魔法少女ダークストーカー -Ⅱ- ★
●ゆききて
俺「あ、ヤベ…制服忘れた」
二度目のダークチェイサーの襲撃があった次の日の事。
前日の事を言い訳にしても仕方無いのだが…一連の騒ぎと、それた付随して携帯の買い替えに気を取られたせいか…
制服を持って来るのを忘れてしまったらしい。俺は念のためもう一度鞄の中を探すが、当然ながらそこに制服の姿は無し。
俺「今から取りに行ったら間に合わないよな…仕方無い、今のシフトのどっちかに、少し残業頼むか」
時給が減る事よりも、他人に迷惑をかける事の心苦しさから溜息が毀れ…渋々ながらもレジへと向かう俺。
だが俺がそこに辿り着くよりも先に、店側からドアが開かれ…
後輩「あ、先輩。妹さんが制服届けてくれましたよ?」
俺「………は?」
予想だにしなかった言葉と展開が俺を迎えてくれた。
俺「え?妹って?」
制服を受け取りながら、後輩に問う俺
後輩「違うんですか?え?じゃぁ…彼女?」
それに対して、犯罪者を見るような目で俺を見ながら問い直す後輩。
俺「いや、どっちも居ねぇから!」
…と公言した所で、俺はとある少女の存在に思い当たる。
俺「その子って…どんな子だった?もしかして、背はこのくらいで…髪はサイドテールだったか!?」
後輩「はい、そうです。名前は確かハルって言ったました」
俺「いや、それを先に言えよ!!」
そして予想は見事に的中。俺は慌てて店外に飛び出すのだが…既に、ハルとおぼしき少女の姿は無し。
またしても、変身前のハルの姿を拝み損なってしまった。
襲い来る後悔と落胆。
駐車場で膝を突いて倒れ込みながら、後悔の中で…それに気付く。
俺「そうだ…携帯!」
俺は真新しくなったばかりの携帯に手を伸ばし、記憶の糸を手繰り寄せてハルの番号をプッシュする。
俺「……………」
頼む…出てくれ!と言うか番号よ合っててくれ!
そんな事を考えながら耳を澄ますのだが…携帯から聞こえてくる筈のコール音は無し。覚えていたつもりの番号は間違っていたらしい。
諦めて携帯を切ろうとしたその時…
ハル『あの…どうしたんですか?』
携帯から、ハルの声が飛び出した。
俺「あ、え?ハル?」
ハル『はい、私です。ずっと黙って、どうかしたんですか?』
俺「黙って?いや、何時まで経ってもコール音が鳴らないから、繋がらないのかって…」
と言ってから、俺は思い出すように携帯の画面を見る…と、既に通話開始から数分経過の表示が見て取れる。
俺「…え?もしかして、コール音が鳴る前に取っただけ?」
ハル「はい。丁度携帯を持ってた時に鳴ったので」
俺「…………あー…ははは…そう言う事か」
どれだけ迂闊なんだ俺…あまりの恥ずかしさから、顔から火が出そうだ。
俺「えっと…な、さっき制服届けてくれただろ?ありがとな?」
ハル「いえ、このくらい大した事ではありませんから」
俺「んでも………あ、鍵とかどうしたんだ?あぁ…魔法か!」
ハル「え?あ、はい。そうです」
多少テンパり気味でマシンガントークな俺の問いに、ぎこちなく答えるハル。
俺は俺で、困り気味なハルの様子から、やっとの事でそれに気付き。改めて声の調子を抑え…
俺「えっと、じゃぁ…今後の打ち合わせも兼ねて、お礼に今度…飯でも一緒にどうだ?」
なけなしの勇気を振り絞り、食事の誘いを切り出すのだが……緊張のせいで、心臓がバクバクと音を立てて鼓動を打ち始める。
ハル「あの……その…」
そして、ハルが言い淀む間にも激しくなるその鼓動。今か今かと返答を待つ間にも、体温が跳ね上がって額に汗が滲み
ハル「では…お言葉に甘えても…良いですか?」
その返事を耳にして………
おっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!……と、心の中で絶叫しながらガッツポーズ。
だが、ここでガッついてしまったら元の木阿弥。あくまで表面上では平静を装い、会話を続ける。
俺「そ…それじゃ、いつにする?早ければ明日にでも…あ、俺丁度休みだから…」
ハル「そうですね、私も明日は空いていますから…明日でお願いして良いですか?」
そう言ってから、明日が土曜日だと気付くが…まぁそれは些細な事。
俺「勿論だ!んじゃ改めてまた明日。場所と時間は…」
ちょっとした恥ずかしさを軽く飛び越える程の喜びと達成感に満たされ、目の前が明るくなるのを感じながら話を進めるのだが…
ハル「あ、時間と言えば…出勤しなくて良いんですか?」
ハルのその言葉により…浮ついていた俺の魂は、地面に落下する事となった。
俺「………ヤバい、あと3分だ!悪い、また後で連絡する!」
しかし…地に落ちた魂も、いつまでも倒れたままでは居ない。
ハル「はい、お仕事頑張って下さい」
こうしてハルの応援を受けた俺は、この上無い程の意気込みと共に業務に臨み…
明日に胸躍らせながら、この日を過ごすのだった。
●まちあい
ハル「すみません、お待たせしましたか?」
俺「いや、俺も今来た所だ………って、一応確認しとくけど。ハル…だよな?」
ハル「え?あ、はい。私です」
駅前のポストの前で待ち合わせをして…初めてプライベ-トで顔を合わせる俺とハル。
今後の打ち合わせにかこつけて、遂に…前回、惜しくも見る事が出来なかったハルの素顔を見る事が叶った訳だが………
俺「………」
ハル「えっと…あの、どうかしましたか?私の顔に、何か付いてますか?」
俺「いや…カラーリングが違うだけで、随分とイメージ違うんだな…って、思ってな」
何か言わなければ…そう思って気持ちばかりが逸るが、上手い事気が利いた言葉が出て来ない。
何故か?理由は至って簡単だ、自分でも重々承知している。
こうして素顔のハルに会う事ができた事に………かつて無いくらいに舞い上がっているからだ。
ハル「えっと…判り難くて、すみません…」
俺「いやいや、別に謝る所じゃ無いって。その…今のハルも可愛いと思うし……な」
ハル「え…………」
俺の言葉に一瞬戸惑い、すぐに耳まで真っ赤に真っ赤になるハル。
つられて俺も…自分が吐いた台詞の気恥ずかしさも手伝って、真っ赤になってしまう。
ハル「あの……その……えっと…………」
ハルは真っ赤になりながらあたふたと慌て、俺はその頭に手を乗せて…撫でる。
ハル「え………ぁ…………」
つい先程まで慌てていた…かと思えば今度は恥ずかしそうに俯いて、上目遣いで俺を見上げて来る。
俺「悪い、ハルが可愛いもんだから…つい」
ハル「――――………ぅう…」
そして俺は、そんなハルの変化が面白く…言葉にした通り、可愛らしく思い……ついついちょっかいを出してしまう。
ハル「あの…もしかして、私の事からかってませんか?」
が…そんな戯れの時間も、いつまでも続けては居られない。
俺「さすがは魔法少女…俺の心の中までお見通しか」
ハル「魔法少女は関係ありません。さすがにここまで弄ばれたら、誰だって気付きます」
ハルは抗議の言葉を放ち…頬を膨らませながら、俺を責めるような視線を向けて来る。
と…ここまで来た所で、やり過ぎた事に気付き、やっとの事で俺の心にブレーキがかかった。
俺「悪い、機嫌直してくれ。その…どうすれば許してくれる?」
ハル「そうですね…とりあえずは当初の予定通り、今後の打ち合わせをして貰って…その後で」
俺「その後で?」
今までの無礼を詫びるべく、その条件を探りにかかる俺
だが…そんな俺に対して、ハルは言葉の途中で押し黙り………
ハル「デートに誘って、エスコートして下さい」
と言葉を続けて…唇に人差し指を当てながら、悪戯っぽい笑みを俺に向けて来る。
あぁ…そう言う事か。
どうやら、からかわれて居たのは俺の方だったらしい。
俺「畏まりました…意地悪お嬢様」
ちょっとした仕返し…わざと丁寧な言葉遣いで、執事っぽい仕草をしながら了解する。
ハル「もう…私は意地悪でもお嬢様じゃありません。そんなにお嬢様が良いなら、今度お嬢様の友達に会わせてあげましょうか?」
俺「おいおい、良いのか?お嬢様が俺に会ったら、一目惚れしちまうかも知れないぞ?」
ハル「はいはい。もしそうなったら大変ですから、間違っても惚れられないように、いつも通りに振舞って下さいね?」
俺の発した冗談にハルが乗り、また笑顔で冗談が返される…
そんな心地良い会話のキャッチボールに、俺の顔もついつい緩んでしまう。
俺「さて…それで、どこか行き先にご希望は?」
ハル「お任せします。場所選びからがエスコートですよ?」
それはまた、ぶっつけ本番で無茶振りをしてくれた物だ。
デート…デート…デート………どこか良い場所は無いかと、頭を捻るが…やはり良い案が出ない
困り果てる俺…だが、困っている筈なのに、それを不快には感じない。
この感覚を何と言えば良いんだろうか…とにかく、ハルと居ると心地が良い。
俺「それじゃぁ…打ち合わせが終わるまでの間、猶予を貰えるか?」
ハル「はい、それでは期待して居ますね」
説明し難い感覚…その感覚に浸りながら、俺達はまず喫茶店へと足を進めて行った。
●おでかけ
俺「さて、次はどれに乗る?」
ハル「あ…少し休憩しても良いですか?」
俺「あぁ、そう言えばぶっ通しだったしな。悪い…気付かなくて」
ハル「いえ、私の方こそ…」
俺「いや、謝んなって。ハルが悪い訳じゃ無いって言ってんだろ?」
ハル「それを言ったら、貴方だって悪い事して無いじゃないですか」
俺「……………」
ハル「……………」
俺「プッ……」
ハル「……ふふっ」
喫茶店での打ち合わせの後…
デートの定番、遊園地へと訪れた俺とハル。
到着が昼過ぎとなってしまった事に加え、初デートで焦ってしまったためか…
やや急ぎ気味のアトラクション消化にハルを付き合わせてしまい…その結果がこの有様である。
が…例の如く、こんなやりとりが心地良くてたまらない
俺「ソフトクリーム。ストロベリーとチョコ、どっちにする?」
ハル「じゃぁストロベリーの方を。あ…お金は…」
俺「いやいや、良いって」
ハル「ここまでも…入場料もパス代も払って貰いましたし」
俺「そー言うのは、男が払うって相場が決まってるんだよ」
ハル「でも…私がいきなりあんな事言い出したのが原因ですから……きゃっ!?」
俺はハルが言い終える前に、その頭に手を乗せ…わしわしと頭を撫でてその言葉を遮る。
俺「原因じゃなくて、きっかけな?あと…俺が奢りたくて奢ってんだから、ここはむしろ奢られるのが礼儀って物だ」
ハル「もう………収入だってそんなに無いのに」
俺「ぐっ………」
結果的にハルが折れてくれた…それは良いのだが、最後の最後で物凄く痛い所を突かれてしまった。
いけない…ここで切り上げられてしまったら、男が廃る。
俺「金なんて物はな…生きるために必要な分稼いだら、後は自分の好きな事のために使う物なんだ。つまり…」
ハル「つまり…?」
俺「俺はハルとこうして一緒に居るために金を使いたい。だからこれで良い…これが一番良い金の方だと思ってる」
詭弁も詭弁で良い所だが、考えた中でも最も説得力のある筈の理屈。
それをハルに返して、様子を見るのだが…
ハル「……………………」
何故だろうか…ハルの顔がみるみる内に真っ赤に染まり、今にも湯気を噴き出しそうになっている。
俺「………」
いや、違う。何故だろうかじゃない…思いっきりその原因になる事を、俺は言ってたじゃないか。
それに気付いた事で、俺の顔まで真っ赤に染まってしまった。
ハル「で、でも…将来のための貯蓄は、ちゃんとして下さいね?」
俺「お…おう………」
結局ハルの押し切りで勝負が着いてしまう…が、それ所では無い。
どうしようもなく鼓動が昂ぶり、ハルを直視する事が出来ない。
そんな中、逃げるように視線を彷徨わせたその先で……
俺「…………ん?」
帽子を深く被ったコート姿の…つい最近どこかで見た気がする少女の姿が目に留まる。
そして、不意にその少女が振り返り……帽子の奥から覗いた青い瞳が、俺の方を向いた時…
ハル「どうかしましたか?」
俺「あ、いや…デジャヴかな、ちょっと知り合いに似た子が居た気がしたんだ」
ハルの言葉により、俺の視線は引き戻された。
ハル「それで、その知り合いの子って…男の子ですか?女の子ですか?」
俺「ん?あぁ…女の子だけど、それが―――」
ハル「…そうですか」
心無しか、ハルの雰囲気がほんの少しだけ代わった気がした…が、多分気のせいだったのだろう。
一瞬だけ思慮を巡らせてから改めて見るハルは、つい先程までと同じ…少しはにかみながら笑顔を向けている。
と…そんなやり取りを終え、俺は少女が居た方を再び見るのだが…
既に立ち去ってしまった後らしく、少女の姿は既に消えていた。
居なくなってしまったのならば、もうこれ以上その子の事を考えて居ても仕方が無い。
俺はハルの方に向き直り、この先の予定を伺おうとするが…
ハル「………」
何故か…ハルの顔には、険しい表情が浮かんで居た。
最初は…俺が何かやらかしてしまったのかと懸念したが、そもそもハルの意識は俺に向いている様子では無い。
となると、次の候補に上がるのは………
俺「まさか…ダークチェイサー…か?」
ハル「はい…この近く、この遊園地の敷地内に現われました」
俺「くそっ…昼間だと思って油断してた。夜中に出るって訳じゃ無いのかよ!しかも、何でよりにもよってこんな所に!」
ハル「判りません…今までは夜中にしか現れなくて、場所も限られてたのに…」
大量の資材が詰まれた、建造中のアトラクション施設…その中を進む俺とハル。
作業時間外なのか、周囲に人の気配は無し。事が事なだけに、人目が無いのは幸いだが…同時に嫌な方の可能性も考えてしまう。
不安に苛まれながら更に足を進める俺達。そんな俺の予感に応えるかのように…奥に進むに連れて濃さを増して行く、鼻の曲がるような瘴気の匂い。
そして、その中から僅かに滲み出る…血の匂い。
男「た…助けてくれぇ!!俺が、俺が悪かった!だからっ!!」
女「嫌ぁぁぁあ!!!!」
俺「おい、今の声ってまさか…」
ハル「間違いありません、人の声です!」
嫌な音を立てて高鳴る鼓動、それに急かされるように…男と女の悲鳴を頼りに、声のした方角へと進む俺達。
突き当たった曲がり角を曲がり、やっとの事で悲鳴の上がった現場に辿り着くのだが…そこで俺達を待ち受けて居たのは
俺「っ…………」
暗がりの中に転がる…三つの死体。
一番近くにあるのは、体中を押し潰されたような子犬
そこから少し離れた場所には、男女の…カップルと思われる二人組の死体が転がっている。
片方…女の方は壁に打ち付けられ、もう片方…男の方は床に散らばった肉片と化した無残な姿。
生まれて初めて…人間の死体を目の当たりにした俺は、喉の奥から込み上げる吐き気を堪えて蹲りかける…が、今はそんな事をしている余裕すら無いらしい。
資材の物影から現われる、何本もの包帯のような黒い影…
そしてその先に佇むのは…包帯を捻り上げて作った蕾のような姿の………ダークチェイサー。
俺の予想に応えるかのように、ダークチェイサーの蕾が開き…その奥から現れた瞳が俺達へと向けられる。
だがハルはそれに臆する事無く、相手を見据え返し…瞬く間に光に包まれ、魔法少女の姿へと変身。
続けざまにステッキから光の刃を形成して、ダークチェイサーへと斬りかかる。
ダークチェイサーから繰り出される、包帯のような触手。
その先端が俺の耳を掠め、コンクリートの壁に突き刺さった所で…俺は初めて自分の置かれた立場を把握する。
ついその場の勢いで付いては来た物の…こんな戦いの中で、俺の存在なんて物は何の役にも立たない…と言うよりも、むしろ足手まといにしかならない。
せめてハルの邪魔にならないように立ち回ろう…そう心に決めた、まさにその時…
ダークチェイサーの触手が俺のすぐ目の前まで迫り、間髪入れずにハルがそれを切り払う。
更にそこから、ハルは流れるような斬撃で次々と触手を切り裂き…ダークチェイサーも、新たな触手を本体から生み出してそれに応戦。
拮抗し、割って入る隙すら無い攻防…そんな中、尻餅を付いてへたり込んだ俺の手が、先の攻撃で崩れ落ちたコンクリート片に触れる。
本当に、何もしないよりはマシと言う程度の些細な抵抗だった。
俺「これでも…くらいやがれ!!」
コンクリート片を俺が投げ付け、ダークチェイサーの触手がそれを跳ね除ける。
与える事が出来たのは、ほんの僅かな手間…だが、それはハルから見れば大きな隙。
攻撃の手が逸れたその瞬間を見逃す事無く、ハルはダークチェイサーに向けて切り込む。
皹の入った拮抗は、後は瓦解するだけ。
ハルの斬撃に押し切られるまま、ダークチェイサーは全ての触手を失い…遂には本体を晒すのみとなって…
その本体に向けて振り抜かれる、ハルの光の刃。
横に薙がれた光が、ダークチェイサーを真っ二つに切り裂き……この戦いに決着をつけた。
俺「その…悪い、邪魔になっちまったみたいで…」
ハル「そんな事ありませんよ。貴方のあの一撃のおかげで勝てたんですから」
戦いを終え…元の姿に戻ったハルに、俺はまず謝罪の言葉を向ける。
俺「そう言って貰えると助かる。しっかし…さっきも言ったんだが、何でこんな所に…」
ハル「今回はイレギュラーな出現…あるいは、私達が把握していたのは氷山の一角に過ぎなかったと言う可能性も…」
俺「…それは勘弁して欲しい可能性だな。まぁ、後でディーティーに確認してみないとか…」
先の戦い…ダークチェイサーの出現で得た情報の確認を行うその最中…ふと、目に留まったのは男女の死体。
少し見ない間にその肉片は黒く変色していて、何やら質感も異質な物に変化しているように見て取れる。
そして、俺がその事を確認しようと、手を伸ばしたしたその時………
俺「おわっ!?」
小さな破裂音と共に、肉片は黒い煙のような物へと変わり…着衣の切れ端だけを残して、跡形も無く消え去ってしまった。
ハル「………ダークチェイサーの…瘴気の影響です」
呟くハルの声…それの内容を理解する事で、俺の背筋に寒気が駆け巡る。
一歩間違えば………あの時ハルに助けて貰っていなければ、俺はこいつらと同じ事になっていた…その可能性が俺の心を揺さぶる。
ハル「…すみません、私の力が及ばないばかりに」
俺「いや………ハルには何の落ち度も無い。ハルは十二分過ぎるくらいに良くやってるさ」
今の俺からかけられるのは、そんな言葉くらいの物。後は………そうだな
俺は…震えるハルの手を、そっと握った。