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幼なじみのひかげちゃんは鬼の子、泣き虫の子。

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/05

「暸〜、またひかげちゃん泣いてるよ〜」

「はあ!?」

クラスのやつにそう言われて、おれはしかめっ面で返した。

「なんでおれに言うんだよ」

「暸がひかげちゃんの保護者だからでしょ」

「ただの幼馴染だって」

はあ、とため息を吐いてから、おれはひかげのところに向かった。

「ほら、なんだかんだほっとけないんだよね、暸くんってさ」

そんなんじゃないっての。

ただ、ひかげを泣き止ますのが、おれが一番得意なだけで。

「ったく、何してんの」

「…暸ちゃ〜ん」

ひかげはおれが来るなり、大きな目に涙をいっぱい溜めて振り向いた。

小学5年生になっても、ひかげは泣き虫のままだ。

「ど、どうしよう暸ちゃん。由衣ちゃんに、私の角が当たっちゃったの…!」

ひかげは、額から生えている2本の角を手で覆い隠すようにしていた。

あー、角か。

「由衣、どこをケガしたんだ?」

「あ、ケガはしてないの。ただ、ぶつかっただけで」

由衣は全然大丈夫そうで、苦笑いしていた。

おれから見ても、どこもケガしていなさそうだった。

「ほら、由衣はこう言ってるぞ」

「で、でも、角だったし…」

ひかげはオロオロしながら、由衣の肩あたりを見つめている。

そこに当たったのか。

んあー、どうすっかなぁ。


ひかげは、自分が鬼だということをとにかく気にしている。

おれからしたら何を今更なんだけど、ひかげがそれじゃ納得しないのも知っている。


「由衣、悪いんだけど一緒に保健室行ってくれないか?」

「うん、いいよ」

「ほら、行くぞ」

「…うん」

保健室に行くまで、ひかげはおれの服の裾を握っていた。


「かすり傷すらないわね。これなら何も心配ないわ」

「ほ、本当ですか…!」

保健室の先生の言葉に、ようやくひかげの強張りがとれたのがわかった。

「よかったな。由衣にお礼言いな」

「ありがとう。由衣ちゃん…」

「ううん、ひかげちゃんは大丈夫だった?」

「私は平気…、鬼だから頑丈だもん」

にへらと頑張って笑顔を作ったひかげに、おれは頭をくしゃくしゃと撫で回しておいた。

角もついでに触る。

「う、わ、暸ちゃん…」

「こんなちっちゃい丸っこい角じゃ、ケガもさせらんないっての」

実際、ひかげの角は大人の鬼に比べて、カドがない。

いくら触っても大丈夫なくらいつるつるしている。

「ひかげちゃんの角は、可愛いもんね」

由衣もくすくす笑いながら、ひかげの角を撫でた。

ひかげはくすぐったそうに、もじもじした。

「そんなに気になるなら、今度角カバーでも編んでやるよ」

「いいね。リボンとか巻いたら可愛いよね、きっと」

ひかげは今度こそ恥ずかしそうにして、おれの後ろに隠れた。

「ふふふ、やっといつものひかげちゃんだ」

その言葉には同意だけど、もう少しおれがいなくてもどうにかなってほしいぞ。

まあ、泣いてないみたいだし、いっか。


「暸ってさ、ひかげをダシにして女子と仲良くしてるの、キモいよな」

はあ〜!?


放課後、下駄箱まで来た時、クラスの男子のそんな声が聞こえた。

「今日も由衣ちゃんに近づいてさ」

「ははは、健太郎が由衣のこと好きなだけじゃん!」

ああ、そういう感じ?

てか、ひかげに何かあるとおれのことを呼ぶのは、お前らじゃん。

「ひかげも、鬼のくせに泣き虫でウザいしさ」

「それはわかる」

「暸のナイト気取りもウザい」

さすがに出ていってやろうと思った時、震える声が聞こえた。

「りょ、暸ちゃんの悪口、言わんといて…!」

見ると、ひかげが真っ赤な顔して、そいつらの前に立ちはだかっていた。

「何してんだ、あいつ」

違う理由で出ていきそうになった時、ひかげの精一杯の声が飛んできた。

「暸ちゃんは、私のこと馬鹿にしたりしないの…!鬼でも、なにでも、絶対馬鹿にしたりしないっ。そんな風に、悪口も言わないっ…!」

ひかげは、そいつらのことを無理に睨みつけていた。

「う、うるさいなっ」

「暸にひっついてないと何にもできないくせに、偉そうに言うなよ!」

「暸ちゃんを悪く言わないでっ」

ひかげの叫びに、おれはすっかり肩の力が抜けた。

ああいうの苦手なくせにな。

「い、行こうぜっ」

「ああ」

ひかげにぶつかるように、あいつらは走っていった。

…明日、ぶん殴っとくか。

一人で突っ立っているひかげのところに、おれは足を運んだ。

「なーにしてんだ、ひかげ」

「…暸ちゃん」

ひかげの片目からポロッと涙が零れた。

あーあ、まったく。

「おれが言われっぱなしでいると思ったのか?」

「暸ちゃん、殴っちゃダメだよ…?」

「でもさ」

「私がイヤだったの。暸ちゃんは悪くないもん…」

ポロポロ泣いているひかげに、おれはそっと肩を叩いた。

「…帰ろうぜ。つか、そのリボンどうしたんだ?」

「由衣ちゃんが巻いてくれた」

「いいじゃん」

「暸ちゃん。昔みたいに手ぇ繋いで帰ろう…?」

「小5にもなって…?」

おれはイヤそうな声を出しながらも、手を差し伸べた。

ひかげが嬉しそうに、ぎゅっと握ってくる。

「ふへへ、暸ちゃんありがとう」

こうすると昔から泣き止むから、今日ぐらいはいいか。



お読みくださりありがとうございました!毎日投稿36日目。

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