邪神ちゃんのこれから
ねねやリリに邪神ちゃん、リンネと名付けたがまだ本当の事を言ってない、リリやねねにとっては敵にあたるのかな?リリとねねの両親は邪神討伐戦の英雄だって話を聞いた事がある。
俺はこのまま隠している事が、裏切りの様な気がして、この子が邪神の生まれ変わりである事を伝える事にした。
「お兄ちゃん話ってなに?」
「りんねの事についてなんだけど・・・・・」
「りんねが神様の子って事は知ってるよ」
「そうじゃなくて」
「邪神の生まれ変わりの事ですか?」
リリから邪神の生まれ変わりと聞いてぎょっとする。
「知ってたのか・・・・」
「私とねねにも女神様からの神託があったんです。どうしてりんねが邪神になったのかとかも説明されました」
「二人にとっては敵の様な存在じゃないかな?それでも一緒に生活できる?」
「私やねねにとっても敵の様な存在ですけど、この子は世界にとっても憎むべき神の生まれ変わりです。私達は女神様に色々説明されたから、納得・・・・無理やりわかったふりをしてるのかもしれないけど、納得はしています。でも他の人にとっては憎むべき神の生まれ変わりである事は変わらないし、許せないって人も出て来ると思います」
「かわいそうだよ。ずっと独りぼっちで人間の憎しみや痛み、悲しみや嫉妬に怒り、負の感情を一身に受けて、受け止めて、受け止めきれなくなって傷ついて壊れて、その果てに暴走して、誰からも神様からすらも望まれずに生まれてしまった神の子、ってそんな凄い子には見えないけど・・・・・お父さんとお母さんが戦った憎しみの塊みたいな神様とは、やっぱり別の子だよ。私達以外にもこの子に気が付く人が出てくるかもしれない。今度こそ大切に守ってあげなきゃ、私達だけでもこの子を愛してあげなきゃ、痛みを受け止める為だけに生まれて来た、なんてあんまりだよ」
リリもねねもまだ幼い、それなのに両親の敵まで、こんな小さな子達に背負わせるのかと思うと、何も言えなくなる。
事故で起こった事で、大切な人を失ったら?事故であり故意ではないからと、直接的な殺人ではないからと、相手を許せるだろうか?事故であっても、殺意がなかろうとも、その原因を作った存在を恨むし、憎むと僕は思った。
どうすれば敵としって、自分の妹の様にあつかえる?この子達にどれだけ背負わせれば気が済むんだ?この子はりんねはやはりどこか遠くに、僕たちも知らない国かどこかで孤児として生きた方がいいのかもしれない。
そう思いながらも、僕にしがみつくりんねの事を振り払えないでいた。
どうしていつも、子供達ばかりが悲しい思いをしなければいけないのか?変わってあげる事はできないのか?そう考えていると、りんねは負の感情を吸い取る能力が今も残っている事を知る、そして以前は浄化できず貯めこむしかできなかったが、今回はちゃんと力として受け入れ世界に浄化し循環させることができるので、また前の様に暴走する事はないと女神様は言う。
その上でやはり、僕に預けたいと、りんねが本当はほしかった感情、人々の笑顔も優しさも、僕と言う親代わりの温もりも、ここ八百万には揃っているからと。
そう言われて、やはりどうしてもこの子を見捨てる事が出来ない。
リリとねねの頭をただ抱きしめると、自然と涙が流れた。
「お兄ちゃん、おおげさだよ~。でもりんねだけじゃなくねねも構ってもらえると嬉しいかも」
「わ!わたしも!撫でてくれたり、こうしてぎゅっとしてくれるの好きです。ちゃんと私達は家族なんだなって」
そう聞いて、また静かに涙が流れた。
僕が泣いていると、子龍のアリスも猫のキャス子も心配そうに僕にまとわりついてくる。
そのじゃれつき方の凄まじさに、思わず笑ってしまった。
「じゃあ、りんねを正式に八百万で受け入れよう。僕たちの妹として、よかったね。りんね」
「だうたうたうたう!」
簡単な単語なら喋っても良さそうな年齢なのに、赤ちゃんの様な言葉しか喋れない、それでも身振り手振りなどで僕たちが言ってる事は分かっている様な感じだ。
「よかったね!りんね!私の方がお姉ちゃんなんだから!」
「あぅ~~」
「ねねが小さい頃思い出すわぁ」
この子が邪神の生まれ変わりである事は、大切な人達、ニーアやギムレットさん、アーサーさん達にはちゃんと伝えておこうと思う。
もしかしたら聖女であるクリスタさんはもう全部知っているかもしれない、一番最初にクリスタさんに話をしてみよう。
大切な人達には言うけど、やはり大々的に他の人達に伝える事は控える様にしよう。
さっきもいった通り、許せないと危害を加える人達がいるかもしれないし、邪神を崇拝する教団もいれば、安易に利用しようと考える奴もいる。
聖王国や神聖帝国などは神や女神を絶対的に崇拝していて、邪神などは滅殺対象になることだろう。
最悪国家間の戦争になりかねないし、何故他国にそんな存在がいるか知らせなかったという話になるかもしれないので、アーサーさん経由で王家には伝えてもらった方がいいかもしれない。
今は少しでもこの子の味方になってくれる人が、一人でも増えたらいいなと思う。




