ギルド3
次回図書館といったな、あれは嘘だ!
すいません、ギルド回になります。
魔物の素材の買い取り額に誤りがあったので修正。
レッドベアーの赤い宝石×1→2万G
街に帰ってきた。
辺りはすっかり夕暮れである。
街の門はギルドカードを見せればほぼ素通りだ。
俺はさっそく冒険者ギルドへと向かう。
タヌコの窓口はいつも空いていて助かるな。
「よっ、クエスト達成してきたのだがどうしたらいい?」
「あっ、アルスさんお帰りなさい。無事帰ってこられたんですね!」
「あぁ、でクエスト品はどうすればいいんだよ」
「はいっ、クエスト品はこのトレイの上にお願いします」
手持ちのカゴとリュックから袋を一つ取り出し並べる。
「こちらのカゴの中身がラズベリの実ですね、わぁ美味しそう♪」
「クエスト品なんだから食うなら金払えよ」
「しっ、失礼な。ここで食べたりしません!!」
どこで食う気だよ、ってか食うのは決定かよ。
「クエスト品のラズベリとレッドベアーの尻尾4つを確認しました、報酬の受け取りまたクエスト品以外の素材の提示は買い取り窓口でお願いします」
「あぁ分かった、あと森の中で冒険者達の死体を見付けたんだが」
「死体ですか?生存者はいなかったんですか?」
「あぁどうやらレッドベアーにやられて死んだようだった、冒険者達の死は確認したから間違いはない。あと死体は穴掘って埋めてきたマズかったか?」
嘘は言っていない。
「その対処で大丈夫です、何か身分を証明するような物は持っていませんでしたか?」
手っ取り早く火葬も考えたが森で火葬なんてして火事になったりしたら笑えないから土葬にした。
「そういうと思ってギルドカードを拾ってきた、ただ一枚は破損が酷くて3枚だけだが」
「そうですか、こちらに見せてもらえますか?」
俺は血が付着した3枚のギルドカードをタヌコに渡す。
「もう少し……もう少し早く気付けていれば助かったかもしれないのに」
「アルスさん……あまり自分を責めないでください、冒険者になるということはその覚悟があるということですから」
……いや、もう少し早くってのはもう少し早くあのバカ達が自分達の実力に気付けていれば無駄に死なずに済んだのになって話しなんだが。
大体あいつらに覚悟なんてあったのか?
少なくともあの時残った最後の2人にそんなものはなかっただろう。
「調べてみましたが、どうやら4人は固定パーティーを組んでいて最近別の街から流れてきた方々だったみたいですね。レベルと最近のクエスト受注ランクを見る限り少し無茶をしていたようですし」
あぁ真性のバカだったのか、4人もいて自分達の実力を死ななきゃ分からないとか死ぬべくして死んだようなものだな。
無謀と勇気は違うのだ。
実力がないのならば準備をし倒せる敵を倒す、それが基本だ。
それでも死ぬときは死ぬ。
生きるために泥水を啜り生き残るために他者を蹴落とす、それが出来なければ存在事態がなくなる環境で俺は育ってきた。
生きるということは醜い。
うわべだけで語るやつは俺をクズというかもしれない、ただ俺には俺のやり方があり信じるものもある。
それを曲げる気はない。
「冒険者という者はそんなもんなのか?」
「やはり一攫千金を夢見て来る方、特に新人の方やあと中級ランクに入りたての方などは自分の力を過信して力量以上の難しいクエストを受けて怪我する方が多いですね」
「私共も窓口で助言はするのですがそういった方達には中々聞き入れてもらえないんです、ギルドとしても最低限レベルが見合えばクエスト申請を拒否するような仕組みもありませんので……」
冒険者ギルドも完全に出来上がったものではないんだな。
ファンタジー小説の中でも冒険者ギルドって無数の作品に登場するのに、作品毎に微妙に仕組みが違い技術レベルにも差がある。
もしかしたらこの世界の冒険者ギルドは規模は大きく技術レベルもあるが仕組み自体は成熟していないのかもしれない。
俺がギルドに冒険者登録に来た際も必要最低限の説明しかなかった、要するにマニュアルや手引き書といったものの成熟度合いが低いのだろう。
そりゃ冒険者ギルドを会社に例えると、実際に会社経営する側からみればかなり儲けられるコンテンツだろうからな。
仕事対象(魔物)は黙っていても降って沸いてくる上に労働者(冒険者)が仕事中に死んでも損害賠償や慰謝料などなしで気兼ねなく使い潰せる。
その上、人々から感謝されるのだ。
冒険者ギルドのおかげで魔物を退治できた、助かったってね。
仕事も完全出来高制でこちらの取り分も高いのだろうが福利厚生や業務内容から考えればブラック・激務は間違いない。
文字どおり命懸けなのだから。
こう考えるととんだブラック企業だな。
社長以下幹部の顔も全く見えず会社としての透明性は甚だ疑問だし、人々を助けるなどの大義名分の上に妄信的に正義を振りかざし誰もそれを止められない、社長の顔が見てみたいぜ。
きっと清々しいほどに悪い顔をしているだろう。
まぁタヌコみたいな末端は知らずに働くだけだからな、自分達がせっせと冒険者を死へと運んでいるなんて現実を直視してしまえば普通は病んでしまう。
まぁ命の軽い世界ではあるが。
正義がそれを見えなくする。
本当は正義というものも存在するのかもしれない、転生なんていう有り得ないと鼻で笑われるようなものも実際にあったんだし。
ただ前世の世界に溢れる正義なんて偽物ばかりだった。
正義なんて都合のよい解釈・屁理屈でしかない。
正義について語るとどうしても哲学なんていうネチネチとしたものが偉そうにスタンバってくる、あまり深く考えるのは止めておこう。
「で、死んだ冒険者達の遺品はどうなるんだ?貰って良いのか?」
大事なのは金・現物支給だ。
「あっはい、亡くなった方の遺品を発見した場合ギルドカードを除くそれらは第一発見者の方の物となります」
「ただし第一発見者が殺害によって利益を手に入れようとした場合はその資格は無効となりギルドに加盟していれば追放また重罪となります」
「どうやってそれを証明するんだ?」
「アルスさんのギルドカードを提出してもらますか?」
「ん?ほらよ」
タヌコに渡すと水晶玉みたいなやつにカードをかざしている、おっなんかカードが青く光ったな。
「はいこれで確認は終わりました」
「今のは何だったんだ?」
あの水晶玉で何が分かるんだろうか。
「ギルドカードに登録した者が同じく登録したものを殺すと赤く光るのです、今のはそれを確認しました」
イヤイヤ、もし俺があの森で冒険者を殺して追い剥ぎでもしてたら今頃カードが赤く光って処刑台に直行ってか?
そんな重要なこと先に言えよ!
まったく……やる前でよかったぜ。
「俺はそんなことしてないさ……で、そのカードが赤く光る条件っていうのはいくつかあるのかい?」
「赤く光る条件に関してはギルドの秘密事項となっていて教えることが出来ないのです、すいません……」
チッ、たしかに全部教えれば裏を掻いて殺して奪うなどの行為で一攫千金を狙うやつが出るだろうからな。
俺ならゴーレムを使って殺せばカードは赤く光らないかもしれない。
ただ試そうにもリスクが高すぎて下手なことはできないか。
「遺品は提出・確認する必要もないのでアルスさんのお好きにしていただいて結構ですよ」
死んだらそれまでってか、軽いねぇ命も口調も。
まぁ大したものは持ってなかったんだけどな、剣も鎧もボロボロで使い物にならなかったし金も対して持ってなかった。
まぁ収穫といえば2倍リュック位か、破れてなかったし多少血は付いていたが洗えば大丈夫だろう。
埋めてやった駄賃にリュックは貰ってくぜ、死んだ後も人様の役に立って嬉しいだろ。
穴掘って埋めたのはゴーレムだけどな。
まったくシケたやつらだったぜ。
タヌコと話す用事もなくなったので素材を換金しある程度貯金してからギルドを出る。
外はスッカリ暗くなっていた、今日は寝て明日は図書館へ行こう。
俺は夕食を求めて足早に宿へと向かった。
夕食夕食ぅ♪
過去に素材としてギルドに売り払った物の買い取り額一覧
(各一個の値段)
一角ラビットの角400G
格闘フォックスの爪800G
痺れスネークの麻痺牙3000G
一突きボアの牙4000G
レッドベアーの赤い宝石20000G
レッドベアー狩るだけで2万!
これから毎日レッドベアー狩ろうぜ!!
感想の中で主人公が死体の処理と持ち物の処分をどうするか色々楽しみにしてくれていた方がいましたが、土葬&きっちり追い剥ぎという形にしました。
感想は目を通してなるべく全てにコメントさせてもらってます、お返事に時間がかかり申し訳ないです。
土葬は完全にゴーレム担当なので実質主人公は追い剥ぎのみなんですが金の有り難みを知っている主人公はシケた奴等でも埋めてやるのです。
ちょっと良いやつと思ってしまった方は既に考え方がちょっと悪い人です。
前提としてリスク計算して損得で人を見殺しにしてますからねこの人!
レッドベアーの素材買い取り額ですが、通常一人で狩る魔物ではなく中級ランクの者達が2~4人のパーティーで倒すので頭数で割ったら妥当な金額と強さかなと思います。
正義や生きている意味など哲学として考えると面白いと思うのですがどうしても堅くなりますよね、誰かポップコーンとコーラを楽しみながら気軽に読めるユーモアのある哲学なんて小説書けば需要あるんじゃないかなと思います、もしドラ的な感じで。
ちなみに私は考えるのが好きなだけの凡人なのですぐ論破されて顔真っ赤です。
次回本当に図書館回、ゴーレムのお話。