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それ逝け勇者様

『神父さんの苦悩〜死に戻り常連客〜』

作者: 黒の巣
掲載日:2025/11/06


一日目


朝。

今日も鐘の音とともに勇者がド派手に登場した。

いや、天井から。


「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けな──」


「おはようございます☆ ただいま戻りましたー!」


ただいまって言うな。

ここ教会であって自宅じゃないからな。


「神父さん、またゴブリンにやられちゃいました☆」

「そうですか……またですか……」


十回目だ。

復活の呪文を唱えるより、ため息の方が早く出る。



二日目


勇者、また死んだ。


「おお、勇──」

「コンニチハ☆」


あ、もうセリフ途中で被せてくるのね。

さすが常連。要領を心得てやがる。


「神父さん、このセリフ飽きません?」

「言わなきゃ給料出ないんですよ」


言ったら勇者、なぜか感動した。

「うわー社会ってつらいんですね☆」

お前が原因だよ。



五日目


今日の勇者は全身ボロボロ。

「ちょっとドラゴンに話しかけたら噛まれました☆」

なぜ話しかけた。

「友達になれるかと思って☆」


ならなかっただろうな。


復活の魔法をかけた瞬間、勇者が言った。

「ねえ神父さん、死ぬたびに若返ってません?」

「ストレスで逆に老けてます」



十日目


勇者が「教会の定義ってなんですか?」と聞いてきた。

説明した。

「神様に祝福された場所です」


「じゃあこのベンチも祝福してもらえますか?」

「できますけど……」

「やった! これでベンチで死ねる☆」


やめろ。

ベンチで死ぬ宣言するな。

近所の人が通報するわ。



十五日目


勇者が自作の“ミニ神像”を持ってきた。

「これ置いとけばどこでも復活できますよね☆」

「そんなに増やすと管理が大変なんですよ」


「えっ、神父さんが全部ログ取ってたんですか!?」

「はい、死亡記録簿つけてます」

「わぁ、パワーワード☆」


もう教会の棚が勇者の死亡履歴でパンパン。

“本日の死因ランキング”作った方が早い気がする。



二十日目


勇者が死ぬたびに鐘を鳴らすシステムをやめたい。

もう一日中「ゴーンゴーンゴーン」。

もはや町の人が「また勇者か……」って言いながら耳栓してる。


勇者が言った。

「なんか俺、人気者みたいですね☆」

いや違う、それ迷惑者だ。



三十日目


勇者が教会を貸してほしいと言ってきた。

「お祭りをしたいんです☆」

「え、何の?」

「“死に戻り感謝祭”です☆」


やめろ。縁起でもない。

パンフレット作ってた。「生き返ってナンボ!」って書いてある。

神様泣いてるぞ。



四十五日目


勇者が言った。

「神父さんも一回死んでみます?☆」

「嫌ですよ」

「でも復活できますよ?」

「嫌ですよ」

「人生、体験が大事ですよ☆」

「お前、人生リセットしすぎなんだよ!」


思わず叫んだ。

信者に見られた。

説教中に怒鳴る神父、信頼ゼロ。

つらい。



六十日目


勇者が復活しながら歌い始めた。

「おおー勇者よー♪ 死んでもーまた生きるー☆」


やめろ賛美歌風にするな。

合唱団が真似し始めた。

流行るなそんな歌。



八十日目


勇者が「死に戻り記念グッズ」を販売開始。

「☆神父さんのありがたいサイン入り☆」

サイン勝手に使うな!!


町の子どもが買ってた。

「このお守り持ってると勇者みたいに生き返れるんだって!」

……まじで誤解だからな。死ぬなよ?



九十九日目


朝。

教会の扉がゆっくり開いた。

また勇者か……と思ったら、静かだった。


「おはようございます☆ 99回目です☆」


記念日いらない。

花束持ってる。

「いつも生き返らせてくれてありがとう☆」


あれ、ちょっといい奴……? と思った瞬間。


「これ、花の中にミニ神像入ってます☆」


あー。

やっぱりそう来たか。

どうして最後まで落ち着いて終われないんだ。


神父は今日もため息をつく。

教会の鐘が鳴る。

勇者が笑う。


世界は、相変わらずうるさい

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