ばかりなんだけどね。あれも理由があって…まぁ私刑なんだけど、裁いてたの」


ハル「うん…それも今なら判る。つまり、その…一番最初の………」

レミ「………そう、あいつ等は死んでも償えない事をしていた…だから殺したの。でも、そこで一番大事な食い違いが起こっちゃったのよね」

ハル「真っ黒な恐ろしい怪物が現れて、あの時居た人達を食い殺して………このまま私も殺される。そう思った時…」

レミ「ディーティーが現れて、契約を持ちかけた…そんな所でしょ?断りようが無いのを判っていて、その上で…ね」


ハル「………それで私、ディーティーと契約してダークチェイサーを狩る…狩猟者になって……知らなかったとは言え、レミちゃんに……」

ぼろぼろと涙を流し始めるハル。そして、それをなだめるようにレミが胸を貸す。

レミ「それは良いの…それよりアタシの方こそ、この子達を守るためとは言え…ハルに辛い思いさせて…」


辛い思い…と言うのは恐らくあの事だろう。俺という足かせが居たせいで、ハルは魔力を消耗し…次の戦闘では女性として癒えない傷を負った事。

辛い思いなんて言葉で片付けられる事では無いが…レミにその責を追求するのは、また筋違いな事なのも判る。

もし俺が居なければ、あの襲撃も単なる牽制で終わった…それ考えると、どう足掻いても逃げ出せない後悔がまた溢れ出す。



俺「それで…割って入るようで悪いんだが、ダークチェイサーってのは結局の所…何なんだ?」

黙って抱え込んでいると、それだけで自責の念に押し潰されそうになってしまう。

だから…俺は我慢できなくなって、少しでもその空気を変えようと言葉を放つ。内容は…以前から耳に入れる事が無かった、それ。


俺「ディーティーが血眼になって狩ろうとしてたのって…何ってーか、この世界の平和のためとか、そう言うんじゃ無い気がするんだよな」

ハル「私がディーティーから聞いた話では……あっちの世界で殺戮の限りを尽くした危険生物で、それが逃亡してこっちの世界に来たって…」

レミ「成る程…やっぱり、あいつの良いように捻じ曲げられてるわね。アタシがあの子達から聞いた話とは全然違うわよ」

俺「…って言うと?」

レミ「あの子達、元々はディーティーに作られた人工生命なのよ」


俺「………はぁっ!?」

ハル「ぇ………」

思わず驚愕の声を同時に上げる、俺とハル。

今までの価値観が丸々反転してしまったたのだから、当然と言えば当然の反応だろう。



俺「えっと…ハル。その辺りの真偽は確かめようと思わなかったのか?確か念話とかでお互いの意思が分かったんじゃ…」

ハル「ダークチェイサーとの最初の遭遇の事もあって…口頭での説明でも、ディーティーの説明に疑問を持たなかったので…」

レミ「そこは…さっきも言ったけど、アタシのせいで起きた食い違いなのよね」

俺「まぁ、事情があるなら仕方ないだろ。話の腰を折って悪かったな、続きを頼む」


レミ「じゃぁ続き。複数の個性を持ちながらも核に意識の中心を持ち、各々の状況に特化した個体で殺戮行動を行うように作られた兵器…それがあの子達」

………新事実のオンパレードだな、おい。

俺「兵器として作られたってのは…やっぱり」

レミ「勿論、ディーティーに作られた時点での話。ただの人工生命を、他の誰かが改造した…って展開じゃ無いわよ」

案の定と言えば案の定だが…ディーティーに減刑の余地は無さそうだ。


俺「んで、大本…個性のバックアップがあるからこそ、その個性を乗せた個体を使い捨てるような…あぁ言う戦い方ができたのか」

レミ「そう…例え一体でも残っていれば、個性を復元出来る。個性の消失を気にせず戦う事が出来るの。でも形成可能な個体数には限界があるから」

俺「いつまでも、消耗戦を続ける訳には行かなかった…か」


判り易く考えれば、個性が人格…パイロットで、個体が機体のような物。

いつかディーティーが言って居たが…本来の数は126体。その内の78体が迎撃されて48体が残っていると言う所か。



レミ「そう言う事………それじゃ、話を戻しても良い?」

俺「あぁ、頼む」

レミ「この子達って、あっちの世界では違法の存在らしいのよね。生物兵器だし、当然と言えば当然なんだけど」

正直、違法とか以前に法律がある事も少し驚きなんだが…今は横槍を入れないでおこう


レミ「で…この子達が生み出されてから暫くしたある日、問題が起きた。と言っても…物凄く一方的な、酷い話なんだけど…」

俺「あぁ………何となくだが予想出来た」

レミ「監査が入って、研究…この子達の存在がばれそうになったの。そうしたらディ-ティーはどうしたと思う?」

俺「証拠隠滅しようとした…って訳だよな」


レミ「その通り。だけどこの子達にだって命があるし、生きたいって思うのは当然よね?だからディーティーの手を離れてこの世界に逃げてきたの」

俺「成る程…そして更にそれを追ってディーティーがこの世界に現れ、ハルを利用して抹殺しようとした…って訳か」

レミ「そういう事。全く…命を作り出しておいて、わが身可愛さにそれを消し去ろう何ておこがましいにも程があるわ」


ハル「一つ…聞いても良い?」

レミ「何?」

ハル「ダークチェイサーって…元々は生物兵器なんでしょ?その…こっちの世界で危険は無いの?」


俺「無い…と言えば嘘になるだろうが。何のために生まれたかと、何をするために生きるかは別問題だろ」

悪人限定とは言え人を襲った手前、レミ自身は答え難いだろう。だから…レミより先に俺が代わりに答える。


俺「現に、レミとは上手く共生出来ているみたいだしな」

人を殺す事自体は褒められた事では無いが…暴走の結果で無いならば、一先ずここは不問にして良いと俺は考える。

レミ「アンタ…結構物分り良いのね。この子達と結構上手くやれそうじゃない」


それは褒められているのか?

俺は…レミに促されるままに、こいつらと戯れている図を想像する…が………


俺「……勘弁して下さい」

襲われるようにじゃれつかれ、懐かれながらも侵食される…そんな図しか浮かんで来なかった。



●いえない


レミ「って感じで…ここまでがアタシの知ってる…多分一番信憑性のある真実。アタシからはこれ以上言う事は無いんだけど…ハルから彼に、何か言っておく事は無い?」


レミに話を振られ…何故か、一目見て判る程に身体を強張らせて…狼狽するハル。

明らかに…俺だけが知らない何かがそこにあり、ハルを中心にそれが隠されている事が判る。


ハル「わ……私からも………言う事は…無い………かな?ほら、レミちゃんが…全部…………教えてくれたし…ね?」

追求するのも可哀想な程の狼狽ぶりを見せるハル。。

対して…それを見たレミの方は、明らかに不機嫌そうな表情を浮べ…

レミ「そう………そうなのね、じゃぁ…」

何故か俺の方へと歩み、詰め寄って…

そして俺の襟を掴み……ズギュゥゥゥゥ~~~~ンという音でも鳴りそうな勢いで、俺の唇を奪い去った。


レミ「このままじゃ…あまりにもアンフェアよね。と言う訳で、アタシも彼を奪いに行かせて貰うわ」

待て待て、意味不明な事を言いながら舌なめずりをするな。と言うかそれは明らかに男女の立場が逆だ!

…と反論の言葉を心の中に浮かべるも、突然な出来事のせいで俺の口が回らない。


ハル「え?え!?ぇ…えぇ!?」

あぁ…しかも、ハルの瞳がヤンデレモードと混乱を交互に繰り返して収拾がつかなくなってしまった。

レミ「それじゃ、今日はもう帰るから。二人ともご馳走様」

いやいやいや、もうこれ以上余分な事を言って場を掻き回さないでくれ。


レミ「あ、そうそう…」


俺「何だ…これ以上ややこしくするような話はするなよ」

俺はやっとの事で頭の中身を整え、念を押してそれを口にするのだが……

レミ「ややこしくは無いわよ。むしろ、色々有耶無耶になりそうだから言っておくの」

俺「だから何をだ…」

レミ「アンタの事…冗談じゃなくて本気だから。アンフェアなまま今の関係で居るのだけは、親友でも絶対に許せない」

…と言って捨てて、レミは部屋を出て行ってしまった。

いや……だから俺の知らない範囲で話をするのは止めてくれ。


それに……もし本当に俺に好意を持ってくれていて、あぁ言っているのだとしても…

そう…その責任の殆どが俺にあるとしても、ハルの身体の事に、レミが絡んで居ない訳では無い。

レミもハル自身もその事は判っている筈なのに、何故あんな事を言えるのか…俺には理解出来ない。


そう…この時には理解できなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ