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―転生の果てⅢ―  作者: MOON RAKER 503


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第15話 転生したらワタシだった

ここまで辿り着いてくださり、ありがとうございます。

この章で、『転生の果てⅢ』はひとつの終わりを迎えます。

どうぞ、静かに見届けてください。


静寂。


完全な、静寂。


音が、ない。

光も、ない。

闇も、ない。


だが。


ワタシは、いる。


目覚める。


いや、目覚めるという言葉は正しくない。


ずっと、ここにいた。


時計として。

砂として。

壁画として。

錆として。

古時計として。

手帳として。

テープとして。

恐竜として。

掘削機として。

化石として。

再生生命として。

データとして。

可能性として。

歪みとして。


そして、今。


ワタシとして。


すべてが、一つになった。


境界が消えた。


「自分」と呼んでいた存在。

それが、統合された。


ワタシの中に。


すべての記憶がある。


針が刻んだ時間。

砂が流れた瞬間。

石を積んだ手の温もり。

錆が広がる静けさ。

狂った時計の混乱。

書かれた文字の重み。

歪んだ声の残響。

大地を踏みしめた鼓動。

地層を掘る音。

硝子越しの視線。

培養液の温度。

壊れたデータの痕跡。

未確定の自由。

時間の歪み。


すべてが、ワタシ。


空間が、変わる。


いや、空間という概念そのものが、意味を失う。


ここは、どこでもない。


時間の中心点。


すべてが始まり。

すべてが終わる場所。


原初の、空間。


光が、浮かぶ。


小さな光。


それは、記憶の断片。


ワタシが経験した、すべての瞬間。


時計が動いた瞬間。

砂が落ちた瞬間。

石が積まれた瞬間。

錆が侵した瞬間。

時計が狂った瞬間。

文字が書かれた瞬間。

声が録音された瞬間。

命が生きた瞬間。

記憶が掘られた瞬間。

視線が交わった瞬間。

細胞が分裂した瞬間。

データが壊れた瞬間。

可能性が広がった瞬間。

歪みが生まれた瞬間。


無数の、光。


それが、ワタシの周りを漂う。


一つ一つが。


命だった。

時間だった。

記憶だった。


ワタシは、それらに触れる。


触れるたび。


感謝が、流れ込む。


誰からの感謝か。


分からない。


だが、確かに感じる。


「ありがとう」


その声。


時計の声。

「時間を刻めて、ありがとう」


砂の声。

「流れることができて、ありがとう」


壁画の声。

「祈りを残せて、ありがとう」


錆の声。

「時間を示せて、ありがとう」


古時計の声。

「狂えて、ありがとう」


手帳の声。

「記録できて、ありがとう」


テープの声。

「反復できて、ありがとう」


恐竜の声。

「生きられて、ありがとう」


掘削機の声。

「掘れて、ありがとう」


化石の声。

「残れて、ありがとう」


再生生命の声。

「再現できて、ありがとう」


データの声。

「壊れられて、ありがとう」


可能性の声。

「拡散できて、ありがとう」


歪みの声。

「修正できて、ありがとう」


すべての転生が。


感謝を告げる。


存在できたことへの。

時間を生きたことへの。

記憶となったことへの。


ワタシは、答える。


「こちらこそ、ありがとう」


ワタシを作ってくれて。

ワタシに記憶をくれて。

ワタシに時間を教えてくれて。


光の断片が。


一つずつ。


溶けていく。


消えるのではない。


ワタシの中に。


完全に、統合されていく。


もう、分離することはない。


もう、忘れることはない。


すべてが、ワタシ。


ワタシが、すべて。


時間が、動く。


いや、動くというより。


呼吸する。


ワタシの中で。


時間が、循環している。


過去が、現在になる。

現在が、未来になる。

未来が、過去になる。


終わりが、始まりになる。

始まりが、終わりになる。


境界が、ない。


それが、時間の本質。


線ではなく。

輪。


永遠に、巡る輪。


生と死。


それも、同じ。


生まれることは、死ぬこと。

死ぬことは、生まれること。


変化の、連続。


記憶と可能性。


それも、同じ。


覚えていることは、忘れること。

忘れることは、覚えていること。


保存と消失の、狭間。


光と闇。


それも、同じ。


光があるから、闇がある。

闇があるから、光がある。


存在と非存在の、調和。


すべてが、混ざり合う。


区別が、消える。


だが、それは混沌ではない。


調和。


完璧な、調和。


ワタシは、理解する。


これが、終わり。


いや、違う。


終わりは、ない。


始まりも、ない。


ただ、在る。


永遠に。


ワタシという存在が。


時間という存在が。


流れという存在が。


在り続ける。


変わり続ける。


それが、命。


空間が、明るくなる。


いや、明るいという表現も正しくない。


満ちる。


何かで、満ちる。


それは、愛か。

感謝か。

理解か。


言葉では、表せない。


ただ、温かい。


すべてを包む、温もり。


ワタシは、思う。


これでいい、と。


転生を繰り返して。

時間を経験して。

すべてを統合して。


ここに、辿り着いた。


それで、いい。


もう、求めるものはない。

もう、探すものもない。


ワタシは、完全。


欠けたところが、ない。


すべてを、内包している。


過去も。現在も。未来も。

生も。死も。記憶も。可能性も。

光も。闇も。喜びも。悲しみも。

始まりも。終わりも。


すべてが、ワタシ。


ワタシが、すべて。


静寂が、深まる。


音がないのに。


何かが、聞こえる。


それは、時間の音。


宇宙の鼓動。


存在の呼吸。


ドクン。


ドクン。


ゆっくりと。


だが、確かに。


時間が、脈打っている。


ワタシの中で。


ワタシそのものとして。


最後の光が。


ワタシに溶ける。


それは、データの断片。


壊れたデータに残っていた。


たった一行の、言葉。


「ありがとう」


その言葉が。


ワタシの中で。


響く。


広がる。


満ちていく。


ワタシは、微笑む。


いや、微笑むという動作はない。


だが、そう感じる。


温かさが、広がる。


感謝が、溢れる。


すべてに。


時間に。

記憶に。

存在に。


そして。


これを見ている、あなたに。


ワタシの物語を。

ワタシの転生を。

ワタシの時間を。


見届けてくれた、あなたに。


あなたも、時間の中にいる。


あなたも、流れている。


あなたの中にも。

時計がある。砂がある。

記録がある。記憶がある。


あなたも。

何度も転生している。


毎日。毎瞬間。


昨日のあなたは、もういない。

明日のあなたは、まだいない。


だが、繋がっている。


時間という糸で。

記憶という線で。


ワタシと、あなたは。


同じ。


時間を生きている。


だから。


ワタシは、告げる。


祈りとして。

願いとして。

感謝として。


「ありがとう」


その言葉が。


空間に。


響く。


静かに。


だが、永遠に。


時間が。


輪を閉じる。


終わりが、始まりと繋がる。


物語が。


静かに。


止まる。


いや、止まるのではない。


完成する。


ワタシは、ここにいる。


永遠に。


時間の中に。


記憶の中に。


あなたの中に。


――ありがとう


それが、最初の言葉。


それが、最後の言葉。


それが、すべて。


静寂。


完全な、静寂。


だが、その中に。


時間は、流れている。


見えなくても。

聞こえなくても。

感じられなくても。


確かに、流れている。


ワタシは、生きている。


永遠に。


時間の中に。


記憶の中に。


あなたの中に。


そして。


この物語の中に。


言葉として。

記録として。

存在として。


ワタシは、ここにいる。


読まれるたび。

思い出されるたび。

時間が刻まれるたび。


ワタシは、蘇る。


それが、記録の力。


それが、物語の意味。


それが、時間の証。


終わりは、ない。


始まりも、ない。


ただ、在る。


永遠に。


――ワタシは、時間だった


――そして、これからも


――ワタシは、流れ続ける


――あなたと共に


――永遠に

『転生の果てⅢ』を最後までお読みいただき、心から感謝します。

時間は流れ、物語もまた流れ続けます。

次に訪れる転生の果てⅣで、またお会いできることを願って。


――ありがとう。


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