輝き鳥の濃厚塩ラーメン リナリア・フォン・グラナダ
折角特注の中太麺を作ったのだから、焼きそばだけで終わらせるのはもったいない、レックスさんの輝き鳥といいレオンさんの地龍といい、最近は貰い物も多くかなり潤っている、悪いなぁと思いつつもありがたく使わせてもらっている。
輝き鳥の肉も凄くいいお肉だし、内臓なんかも美味しそうだ!特にレバー!レックスさんが個体が大きいって言っていた通り、内臓類にも脂肪が沢山ついてて美味そうだ、特にレバーが白レバーよりもさらに脂が強く、フォアグラ化している、多分これ食ったら美味くてびっくりするぞ。
骨も大きく良い出汁が出る事間違いない、と言う事で今回作るのは塩ラーメン!輝き鳥の骨から出汁をとって、具は輝き鳥の半熟卵にキャベツ、輝き鳥のスモークチャーシューに白髪ねぎ、大きめにカットした脂身をサクサクに揚げて添える。
出汁の骨は惜しまずに、頭蓋骨も使う、旨味が出やすい様に大き目の骨は砕いて投入、王玉タマネギにとろ肉昆布、香ネギをいれて、脂身などもいれてガンガン煮る、骨がボロボロに砕ける様になるまで水を時々足しながらひたすら煮る!一緒にとさかも煮て後でトッピングに使う。
物凄く強くいい匂いが鍋からする、豚骨などを煮ると豚骨の強い匂いに鼻が痛くなったりするぐらい強い匂いを放つラーメン屋さんがいるが、果たして鳥の出汁でこんなに強く濃厚な匂いを出す店があるだろうか?作って身近で匂いを感じて思った事が、この匂いはやばい!だ、匂いだけで喉が鳴る、空腹な腹を挑発するが如く、煮込まれた鍋から絶対美味いと確信して止まない匂いの咆哮が漂っている。
塩タレの塩には、宝石塩のエメラルド塩を使う、尖った味のしないまろやかな塩だ、そこに輝き鳥のチーユを合わせ、みりん、月の雫という果実から作った酢を混ぜ、シェルジュエル、酒昆布、タートルもどきでとった出汁、ゼラチン状になっているものを合わせて、塩ダレは完成。
その塩だれに白く白濁として、豚骨の様な見た目になった、輝き鳥のスープを注ぎ入れる。
そこに特注のちょいごわ中太麺、脂身のついたスモークチャーシュー、半熟卵に白髪ねぎ、脂身のフライ、輝き鳥の煮込まれたとさかにフォアグラ化したレバーをソテーして乗せる。
息が荒くなる!ハァハァなんて魅惑的な塩ラーメンなんだ!?いままで調理していてこんなに動悸が上がった事なんて一度もないのに!?早く食べたくて仕方がない!?
おっといかんいかん、ねねとリリの分も用意しなきゃともっていると、ガンガンガンとドアがいつになく乱暴に叩かれる・・・・誰だ・・・・。
「斗真あああああああ!!あけろおおおおお!!!絶対うまいもん作ってるだろおおおお!!」
ああ、ニーアさんか、俺はドアを開けた。
「食わせてくれ!頼む!この匂いはやばいぞ!?下手したら暴徒化するぞ!?」
「おなかすいたあああああ!!すっっっっっごくいい匂いなんだもん!なにこの匂い!?」
「はぅぅぅぅぅぅお腹がキューキューいって恥ずかしいです」
「丁度いま出来た所、輝き鳥の特製塩ラーメンだ!とってきてくれたレックスさんに感謝していただこう」
「はわぁあああああ滅茶苦茶美味そうじゃないか!食べよう!」
「「「「いただきます」」」」
まずはスープを・・・・・くぅぅぅぅ!!極上の塩味!どことなく甘く尖った味はなく、まろやかで、とろりと舌に絡みつく!なんつう美味さだ!がつん!と鳥を感じると共に塩分が高すぎる事もなく、旨味を感じながらも次々と飲んでしまうスープ!
次は麺だ!若干ごわついてる麺がスープを掬い上げ、いい感じに絡む!もっちりとしていて強い小麦を感じるのに、力を貸すかのようなスープの旨味も感じ、総合的に美味くなってる!?
「美味い!美味いよこれ!麺!スープが美味いからか麺からも強い旨味を感じる!それにのど越しがたまんねぇ!」
「すっっっっごい美味しい!ねねは旨味とかわかんないけど、いままでにないくらい美味しい料理って事はわかるよ!これ凄い好き!」
「複雑なのにさっぱりとした後味が不思議です!こんなに濃いのに後口はさっぱりしてるなんて!」
チャーシューも匂いが良く、ぷりんとした脂身もあまく美味い!卵の黄身!言わなくてもわかる濃厚さ!ネギがまたさっぱりさせるのに一役買っていて、サクサクの脂身も楽しさを演出している。
そしてプルプルのとさか!それでいて軟骨がコリコリして美味い!最初はどうかとおもったけど、入れてよかった!それでいてフォアグラ!これがまた一段と美味い!濃厚なのにくどくなく、血なまぐさい何て事は一つもない、フォアグラだけでメインを張れるぐらい主役感が強い!それでスープにとろとろと溶け込むと、味が複雑になり、こんなもん異世界じゃなきゃ味わえないだろって味が口の中に広がる!まさにファンタジー!
「これ!やばいな!レバーだっけ?こんなに美味かったか?」
「太った鳥のレバーはたまにフォアグラと言う美味いレバーに変わる事があるんだ、これは極上に美味い!スープに溶かしても美味い!」
「とさかがこりこりして美味しい!ぷるぷるで好き!」
「どれも美味しいけど、フォアグラが凄い美味しいです!これって貴族様が食べる様な物じゃないですか?」
「否貴族の食ってるもんなんかよりも美味いぞ!あたしは結構呼ばれたりするんだけど、ほとんどの料理が斗真の作る飯よりまずかった、否まずくはないんだけど、楽しくもなんともないんだよなぁ、退屈というか、冒険心も何もない、美味いには美味いんだ、だけど素材が美味いからなのか、料理の腕がいいからなのかがわからないんだよな、だからどれもこんなもんだろって感じちまうんだ」
「お兄ちゃんの料理はどれもビックリ箱みたいで、毎日楽しいんだ!」
「そうそこなんだよ!斗真の飯はどれもマジでビックリ箱なんだよ!食ってる時も驚くし、帰る頃には顔が自然と笑っちまうんだよ!」
「お兄ちゃんの料理を食べた後は、お客様に出すのが楽しいんですよね!この美味しい料理を食べてお客さんはどんな顔するんだろう?って見てると、みんな幸せそうで」
「ねねもわかる~。みんな幸せそうに食べてるもんね!」
「こいつは過去一行列が並ぶかもな!匂いに釣られてくるぞきっと!あたしはクリスタに自慢しにいこうっと」
「ああ!クリスタさんに会うなら、急いだほうがいいって伝えてください!スープ沢山作りましたけど、なくなり次第営業終了なんで、何杯作れるかわからないんですよ」
「他の奴らもからかってや~ろうっと」
喧嘩になるからやめなさいと言いたいけど、ニーアさん相手じゃ喧嘩するって奴は出てこないか、多分100杯は作れるけど、確実に常連さん達は食べれると思う、それ以上並ばれたら困るかも、百人並んだ状態で、告知しようかな、これ以上は何杯作れるかわかりませんって。
その日冒険者ギルドで、今日の八百万の飯がやばい!!と言う情報が流れた、加えてなんでもスープが無くなり次第販売終了するので早めに行った方がいいと言う情報も拡散された。
八百万の噂は隣町はもちろん、王都まで広まっている。
ラウンズのアーサーが治めてる街だ、だから直接奴に聞いて見たのだが、なんと!奴はこんなにも噂になっているのに、自ら足を運んだ事はないと言う、聞けばガウェインに調査をまかせているらしいが、聞けばいまだに調査が終わらず、まだ帰って来ていないとか、何やらきな臭い話になってきたではないか。
クラン グラナダファミリア団長 グラナダ・フォン・リナリア
八百万の店主が有能な人間なら、私のクランにくればいい、街の料理屋なんかよりもよっぽど高い金で雇ってやろう、クランが嫌なら私の領地にくればいい、アーサーに美食の芸術がわかるとは到底思えん、自分の領地でありこれだけ噂になっているのに、動かないのも愚鈍だ、そんな奴の所にいるより、私の所で腕を振るった方が、職人にとってもいいはずだ。
聞けば八百万なる店は貴族、平民関係なく、並ばせると聞いたが、目の前の列を見る限り事実なのだろうな、ガウェインが丁度並んでいる。
「ガウェイン、貴様、アーサーの調査依頼を放棄してここで何をしている」
「うあわばばばば!?びっくりした!なんだ、グラナダの姉御か」
「それで?お前も八百万なる店に並んで何をしている?アーサーに報告しなくていいのか?」
「何って飯を食いに来たにきまってるだろ、アーサーに報告する為に並んで調査してるんじゃないか」
「本当か?貴様大分前からこの街に潜伏していたと聞くが、その間ただのうのうと飯を食っていただけって訳ではないよなぁ」
ガウェインの顔は段々青くなっていく。
「嫌だなぁ姉御!怖い事いいっこなしだぜ!で何が聞きたいんだ?」
「差し当って、この列だ、八百万なる店主の腕前王都のシェフやロイヤルシェフに並ぶともそれ以上とも噂されている、お前の所感でいい答えろ」
「貴族の屋敷や王族のシェフと比べてねぇ・・・・・おらぁこれでも色んな所で飯を食ってる、アーサーの屋敷はもちろん、王族の食事会にも何度も顔をだしてる、そんな俺が個人的に飯を食うのに店、もしくは作ってくれるシェフを選ぶなら、八百万の旦那に作ってもらうね!間違いなく!」
「ほう、随分とはっきり言ったな、それほどの腕なのか?」
「う~ん、見た目は普通の兄ちゃんなんだよ、これが、だが出す料理は本物だ!あんなもん作れるのが二人も三人もいるとは思えねぇからなぁ、この街の飯屋なんか八百万の飯の一つでも真似して出そうって考えても苦労してんのによぉ、肝心の八百万は日替わりで毎日違う飯が出ると来たもんだ、どんだけ美味くても!どんだけ客を魅了しても!次の日にはまた違う飯を出す!しかも次の日の飯にも昨日と同じ衝撃を受けるんだ、ついたあだ名がジャックポッドの八百万亭、味のビックリ箱、桃源郷とマジでびっくりだぜ、それによう・・・・・・ここだけの話、アーサーの爺さんの剣神様が若い頃一度食って、それはもぅぅぅぅぅぅぅぅぅ感動して!生涯その味を求めたって言う、寿司って料理をここの店主は作れるんだ」
「本当か!?」
「声が大きい!いやな・・・実は俺もちょっと食ったんだけどよぉ、ありゃ美味かった!!五つとも同じに見えて全然違う味でな!風味や香も楽しみながらも、一つ一つがそれは違う存在感を出してなぁ、見た目は単純な料理に見えて、あれはちゃんと職人の味だった!出来る事なら俺も腹いっぱい味わいたかったぜ・・・・・くぅうううう~」
「お前!そんな大事な情報アーサーに伝えないとか、殺されるぞ!?アーサーを通じて王宮に報告しないと、我々ですら反逆罪で処刑されかねん!お前の話を聞いて確信した!相手は国家最優先保護対象者だ!数十年から数百年に一人現れるかどうかと言われている、超国宝級の方だ!」
「あれか?伝説の落ち人とか稀人って言われてる奴か?」
「そうだ!ばかたれ!隠匿すれば国家反逆罪だ!」
「うっまぁ今日の飯食ったら報告するよ!護衛は十分みたいだし」
「どういう事だ?」
「どういうも何も、八百万はSSS級の冒険者達の巣窟だぞ、笑う災害の一撃のフィガロに鮮血姫・深紅の衝撃のクリスタ、ディザスター・龍の咆哮のニーアに海神・大陸の半分を制するルーカス、荒人神の大魔導・ライブラのギムレッド、最近じゃ黄金のレオンにタイタンのレックスなんかルーキー達にも大人気だからなぁ」
「邪神討伐戦の生き残りのSSS・・・・・一人で連合国すら相手に出来る化け物達の巣窟・・・・・・」
「どうする?逃げ出すか?姉御?でも俺は絶対今日の飯を食う!まず今日の飯は数量限定な上、もうちょっとで俺達の番だ!ここにいて話に夢中で言わなかったが、匂いがやべぇ!俺は今日の料理食わねぇと、死んでも死にきれねぇ!報告なんて二の次だ!」
この男!ここに来て堂々と命令無視しましたって言ってる様なもんじゃないか!?だが確かに漂う匂いが嗅いだことない香りを放っている!これは抗えない!
「あっガウェインさん!いらっしゃい!」
「おう!嬢ちゃん!二人なんだ席あいてるかい?」
「大丈夫だよ~!今日のご飯は特製輝き鳥の塩ラーメンだよ!レックスさんの差し入れで格安で販売できるんだから!レックスさんを見たらお礼をぜひいって上げてください!」
輝き鳥はわかるが、塩ラーメンとは・・・席に座るとすぐに運ばれてくる。
これはフォークとスープを飲む深めのスプーンで食べるのか?周りには木の棒二本で食べている奴らもいる、あれは確か東国の箸とか言う食べ物を掴む奴だな。
「ぐお~俺は先に食うぞ!ずずっ!うぉ!美味いな!口に入った瞬間にもう美味い!」
ガウェインの奴、当たり前の様に箸を使いやがって、ふむ・・・私はスープから、こくっこくっなんだこれは!美味いには美味いのだが、これは美味すぎる!たかが塩味がなんでこんなに美味い!?濃厚な鳥を感じる!。
次に紐状のこれ、麺とかいったな、これも確か東国にあると聞いた事がある。
ちゅるちゅるちゅるちゅる、!!??これは小麦か!小麦の風味豊かな味!もちもちとしてぷっつりと噛みちぎれる、スープと絡み、鼻を抜ける香がとてもいい!!。
肉!?輝き鳥だが、何故こんなにも香ばしく脂も豊で甘く!ネギがまた口の中を爽やかにする!サクサクのアクセントは脂を揚げたものか?それとギザギザのこれは?ムチムチとしてぷりんとしている!それでいてこりこりとした食感が美味い!
「うめぇ!こりゃ鳥のとさかか!むちむちで美味い!姉御!味はどうだ?・・・・・姉御?」
「こぉ・・・・」
「こぉ?」
「こぉぉぉぉんなに美味い物がこの世にあるとは!!!お前これ食べたか!?」
「この白いのか?」
「食ってみろ!!凄いぞ!!」
「これは・・・・夜の部でも出てるレバーに似ているな・・・・・美味い!?なんだこれは!滅茶苦茶美味い!!濃厚でねっとりとして!ほろほろと崩れる!これはレバーに見えたが全然別物か!?」
驚くガウェインを見て、ねねがクスクスと笑う。
「あってるよ!それは輝き鳥のレバー」
「うぉあってたのかよ!でも待ってくれ嬢ちゃん!俺の知ってるレバーと全然違うぞ!レバーは血の風味があるはずだ、独特のねっとり感もこれは別物だぞ!?」
「お兄ちゃんが言うには健康的なレバーはちょっと血の風味がして、太った鳥さんはそのレバーに脂がついて白レバーって言う、レバーに脂身が混ざった奴になるんだって、それでもっと太った鳥さんになると、脂肪肝、フォアグラって言うとっても美味しいレバーになるんだって、凄く珍しい物だからレックスさんには感謝しないといけないって言ってたよ」
「なるほど、太った事で内臓にも脂が豊かになったわけか!こりゃすげぇ!」
「そのまま食っても美味いし、スープに溶けても味が複雑になり濃厚で美味い!王族でも驚くぞこれは!?」
「そんなラーメンが一杯銀貨5枚で食べれて、替え玉は一人一杯無料だよ!」
「替え玉とは?」
「麺がなくなって、スープが残っていたら、熱々の麺をお替りできるの!」
「まじか!?替え玉頼む!この麺も美味いんだよな!」
「私にも替え玉をくれ!」
「は~い!替え玉2丁!」
ごわごわとした麺を飲む、のど越し!強い小麦の味!いい味だ!そこに妖艶に絡むクリーミーなスープ!半熟卵も濃厚で美味い!引き込まれる!サクサクの脂がまたいい!
気が付けばスープも全部飲み干してしまった!あれだけ濃い味だったのに、しょっぱい事なく最後まで飲んでしまった!
そして水を飲む!この最後の水が凄い美味い!甘露とはこの事!!。
「くっは~!美味かった!!物凄く美味かった!!」
「いくぞ!ガウェイン!急ぎアーサーに伝えろ!!」
「うぇ~い・・・・ちぇ、明日の飯はお預けかよ~、あっ!姉御はこの街に残るつもりだな!?ずるいぞ!自分ばっかり!」
「私がアーサーに報告する義務はない!お前の仕事だろうが!!ああっ!ついでに言伝を頼む!私は当分この街を拠点に活動すると、グラナダファミリアの職員に伝えて置いてくれたまえ」
「自分ばっかりきたねぇえぞ!?」
「調査報告の為戻らなきゃいけないのは私の命令ではないだろ!恨むならアーサーを恨め」
「ちくしょおおおお明日の飯も気になるなぁ・・・・・ああっでも狩ってきた魔物調理してくれるんだろ嬢ちゃん!」
「う~ん、そんなサービスしてないんだけど、みんながお土産に沢山狩ってお裾分けしてくれるうちにそうなっちゃったんだよね」
「まかせろ!美味い食材沢山狩ってくるぞ!大将によろしく頼むっていっといてくれ!」
「無理しないでね!またのお越しを~」
「くぅ!私も好物を自ら狩りにいくか!確か近くにダンジョンがあったな!ふはははははは!!楽しくなってきたぞ!?」
八百万は今日も元気に営業しております。




