『神父さんの苦悩〜死に戻り常連客〜』
一日目
朝。
今日も鐘の音とともに勇者がド派手に登場した。
いや、天井から。
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けな──」
「おはようございます☆ ただいま戻りましたー!」
ただいまって言うな。
ここ教会であって自宅じゃないからな。
「神父さん、またゴブリンにやられちゃいました☆」
「そうですか……またですか……」
十回目だ。
復活の呪文を唱えるより、ため息の方が早く出る。
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二日目
勇者、また死んだ。
「おお、勇──」
「コンニチハ☆」
あ、もうセリフ途中で被せてくるのね。
さすが常連。要領を心得てやがる。
「神父さん、このセリフ飽きません?」
「言わなきゃ給料出ないんですよ」
言ったら勇者、なぜか感動した。
「うわー社会ってつらいんですね☆」
お前が原因だよ。
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五日目
今日の勇者は全身ボロボロ。
「ちょっとドラゴンに話しかけたら噛まれました☆」
なぜ話しかけた。
「友達になれるかと思って☆」
ならなかっただろうな。
復活の魔法をかけた瞬間、勇者が言った。
「ねえ神父さん、死ぬたびに若返ってません?」
「ストレスで逆に老けてます」
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十日目
勇者が「教会の定義ってなんですか?」と聞いてきた。
説明した。
「神様に祝福された場所です」
「じゃあこのベンチも祝福してもらえますか?」
「できますけど……」
「やった! これでベンチで死ねる☆」
やめろ。
ベンチで死ぬ宣言するな。
近所の人が通報するわ。
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十五日目
勇者が自作の“ミニ神像”を持ってきた。
「これ置いとけばどこでも復活できますよね☆」
「そんなに増やすと管理が大変なんですよ」
「えっ、神父さんが全部ログ取ってたんですか!?」
「はい、死亡記録簿つけてます」
「わぁ、パワーワード☆」
もう教会の棚が勇者の死亡履歴でパンパン。
“本日の死因ランキング”作った方が早い気がする。
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二十日目
勇者が死ぬたびに鐘を鳴らすシステムをやめたい。
もう一日中「ゴーンゴーンゴーン」。
もはや町の人が「また勇者か……」って言いながら耳栓してる。
勇者が言った。
「なんか俺、人気者みたいですね☆」
いや違う、それ迷惑者だ。
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三十日目
勇者が教会を貸してほしいと言ってきた。
「お祭りをしたいんです☆」
「え、何の?」
「“死に戻り感謝祭”です☆」
やめろ。縁起でもない。
パンフレット作ってた。「生き返ってナンボ!」って書いてある。
神様泣いてるぞ。
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四十五日目
勇者が言った。
「神父さんも一回死んでみます?☆」
「嫌ですよ」
「でも復活できますよ?」
「嫌ですよ」
「人生、体験が大事ですよ☆」
「お前、人生リセットしすぎなんだよ!」
思わず叫んだ。
信者に見られた。
説教中に怒鳴る神父、信頼ゼロ。
つらい。
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六十日目
勇者が復活しながら歌い始めた。
「おおー勇者よー♪ 死んでもーまた生きるー☆」
やめろ賛美歌風にするな。
合唱団が真似し始めた。
流行るなそんな歌。
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八十日目
勇者が「死に戻り記念グッズ」を販売開始。
「☆神父さんのありがたいサイン入り☆」
サイン勝手に使うな!!
町の子どもが買ってた。
「このお守り持ってると勇者みたいに生き返れるんだって!」
……まじで誤解だからな。死ぬなよ?
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九十九日目
朝。
教会の扉がゆっくり開いた。
また勇者か……と思ったら、静かだった。
「おはようございます☆ 99回目です☆」
記念日いらない。
花束持ってる。
「いつも生き返らせてくれてありがとう☆」
あれ、ちょっといい奴……? と思った瞬間。
「これ、花の中にミニ神像入ってます☆」
あー。
やっぱりそう来たか。
どうして最後まで落ち着いて終われないんだ。
神父は今日もため息をつく。
教会の鐘が鳴る。
勇者が笑う。
世界は、相変わらずうるさい




