2-21 田に死
「秀こと、解堂蒐です」
「コロニスです」
「ふたり合わせてコロシュです」
「殺しゅ?」
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「グランドタニシは一般家庭に置くには大きすぎるのでアップライトタニシを置いてる場合が多いです。グランドタニシでちゃんと練習したほうが」
「カタカナ三文字ならなんでもええんかい」
ツッコむエテア。
ボケ観測手とツッコミ狙撃手である。
「危険なモンスターになる前にぃきちんと駆除しておくのは大事ですぅ」
リヌルもちまちまと幼体タニシを瓶に放りこんでいる。
リヌルは白魔法使いである。
白魔法とは呪いや病などを払い、毒を浄化する魔法である。さらに傷を治療したり、戦闘においてパーティの戦闘力を増大させたり敵の戦力を減退させる魔法も扱う。アンデッドやネクロマンサーへの対抗となる職能といえる。
いくらかラムとかぶっている魔法がある。
白魔法使いリヌルが成体グランドタニシを締める様子はこうだ。
リヌルの魔力は歯を媒介して魔法として口から発射する。
つまり
「ぺっ」
つばを吐く。
グランドタニシに唾液がついた部分が白く変色していく。
この唾液はリヌルの魔法であり、毒浄化魔法「つばつけときゃ治るわ」である。
右上第二小臼歯担当の魔法である。犬歯からふたつ奥の歯ね。
これによってグランドタニシは体液の構成の変化に耐えられず死ぬ。
「むしろ我々はグランドジャンボタニシが現れてからが仕事なのでは?」
ノークがまた質問をする。
「グランドマスタータニシや」
ツッコむエテア。ノークはボケで言ったのか憶えられなかったのかはわからないがエテアはツッコむ。
「とりあえず大きなグランドタニシ成体を捕獲し処理するのが主な仕事なのです。グランドタニシ成体が生きたまま何匹か集まって個体同士接触するとスペシャルローリングタニシに進化してしまう恐れもあるのです」
「スペシャルローリングタニシてなんやねん」
「スペシャルローリングタニシは秒速5回転する体当たり攻撃ができます。ローリングタニシのパワーアップバージョンなのです。ローリングタニシは秒速3回転で体当たりします」
「先にローリングタニシの説明からせいや」
「セイヤじゃなくてリン……」
「それはいいから」
「とにかくグランドタニシは一体ずつ確実に処理することが大切です。まとめていっぺんに処理は事故の元です。グランドタニシをいっぺんに調理したいなら塩水に付けて魔力抜きをしてからです」
塩の清めの効果はモンスターの魔力を抜くためにお馴染みの手法。そのため海に棲む魔力持ちモンスターは種類が少ない。
だから塩水の入った瓶に入れているのである。
そう。食べる前提なのである。
エテアの魔法もリヌルの魔法も食べる下ごしらえとして放たれているのである。
急に泥の中から黒いものが飛んできた。
「うおっ」
ノークが咄嗟にトングを剣のように振るい、それを空中で叩き潰した。
ローリングタニシだった。
迎撃は見事だったが刃がないトングで潰されたタニシの体液をノークはほんのちょっと浴びてしまった。
「ぺっ」
リヌルがノークにつばを吐きかける。
「うっ」
ノークは解毒だとわかってるので避けないが、つばを吐きかけられることに抵抗感があって声が出る。
客観的にはタニシ取りに失敗した男をなじっている女であった。
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「タニシ取りですね。対魔王パーティとしての戦力余剰が激しいですね」
「けどまあこまめにタニシ駆除しておかないと魔王が力をつけるという」
「とっとと魔王顕現したところを退治するとかじゃないんですね」
「一応、魔王復活は阻止する方向で」
「って本文で説明したほうがいいところですよ」
「そうやねぇ。あと問題は、焼き肉テーブル囲って設定詰めてたときのことから変わりないことは説明はぶいていいんかなと」
「まあざっくりは説明したほうがいいんじゃないですか。リヌルの歯の魔法の説明はもうちょっとあったほうがいいかなとか」
「あと、エッセイは書きやすい気がするからエッセイの形とる小説とかどうかなとか思って」
「それを第三部でやるんですか?」
「いや、第三部すること決まってるし。決まってるから第二部終わろうと思ってるけどなんか続いていしまう」
「コントロール効かないんですね」
「そう。俺が書いてるんじゃなくて何者かが俺に書かせてるんじゃないかみたいな感じがして。いや昔書いてたときも思ってたけど、俺が考えたことだけで小説なんか完成するわけないやんと。なんか自分じゃない何かの力があるって感覚が」
「それに全部任せたらどうですか」
「そんな都合良くいかんのよね。昔試したけど」
「試したんや……」




