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ノスタルジア〜白猫に惑う律動、紅薔薇に捧ぐ輪舞曲〜(新版)  作者: 藤咲紫亜


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第42話 援軍

 フローレでフィーネを彼女の騎士達に引き渡したバイエルは、馬を駆りクインテット通りを皇都ヴィオラへと急いでいた。


 皇都ヴィオラの大動脈であるクインテット通り。普段であれば、皇都の民への物資を運ぶ荷馬車で賑わっている。

 だが今は戦乱の気配に、商人達は怯えて物資を運べないようだ。


(戦が長引けば、皇都に住む者達の命に関わる)

 バイエルは、もう何日も物資の供給が止まっているであろうヴィオラの民達の生活を案じた。

(早く決着を着けなければ)


 皇都の方角から煙が上がっている。

 シルキーや屋敷の者達は、安全な場所へ避難できているだろうか。


 バイエルの後ろには、クインテット通りの脇の森に身を潜めていた帝国軍の部隊が続いていた。バイエルは彼らから、多くの大砲が皇都へ向かっているとの報告を受けた。


 彼ら騎馬隊は、反乱軍が皇都に攻めて来た時に挟撃ができるよう、バイエルが配置していた帝国軍の少数精鋭の騎士達だ。当初の予定通り、彼らと合流することができた。


(挟撃は、敵全体をヴィオラに十分引きつけてから)

 でなければ、バイエルの騎馬隊が孤立して敵本体から攻撃を受けてしまう恐れがある。


 いかに精鋭でも、大量の兵士には敵わない。

 こちらの犠牲を最小限に、敵には最大の損害を。


 バイエルが率いる部隊が皇都の大門に近づくと、先ほどの報告通り敵の大砲部隊が並んでいた。


「手前の部隊から攻撃!」

「御意!」

 バイエルの声に騎馬隊が応じる。


 帝国軍の伏兵の存在に気付いた敵兵達が、慌てたようにバイエル達に斬りかかる。

(動揺は誘えた)

 バイエルも応戦し、斬り伏せて前へと向かう。


 最後に自分の前に立ちはだかるのが誰であるのか、この時のバイエルには知る由も無かった。



   ☆☆☆



 少しの休憩を挟みながら、元老院の定例議会は進められていた。

 何度目かの休憩中、ソリストの隣の小机に白い花をつけた月桂樹が飾られた。


「先にも言った通り」

 ソリストの冷静な声が、元老院の議場に響き渡る。


「女帝・女系皇族については、慎重を期すべきだ。骨組みを作るための議論の時間はいとわない。だが、今すぐに認めることはできない」


 モロウ侯爵は苛立ったようにソリストをねめつけた。

「殿下、それは慎重ではございません。楽観的と言うのです。申し上げるのもはばかられますが、今上帝のご一家に万一の事が無いとも限らないのでございますぞ!」


 ソリストはモロウを観察するように眺め、口を開いた。


「———モロウ侯爵」


 断罪するようなソリストの厳しい声音に、モロウのしわだらけの顔がぴくりと震えた。

「アデルもフィーネも、もう『使えない』と考えたほうがいい。バイエルが何日も前にフローレに向かった」


 モロウの顔が引きつり、口が何か言葉を発しようとするかのように開いては閉じた。

 事態を把握していない貴族達が、何のことかとざわめいた。


 ソリストは急使が届けにきたバイエルの手紙を思いだした。


 バイエルの情報を合わせて考えると、アデルはロンド家の叔父の息子の可能性がある。

 となればアデルもまた、ソリストやバイエルと同じソルフェージュ家の男系男子。


 皇位継承順位は第五位で、ロンド家の叔父に次ぐ。

 アデルの血の正統性が認められた場合は、現行の皇位継承法で十分、皇帝にもなりうるのだ。


 モロウにとってアデルは、皇位継承法が原因でフィーネを女帝として立てることができなかった場合の切り札。


 だが、フィーネかアデルのどちらかを皇帝として据え、モロウが裏で皇帝を操るためには揃えなければいけない条件がいくつかある。


 ソリスト、バイエル、そして二人の父である今上皇帝、ロンド家の叔父、ソリストの息子のフーガ。

 少なくともこの五名をこの世から消すこと。

 フィーネを女帝に即位させるため、女帝を認めさせる法律を作ること。


「……ところで、この場を借りて、モロウ侯爵に伝えたいことがある」

 モロウの垂れ下がった白い眉が、怒りとも絶望ともとれるような奇妙な形になる。


「ロンド家夫人、並びに第二皇子妃シルキーに毒を盛った罪、我が妹フィーネを拐かし、幽閉した罪、皇族達に刃を向けた罪、私腹を肥やすために皇位継承に不当な介入を図った罪で、追って沙汰する。独房で待て」


 モロウは唾を飛ばし、身をのけぞらせて笑った。

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