街・ギルド
加筆修正しました、タヌコ関係。
入り口まで行くが、どうやら何か審査があるようだ。
列に並んでみる。
「次の者、前へー」
順番が来る。
「名前と出身地、街へ来た目的を述べよ」
「名前はアルス、ラダ村出身で街へは冒険者になるために来ました」
「あぁ?お前みたいな子供が冒険者にぃ?」
あぁ、見かけで判断するバカか。
「えぇ、登録は誰でも出来ますので」
ニッコリ笑ってやる、この笑顔を訳すとしたら<サッサと通せよ糞門番>だ。
「あっ、あとラダ村の村長からの紹介状があります」
村を出るときに証明書の代わりになるとか言われて渡されてたんだった、あんまり話聞いてなかったから忘れるところだったぜ。
「紹介状か、ふむ……よし、通っていいぞ。ただし街の中では問題を起こさないようにな!」
適当に返事をしながら街へと入る。
やはり村とは全然違うな、かなりの人で賑わっている。
こちらの世界に来て最も多く人間を見たかもしれない。
人間に混じって亜人種もチラホラ見かける。
記憶では知っていたが実物は始めてだ。
あれが獣人か、中々目付きの鋭い犬だな。
街の作りも良さそうだな。
入り口の扉も頑丈そうだったし壁はレンガのような物で街を囲っているのか、大抵の魔物じゃ壊してまで入ってこようとはしないだろう。
やはり安全度も村より街の方が高そうだ。
近くの露天で果物を買い、冒険者ギルドの場所を聞く。
どうやらそう遠くないらしい、大通りを真っ直ぐ行けば右手に見えてくると言われた。
果物をかじりながらブラブラと歩いていく。
リンゴに似た果物で味もほぼリンゴだ、実に美味い。
ケインに金貰っといてよかったな、まぁリンゴ位なら店主に見付からずに盗むくらいわけないのだが。
にしても露天の数も種類も多いな、村には一個もなかったが。
寂れた雑貨屋しかなかったからな、そういえばあの主人はどうしたかな?
ヴォルス殺ったから少しは店も建て直したか。
そんなくだらないことを考えていたらギルドを見付けた。
看板に冒険者ギルドと書かれており時おり鎧に剣や弓などを持った冒険者風の格好をした者達が出入りをしている。
とりあえず中に入るか。
中は結構広いな。
入り口の右側に人がたむろしている。
大きなコルクボードに紙がいっぱい貼ってあるようなのでクエストボードの類いだろう。
椅子とテーブルが置かれてあり休憩所も兼ねてあるようだ、何やら視線も感じる。
今は無視しておこう。
左にはカウンターがあるのだが冒険者風の男がバックから取り出した物を渡している。
あっちが買い取り所だろう。
となるとやはり正面のカウンターが受付か。窓口が4つありとりあえず一番空いている所に並ぶ。
にしてもこの受付だけ異様に人が少ないな、マズったか。
「次の方どうぞー」
むっ、早速順番が回ってきてしまった。
「こんにちわ、冒険者登録をしたいのですが」
「えっと……はい、初回登録ですね。この書類のここに本名とこっちの同意書にサインを」
書類と同意書をよく読んでからサインする。
簡単にいえば仕事中の怪我や事故は全て自己責任、ギルドの規約を破った場合罰則に従うというような類いの内容だった。
「本日担当させてもらいます、タヌコと申します。よろしくお願いします。」
「ではこのナイフで指を切ってこっちの2枚のカードに血を垂らしてください」
言われるまま指を切りカードに血を垂らす。
2枚のカードが淡く光、垂らした血が消える。
「ではこちらで一枚控えとしてカードを貰って残った一枚がえっーと、アルスさんの物です」
「このカードは冒険者としての身分証でありクエストを受ける際や魔物の素材の買い取りなど色々な場所で提示を求められる場合があります」
「紛失また破損した場合、新しいカードの発行には3万Gの手数料がかかりますのでご注意ください」
「またこのカードの効果でアルスさんのレベル、ステータス、またこれは人によりますがあればスキルが表示されます」
「質問だが、俺の情報は俺以外の誰が閲覧可能だ?」
「は、はい、アルスさんの情報は担当の私タヌコとギルドマスター、副ギルドマスターの3名です」
タヌコとかいうやつの説明を聞いて再度手元のギルドカードに目を落とす。
名前:アルス
Lv : 26
職業:ゴーレム職人
最大HP180
最大MP280
力180
身の守り150
素早さ300
器用さ400
スキル:ゴーレムメイカー
「たっ、確かに加護持ちの方は少ないですが、冒険者カードの情報がギルドから外部に漏れることはありませんのでご安心を」
小声で喋ってなければ顔面パンチだったがまぁいいだろう、この位のリスクは許容範囲だ。
顔面といえば、タヌコは亜人なのか。
タレ目で目の回りが若干黒く耳も頭の上についている。
名前と顔から察するにタヌキの亜人か。
アルスの記憶ではタヌキという種族がこの世界にいるのかまでは分からない。
かといって調べてまで知りたい情報ではないが。
「分かった信用しよう、レベルとステータスについて聞きたい」
「えっと、どのようなことを?」
「ギルドでの平均レベルと平均ステータスについてだ」
「個人のことについては秘密事項なのですが一般的に中級者の方でLv 20〜30、ステータスに関してはLv ×10の値が各ステータスの大体の平均かと思います」
「あと、職業について教えてくれ」
「職業には各神殿でお布施を払うことにより就くことが出来ます。職業に就くまたは転職しますとその職業に適したステータスに補正が付きます。」
転職も出来るのか。
「ただし、特殊な職業にすでに就かれている方、もしくは就かれた方はあまりそれから転職しません」
「なぜだ?」
「特殊な職業、珍しい職業は他の一般的な職業に比べてステータス補正も高くなるからです」
なるほど、俺のゴーレム職人なんかはスキルと一緒に勝手に付いてきた職業だが特殊な職業だけにステータス補正も高いということだな。
「初めて冒険者登録にいらっしゃる方は初級者の方が多いのでアルスさんはとても優秀かと思います」
「そいつはありがとよ」
おっと、ついもとの口調が出ちまうな。まぁ元のアルスを知るケインもいないしいいか。
となるとやはり俺は中級者ランクということか。
ただステータスに関してはレベル換算でいくと各パラメーター値260が平均ってことは随分尖ったステータスみたいだな。
素早さはそれなりにあるがあとは平均かそれ以下、器用さは抜きん出ているがスキルから来たものっぽいしな。
ゴーレムメイカーにゴーレムメイカーLv 1のようにレベルの概念がないってことは、ゴーレムの扱いは俺のレベルもしくは器用さ依存のようだな。
前衛向きなステータスじゃない上に職業とスキルはなるべく秘密にしておきたい。
となると冒険者同士組んでパーティー戦なんて無理だな、信用できない。
となると当分ソロか、クエストもその方向で探さないといけないな。
「あのぉ、カードで名前以外の部分は念じれば消せますので試してみてください」
頭のなかで念じてみる、なるほどこれは便利だな。
まぁ職業も明かさないやつと一緒に命を懸けて仕事しようなんてやつはいないだろうからやはりソロか。
「魔物の素材の買い取りはやっているか?」
「はい、向かって右手のあそこのカウンターが買い取り所となっています」
やはりあそこが買い取り所か。
「世話をかけたな」
「い、いえ。またよろしくお願いします」
何がよろしくなのかは分からんがまぁいいか、とりあえず買い取り所へ向かう。
窓口は2つあったが片方が空いたのでそちらに流れる。
「買い取りを頼む」
「では、冒険者カードとこちらの箱に魔物の素材をお出しください」
俺はリュックから袋を取り出すと箱の中に全部ぶちまける。
「こりゃまた大量ですな、少しお時間が掛かりますがよろしいですか?」
「構いません」
暫し待つ、昼過ぎだから買い取り客も少ないのか後ろに並んでいない。
暇だったので買い取り所の壁に書かれていた注意書を読んでいたが、どうやら夕方が忙しいみたいだな。
夕方からは整理券を取って順番に呼ぶ的なことが書かれている。
朝クエストに行って夕方素材を売って金を貰うのが一般的なのだろう。
「お待たせしました、一角ラビットの角×4、格闘フォックスの爪×8・痺れスネークの麻痺牙×2・一突きボアの牙×8・レッドベアーの赤い宝石×2ですね」
「損傷の激しいものは買い取り額から減額させていただきまして全部で合計8万6000G になります」
まぁゴーレムが殴れば大抵の素材は折れたり曲がったり傷が付くからな、一応原型をとどめているものを中心に集めてきたがこんなものだろう。
「OK だ、お願いする」
「お受け取りは現金にされますか、それともお預けなされますか?」
「ん?お預けとは?」
「初めてのご利用でしょうか?失礼しました、こちらのパンフレットを御覧ください」
パンフレットを見せられながら説明を受ける。
どうやら冒険者ギルドは銀行のようなに現金を預けたり引き出したりといったこともやっているらしい、利子は付かないが手数料もなく支店は世界中の街にあるというのだから使い勝手は良いのだろう。
冒険者ギルド発行のキャッシュカードのようなものか。
今はケインに貰った金も手付かずで残ってるしどうするか。
「う〜ん、全額貯金で」
「畏まりました、パンフレットは持ち帰ってもらって構いません。ご利用ありがとうございました」
悩んだが全額預けることにした、あまり大金を持ち歩くといらぬ危険を招くからな。
出てったあと背中からブスリなんてことはマジ勘弁。
お気に入り登録また文章評価してくださった方々ありがとうございます。
アルスのステータスを数値化してみました。
あれじゃ前衛は厳しいですよね。
Q、スキルもゴーレムもまだ隠しておきたい上に信頼できる仲間もいないアルスは次回どうするのでしょうか?
↓
A、分からない、まだ執筆中(^q^)