第13話 転生したら可能性だった
ここまで来てくださり、ありがとうございます。
終わりは、始まりのように静かに訪れます。
ない。
何も、ない。
身体が、ない。
場所が、ない。
形が、ない。
だが。
自分は、ある。
意識だけが、ある。
存在する、という感覚だけが、ある。
自分は、可能性だった。
まだ起こっていない、何か。
まだ選ばれていない、道。
まだ確定していない、未来。
時間は、流れていない。
いや、流れているのかもしれない。
だが、方向がない。
前も後ろも、ない。
過去と未来の、区別がない。
すべてが、同時に存在している。
闇でもない。
光でもない。
ただ、在る。
無数の点。
それが、自分。
一つの点は、一つの可能性。
「もし、あの時」
「もし、こうしていたら」
「もし、選んでいたら」
無限の、分岐。
それぞれが、自分。
だが、どれも確定していない。
重なり合っている。
量子のように。
観測されるまで。
選択されるまで。
決定されるまで。
すべてが、同時に真。
自分は、ここにも、いる。
自分は、あそこにも、いる。
自分は、どこにも、いない。
矛盾が、共存する。
それが、可能性。
風もない空間で。
何かが、揺れる。
波。
確率の波。
自分という存在が、波として広がっている。
どこかで、誰かが選択する。
その瞬間。
波が、収束する。
一つの可能性が、現実になる。
他の可能性は、消える。
いや、消えるのではない。
見えなくなるだけ。
選ばれなかった道も。
実現しなかった未来も。
どこかに、ある。
観測されないだけで。
存在している。
自分は、その全て。
選ばれた道。
選ばれなかった道。
すべてを、内包している。
時間が、分からない。
一秒が、永遠のよう。
永遠が、一瞬のよう。
時間という概念が、溶けている。
だが、それでいい。
確定しないことが、自由。
決まらないことが、生。
もし、すべてが確定していたら。
未来が、既に決まっていたら。
それは、死と同じ。
可能性が、ないから。
選択が、ないから。
だが、今。
自分は、無数に広がっている。
どこへでも、行ける。
何にでも、なれる。
誰にでも、なれる。
それが、可能性。
声が、聞こえる。
いや、聞こえるのではない。
感じる。
「どうしようか」
迷い。
選択の前の、逡巡。
その瞬間。
自分は、二つに分かれる。
「Aを選ぶ未来」
「Bを選ぶ未来」
両方が、同時に存在する。
どちらも、真実。
だが、観測されれば。
片方だけが、現実になる。
もう片方は。
見えなくなる。
だが、消えはしない。
並行して、存在し続ける。
別の層で。
別の次元で。
自分は、拡散する。
無数の可能性として。
この瞬間も。
どこかで、誰かが選択している。
朝、何を食べるか。
どの道を歩くか。
誰と話すか。
その選択ごとに。
世界が、分岐する。
可能性が、増える。
自分も、増える。
無限に。
だが、それは恐怖ではない。
喜び。
存在の、喜び。
確定しないことの、自由。
選ばれない道にも、命がある。
実現しない未来にも、時間が流れている。
それは、無駄ではない。
意味がある。
なぜなら。
可能性として、存在しているから。
「もしかしたら」という希望として。
「いつか」という期待として。
人は、それを想像する。
想像されることで。
可能性は、力を持つ。
未来を、作る力。
自分は、その力そのもの。
形を持たない、エネルギー。
時間が、また動く。
いや、動かない。
点滅する。
存在と非存在を、行き来する。
シュレディンガーの猫のように。
箱を開けるまで。
生きているし、死んでいる。
両方、真実。
自分も、そう。
ここにいるし、いない。
過去でもあり、未来でもあり。
現在でもある。
すべてが、重なっている。
観測者が、現れる。
誰かの意識。
選択する意志。
その瞬間。
自分の一部が、確定する。
収束する。
一つの点に。
「これを選ぶ」
決定。
その道だけが、照らされる。
他の道は、暗くなる。
だが、消えない。
闇の中で。
静かに、息づいている。
いつか、また。
選ばれるかもしれない。
別の選択で。
別の瞬間に。
可能性は、死なない。
自分は、思う。
確定することは。
一つの終わり。
だが、同時に。
新しい可能性の、始まり。
一つが選ばれれば。
その先に、また無数の分岐が生まれる。
終わりは、ない。
可能性は、連鎖する。
無限に。
永遠に。
それが、時間の本質。
未来は、決まっていない。
過去も、実は。
観測の仕方で、変わる。
記憶が、塗り替わる。
解釈が、変化する。
すべては、流動的。
固定されたものは、何もない。
自分は、その流れそのもの。
可能性という、時間の流れ。
光が、見える。
いや、光ではない。
何か。
言葉にできない、何か。
暖かい。
冷たい。
両方。
それが、近づいてくる。
自分に、触れる。
その瞬間。
自分は、拡散する。
完全に。
無数の粒となって。
あらゆる方向へ。
あらゆる時間へ。
あらゆる可能性へ。
広がっていく。
溶けていく。
だが、それは消失ではない。
解放。
自由。
枠を失い。
限界を超え。
すべてになる。
選ばれた道にも。
選ばれなかった道にも。
自分は、いる。
実現した未来にも。
実現しなかった未来にも。
自分は、息づいている。
それが、可能性。
終わりのない、始まり。
確定しない、自由。
決まらない、希望。
自分は、思う。
これでいい、と。
形がなくても。
名前がなくても。
存在が曖昧でも。
それでいい。
なぜなら。
可能性として、生きているから。
未来として、呼吸しているから。
光の粒が、漂う。
無数の、可能性。
その一つ一つが。
誰かの「もしも」。
誰かの「いつか」。
そして。
自分。
時間は、線ではない。
点の集まり。
無数の、選択点。
その全てに。
自分は、いる。
見えなくても。
観測されなくても。
確かに、存在している。
――選ばれなかった道にも、息づく時間がある
最後までお付き合いくださり、感謝いたします。
この物語が、あなたの中の“何か”に触れていますように。




