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3話目

扉を潜ると、そこは外国だった…。


「散歩で外国旅行とは贅沢だな…」

思わず呟いてしまった。


歴史を想わせる石造りの建物に、モザイク画の様な石畳の広場、女神像の水瓶からキラキラと水が流れ出る涼やかな白い噴水、広場を歩く色とりどりの髪色に勇ましい甲冑、きらびやかなドレス姿の人々。外国だ。


しかし、すぐ近くを大きな剣を背負ったセーラー服の少女と、鍛冶屋の様なハンマーを担いだパンダの着ぐるみと、真っ赤な薔薇の花束を持ったスキンヘッドの強面マッチョが楽しげに話つつ歩いていった。…外国?


広場を眺めてみると、他にも個性的な人々が居た。

興味深くあちこち見ていると、噴水の向こうに孫が見えた。

手をふるとすぐに気付き小走りで近づいてきた。


「爺さん、無事に来れたね。どう?違和感とかない?」


孫は別れた時の服装ではなく、紅い甲冑姿だった。

緋い髪に紅い甲冑、外国に溶け込んでいる。

改めて自分の服装を見ると、緑の長袖シャツに茶色のベストと茶色のズボン、焦げ茶色のブーツだった。

外国?


孫と自分を見比べていると、

「爺さんの服装は初期装備。プレイヤーは最初はその服装だから。あと、ここは外国じゃなくてゲームの中の、"はじまりの街"って所だよ」

と笑いながら教えてくれた。

…心を読まれた。


孫に連れられて広場の一角へ移動した。そこにははじまりの街に関する依頼が表示された掲示板があり、その依頼をこなすと報酬が貰えるそうだ。「散歩のついでに出来そうな依頼があったらぜひ受けてみて」と言われた。


その後、孫と広場の隅にあるベンチに座り、講習でも習ったゲームの基本操作のおさらいをした。


フレンド登録の仕方、メールの出し方、離れた相手との会話の仕方等々、覚えきれない気がするが、とりあえずステータス画面を出してヘルプを押せば用途に合わせた選択肢が出たので、暫くはヘルプに頼ろうと思う。

追々使いこなせる様になれば良いだろう。


持ち物の確認をすると、"ルームの鍵"があった。

孫に教わりつつ地図を表示して、ルームの場所へ行ってみる事にした。


街の東側にある居住区の、紅い屋根が可愛らしい小さな宿屋だった。

中を覗くと受付にふくよかな女性が居たので、声をかけてみる事にした。


「お帰りなさい。ハルさん」


と、笑顔で出迎えられた。

孫は私の親族なので一緒に入れた。

矢印で示された扉を開けて中に入る。


簡易キッチンと、小さな机、椅子が一脚にシングルサイズのベッドが一台。こじんまりと収まった部屋だった。


孫がベッドに座ったので私は椅子に腰かけた。


「体力を回復する方法が"睡眠"でね、ノーマルプランのプレイヤーはお金を払って宿屋に泊まるか、消費アイテムのテントを使うかなんだ。だからタダで泊まれるルームってちょっと羨ましい。

まあ、はじまりの街の宿屋なら街の外で一番弱いモンスター5匹倒せば泊まれるくらいの値段なんだけどね」

と笑った。


私の環境をあれこれ確認した孫は、これなら大丈夫そうかな。と納得したようだ。

それから、装飾アイテムの髪紐を貰い髪を結う。

何かの補助がかかっているらしいが教えてくれなかった。


孫を見送るために宿屋の前まで出てくるといつの間にか夕方になっていた。

「休まずに活動し続けると、うっかり過労死とかするから、視界の端に表示されてる体力値は気にしておいてね。あと夜は危ないから街の外には出ないで。街の中でも気を付けて。もし、何かあったら遠慮なく連絡して」

と言われたので、夜から朝まではルームに居ると約束した。


ちなみに、孫の最近の活動場所は少し離れた街らしく、私はまだ行けない場所だそうだ。

その街のもう少し先で新しい水のエリアを見つけたらしい。遠目に大きなカニが見えたから近々仲間たちみんなでカニを捕りに行くのだそうだ。


「多分、きっと、カニの身がドロップすると思うから、カニ鍋しよう!」と張り切って出掛けていた。


さて、夜まではあと少しだが、ここらを一周するくらいの時間はあるかな。


では、初散歩に、

ちょっとソコまで…。


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