海鮮丼の日
八百万
今日は八百万の名物の日でも、特に大人気になり、そして八百万でしか出せないと言う利点をいかしたメニューが出た日、その初日である。
その料理の名は、やはり海鮮丼、ねね達にはいくらでだすのか?と言われてしまったが、そもそも八百万は常連冒険者さんの差し入れや海神ルーカスさんの知り合いと言う事もあって、漁港から未利用魚、商品にならない魚や形が悪かったり売り物にならない魚なども格安で手に入る、その上領主であるアーサーからのバックアップや王家からのバックアップ、他にも八百万に投資したいとか、うちの作物、家畜、魔物の肉を使ってくれなどの話もガンガン来ている状態で、売り上げ的な事を考えるとかなり儲けている。
今までのこの世界の人間達は活用しようとしなかった食材なども使う八百万は、飲食店にしては異常な売り上げを記録しているのが現実だ。
ならばそれを利用して、ある程度の採算度外視の無理な商品も八百万なら可能なのである。
これも街?都市御輿の一環だとカレーの日やパスタの日、チキンの日など格安の料理の日も開始したが、斗真は日本人、そして安全に料理を提供できるスキルがあるならやはり生魚、寿司や海鮮丼、刺身などの生食も八百万の名物として扱いたい。
だが差し入れや援助などを期待してのメニュー作りはどこかで綻びが出るかもしれない、だがそれ故の未利用魚の採用である。
値段のつかない、自分達で漁師達が食べていた魚を利用しての海鮮丼なら無理なく仕入れて、安く商品として出す事が出来る。
異世界の魚や肉などになる魔物は基本大型だ。
それ故に小型の魚、20キロ30キロ級の魚でも小さいと判断され逃がされる事が多々ある。
その盲点を突いた海鮮丼!
基本使用されるのは、名前もついてないマグロ系の魚やブリ、カンパチ系、エビ、イカ、貝、白身魚やサーモン、いくら、そしてメインはシーサーペントである。
サーモンなどは七色シリーズのレインボートラウトが有名なのだが、海にはその亜種的な存在が沢山いる上、その魚からとれもいくらも種類によってかわっている見た目や味をしていたるする。
まさに味の宝庫なのである。
そんな未利用魚を活用した、海鮮丼、生食になれてない異世界人に果たして通用するのか?
十二星座団 水瓶座アクエリアスのアリア 魚座ビスケスのエイナ
「今日って生のお魚が、海鮮丼が出る日っていってたわよね?」
水色の髪にきりっとした目をした女性、スラっとしたスタイルのいい女性、アクエリアスのアリアが八百万の行列を見て目を細める。
「確かそうだよ。ニーア姉さまが明日は海鮮丼だぁ~ってみんなにいってたし、幸せそうに語ってたよ~」
「なのになんでこんな行列なのよ!?いつもよりおおいかもしれないじゃない!?」
「しかたないよ~、八百万は生魚や生肉なんかも扱った特別な料理を出すみせだもの。しかも食べた人の話によれば、手抜きやミスでそうなってる訳じゃなく、ちゃんとした料理として生肉や生魚を使うんだって。すごいよねぇ~、お寿司だっけ?アーサー様とそのお爺様も愛したと言う異世界料理、お米の上に魚が乗ってる料理って聞いたけど、凄い技術がこもっていて、アーサー様のお爺様は他の料理人に同じように作らせようとしたらしいけど、結局生涯納得がいく味には到達できなかったとかいわれてるよねぇ~」
「そんなの私も知ってるわよ!いつもなら生って聞いてビビッて近づかない様な奴らも、なんなら他の街からも人が来てんじゃないの?生の魚料理が出るってニーア姉さまが言ってから二日はたってるものね」
「斗真がついに生魚の料理をだすぞ~って言いふらしてたもんねぇ~」
「最近じゃ夜の内臓料理もわざわざ食べにくる奴らが増えたものね」
「人族はもちろん、獣人からエルフ、ドワーフ、巨人、魔族に魔物子らもこの街ではよく見る様になったもんねぇ」
「この街にくる子達は、心の傷を負った子が多いからね、中には絶対に人間達と相いれない種族や魔物が多いわ。どれだけ可愛くても角ウサギを肉としてみている私達と一緒よ、一体の魔物が人間と共存できるからっていって、それが種族全体と繋がるわけではないわ。魔物同士、人間同士ですら殺しあうのにこの街の人間ときたら・・・・・」
「また~そんな事いって~、私知ってるよ。コボルトちゃん達におやつあげてるとこ、オネイチャンオネイチャン!ってちょこちょこついてきて可愛いよね」
「・・・・・・・・・いつからみていたの?」
「割とみんな知ってるよ。アテナ様とユピテル団長とかが微笑ましそうに見てたし」
「・・・・ロス・・・・・」
「ふぇ?」
「みんな殺して私も死ぬ!!??」
アリアの髪の毛が逆立ち、闘気の風が吹き荒れる。
「突風が!何事だぁ!」
「また十二星座団の奴かぁ!?」
店のドアが開いてねねが飛び出て来る。
「こらぁ~~~!お店の前での戦闘行為はご法度ですよ!!」
我に返るアリアは顔を真っ赤にしていた。
「私としたことが・・・・」
「ねねちゃん、ごめんね。ちょっとじゃれてただけなの」
「わかればいいの!今日は海鮮丼だよ!こんな日は中々ないよ!」
丁度良く自分達の番がきて、店に入る二人、いつもの料理の匂いとは違い、酸味のある匂いが店に漂う。
素早く出された丼は色鮮やかで、綺麗に色々な魚の身が並んでいる。
「わぁ~綺麗ね!」
「魚の身が沢山だぁ!これは贅沢だよ!」
「お魚さん用の醬油を回しかけるか、別皿のお醤油につけて食べるといいよ!お替わり自由と言いたいところだけど今回はお替わりも銀貨一枚なんだ。ごゆっくり~」
「お米が下に敷いてあるんだね。さっそくこの赤い身を・・・・もぐもぐもぐ・・・・んんっ美味しい!これが魚の生の味!?焼いたものと全然違うよ!」
「こっちはトラウトかしら?脂が甘いわ~!醬油とあうのね~」
「お米!冷たいお米だけど美味しい!それにちょっと酸っぱい!嫌な酸っぱさじゃないや!むしろさっぱりして美味しいよ!」
「これ!赤い身はぎゅっと旨味がある感じだけど、白く脂が入ってるのはとろける食感と味!こってりしてる!このお米と相性ばっちり!!」
「全然匂い気にならないね!こりこりの白い身!うわぁこれデビルフィッシュだって!こんなに美味しいだぁ!これ好き!甘味もある~」
添えられた紙に丼の上に乗っている魚を簡単に説明して書いてある。
「ブリ!この魚も濃厚ね!」
「カンパチ!うまぁ!エビもぷりぷり!どの魚も独特な甘味や脂の味がする!」
「赤身を叩いたネギトロ!これもすっごい美味しい!なんでべたべたした感じがしないんだろう?」
「わぁ!これシーサーペントだってさ!あむあむあむ!んん~~しっとりとろける!そしてご飯をあ~~ん!んんんんんん!!!さいっこう!!」
「これトラウトの卵だって!ぷちぷちで美味しい!これの丼とかないのかしら?いくら?丼?」
「ああ~それも美味しそう!いくら?っていう卵?これとお米で頬張ると!最強!最強だよこれ!もう一つのこれは???ウニ?」
「ああ、あれよ、海のとげとげ」
「あれ食べれるの!?ってあのとげとげの中にこの茶色いのがはいってるのか・・・・・ちょっと見た目怖いけど・・・・・ん?ん~~~~~!!!」
「どう?どうなの??」
「私は好き!?めっちゃ濃厚!!」
「わ、わたしも!あぐもぐもぐ、うん!本当だ!濃厚!複雑で表現しにくいけど、ねっとり濃厚で美味しいわ!」
「こんなの海辺の街でも食べれないよ!!まさに八百万限定料理!」
「海の漁師が腹痛になっても生で食べる理由がやっとわかったわ!でもここなら腹痛にならないのよね!」
「「おかわり!!!」」
海鮮丼の日、八百万の特別な名物の日がまた一つ増える事に。




