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2-13 男ひとりのパーティに

【前回までの『女神さま』(仮題)のあらすじ】

 名もなき胡乱な女神。その地位を確保するために2年以内に担当世界で伝説を打ち立てないといけなかった。

 女神はラム・ウ()という俗名を名乗り自らパーティを組んで冒険をしようということになった。


 そのメンバー。

 伝説打ち立てを一旦丸投げされかけた青年エテア・サキユ。

 白魔法使いリヌル・ヲワカ。

 戦士ノーク・ヤマケ。


 彼らは冒険に出る前の打ち合わせを続けていた。

 主人公はノークと決まり、彼のキャラ付けやスキル設定などはおおむね決まった。



「お。あらすじの文面が一新されましたね」

 ノートPCのモニタを見てコロニス。

「あー。けどこのあらすじで語ってない部分が後々影響するかもしれない」

 言ってから俺は咳払いをする。喉がおかしい。体もだるい。

「まああらすじだけで全部わかるんなら長く書く意味ないですもんね」

「小説の面白さはあらすじだけではわからない。まああらすじだけで『面白そう』と思わせる能力も必要なんやけどね。俺にはない」

 俺は冷蔵庫から牛乳を出して飲む。少しだけ喉の違和感は治まるがまだ落ち着かない。

「風邪ひきましたか?」

「そうみたい。だから今回の更新はうまくいかないかもしれない」

「そういうライブ感があるのもこの小説のシステムゆえですね」

「今回はいつもより短くなるかもしれない。できたら3000字くらいにしたいんやけどね」

「たまに短くてもいいんじゃないですか」

「むしろ本編より、ここの俺とコロニスが話してる場面を増やすとか」

「『コロニスといっしょ』ってタイトルなんですからその場面が多くてもぜんぜん問題ないですね」

「うん。コロニスのおかげでとにかく書くことは続けられてる」コロニスが否定せずに付き合ってくれてるおかげで。「コロニスって人間の風邪移るんか?」

「さあ、仕様としては移るんやないですかね。人間の食べ物ほぼ食べられることからしたら」

「もう手遅れもしれんけどマスクつけよう」

「まあここまで近くにいたら手遅れかもしれませんねぇ」

 俺とコロニスはこの小説談義のときは座卓で隣り合わせにいる。まあまあ顔は近いかもしれない。

「移ったらごめんな。あー喉気持ち悪い。風邪薬とのど飴買ってくるわ」

「はい。いってらっしゃい」



     ▼



「ノークの設定はひとまずこのへんにしといて」

 エテアが会議進行する。次の話に移ろうとしているが。

「はいはい」

 リヌルが手を挙げる。

「はいリヌルさん」

 エテアが指名する。

 この挙手から指命の流れは通常はカットしている。


「最近のパーティってぇ男は主人公ひとりだけってパターンが王道ですよねぇ」

「あぁ。ほな、わて女やりますわ。それはそれでおいしいかもしれまへんな」

 エテアがあっさり性転換を申し出た。


「いいの?」

 ラムも身を乗り出して訊いてくる。

「ええんですよ。あてが主人公になら(なら)いで(なくて)よかったらそれで」

 エテアの姿が話してる間に女性化してく。一人称も『あて』に変わった。

 女のエテアは二十代半ばくらいの長身だった。悪の組織の女幹部が似合う系の美女である。


「これでノークがパーティひとりだけの男で主人公というベタ構成になりましたね。ベタは大歓迎です」

とラム。


「ほな雑に仕切り直ししまひょ。今度はリヌルのほうのキャラ付けとか」

「一人称がぁ決まってないんですよぁ」

「リヌルもそこからか」

とノーク。

「『うち』はゆずりません」

 ラムは先手を取ったように言うが。

「いらないぃ」

 あっさりリヌルに辞退される。

「『うち』が欲しくないんですか」

「私のキャラに合ってませぇん。今『私』って言ってるのはぁ便宜上ですぅ」

「まあ、今んところ『私』を他につこてる人もおらんので暫定それでええんやないですか」

 エテアがそう言うと、空間モニタに表が現れる。


ノーク-俺

エテア-あて

リヌル-私

ラム-うち


「じゃあ一旦私は私でいいですぅ」

 リヌルも納得した。

「ほな。リヌルのユニークスキルをどうするか相談しましょか」

 エテアが仕切る。女性化したことになんとも思ってない様子。

「私はぁ歯にそれぞれぇ固有の魔法が封じられてるんですぅ」

「ほう」

「歯は今ぁ全部で26本なんだけどぉ。増えるかもしれないぃ。そのうちぃ今は7本にひとつずつぅ。7つ魔法使えるよぉ。例えばほらぁ」

 リヌルの口からぬるっとクマのぬいぐるみが出てきた。


「おお」

 ノークから驚きの声が上がる。

 リヌルも目を見開いている。

「湿ってませんね」

 ラムは冷静なことを言う。ボケのつもりかもしれない。

 確かにぬいぐるみはどこも唾液で濡れてはいない。


「この左上第一小臼歯はぁインベントリになってますぅ」

 『インベントリ』。

 『アイテムボックス』『ストレージ』『収納』など呼ばれることもある。

 収納空間の広さはその術者による。リヌルの左上第一小臼歯インベントリの容積は不明だが、少女の口から彼女の顔より大きいクマのぬいぐるみが出てきたのである。


「ちなみに急ぎのときはキャラ立てしてられなくて普通にしゃべるよ」

 急に早口で特徴のない話し方をするリヌル。

「ちゅうことは、あくまでキャラ立てのためにその話し方してる設定という解釈でよろしいか」

「そうですぅ。頭悪く見られてもぉキャラ立ってないよりはいいんですよぉ」


「歯から魔法を発するとか白魔法なのか?」

 ノークの素朴な疑問。


 ラムとエテアのコンビに不足するであろう能力として白魔法使いが求められた。

 その要望からのリヌル登場である。インベントリは便利かつ強力な能力だが白魔法使いの本領ではない。


「私のぉ魔法はぁ白いからぁ白魔法なんですぅ」

 言ってからニッと歯を見せて笑う。確かに歯は白い。完全に純白じゃない自然な白さだった。

「挿絵とかアニメ化したら表現しにくい色なのです」

 ラムが絵がついたときのことを言うが、

「これに挿絵が付くことあらへんやろ」

 エテアが否定する。


「ちゃんと解呪とかぁ解毒とかぁ、バフ、デバフとかもできますよぉ」

「けど全部で7つなんだろ?」

 またノークが問う。

「ほらぁ『七つ道具』とか言ってもぉ本当に7つとは限らないでしょぉ?」

「そうか」

「経験値上げていけばぁ使える魔法も増えるしぃ」


「リヌルに関しては割とキャラができてたんですな」

 エテアが一旦リヌルのスキルについての話し合いをそこで終わりとする。

「これでだいたい段取りできたので、受肉して冒険に出発(でっぱつ)しましょう」

 ラムが立ち上がる。

「できとりますか?」

 エテアがラムを見上げる。

 立っているのはラムだけである。


「えー? パーティ四人全員のキャラとスキルだいたいできたじゃないですか。もうあとはギルドに登録して魔王打倒の旅開始ですよ」

「ギルドに登録したあとどこへ旅立つんだすか?」

「最初の敵のいるところです」

「どこですか?」

「えーと。ほらそのへんはもうアドリブでいいのですよ」

「アドリブでいけると思う人」

 エテアがあとのふたりに賛成かどうかの挙手をうながす。

 ノークは手を上げた。

「俺だけ?」

「問題ないかもしれないけどぉ、もうちょっと話合ったほうがぁいいと思いますぅ」

 リヌルが首をかしげてみせる。



     ▲



「えーと。エテアは最初、男の主人公前提で登場したんですよね」

とコロニス。

 俺は口の中でのど飴をころころさせながら、

「うん。主人公以外女性にしようと思ってたのも当初の予定通りだったんで、結果としてエテアが性転換するという」

「エテアはそんなに主人公したくないんですか」

「主人公ってあんまりいいことないよ。俺が書く小説の主人公ってすぐやる気なくすから」

「そういえばこれまでもそんなこと言ってましたね」

「そのへん実例のいい作品があるんやけども、それを紹介し出すと『長編制作紆余曲折篇』が紆余曲折どころか一旦休止するはめになるから、第三部以降で」

「あ、はい。じゃあそういうことでいいです」


 来週までに風邪が治ってるとは思う。これは次回への伏線でもなんでもなく、本当に風邪をひいただけなのである。風邪ひいて体調が悪くて今回読みにくいことがあるかもしれない、というだけ。

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