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3回目の朝


 あっさおっきると目の前に〜シャンデリア〜


 まじウケる。ほんともう笑うしかねぇ!


 またやり直しだよ!


 流石に昨日は成功すると思ったんだけどなぁ。


 あぁ。二度寝でもしようかな。あたしがぼーっとしていると、コンコンとドアがノックされた。多分ゆいぴーだろう。


「ゆいぴー? カモーン」


 あたしがそういうと案の定ゆいぴーが部屋へ入ってきた。


「おはよ。りなちゃん。じゃあ早速ですが第三ラウンドスタートだね」


「そうだね」


 あたしは重い腰をあげ、さっさと朝の支度を済ませた。


 今回の作戦は昨日2人でやけ食いしながら考えた、もういっそのこと王子の高感度爆上げ作戦だ。


 ダンス踊る前に、そう、つまり今日結婚の約束を取り付けちゃって明日はすっぽかしちゃえっ。という作戦である。


「それじゃ王子の部屋に突撃しますか」


 あたしがそういうとゆいぴーは少し考えて


「なんか持っていったほうがいいのでは?」


 と言った。


 確かに手ぶらで行ってもなんかあれだな。高感度アップもクソもないな。


「だねー、何持ってくかー?」


「悪役令嬢ちゃーん、なんか王子の好きなもの知らなーい?」


 シーーーーーン。


 返事なしかーとあたしとゆいぴーが顔を見合わせて苦い顔をしていると。


「エメラルドとかじゃないですか」


 と返事が来た。


 何だこの答えは!あたしとゆいぴーは顔を見合わせ苦笑いをする。


「ずっと薄々思ってたんだけどさ、サファちゃんって王子のこと普通に好きくない?」


「え、それな私も思ってた」


「何をおっしゃいますの? 私は王子の地位と名声が欲しいだけですけれども」


「ツンデレだよね悪役令嬢ちゃんって」


「ツンデレだな」


「ツン…………何ですのそれは?」


「ツンツンデレデレの略〜。てかカーネリアン王子も昨日の感じ普通に悪役令嬢ちゃんのこと好きくない?」


「え? あたしもそれ思った!」


「だよね!!??」


「これもう悪役令嬢ちゃんが意地悪しないで普通に告ればオールオッケーだよね!?」


「サファちゃんどう!?」


 あたしたちはワクワクしながらサファちゃんの返事をまった。


「…………ダメなんです。私じゃダメなんです」


 思ったより暗い声でそういうサファちゃんにあたしたちは何と言えばいいか戸惑ってしまった。


「べ、別に、私あなた方の困っている様子を見るのも楽しいと言うだけですわよ。王子の好きなもの?甘い物とかじゃないかしら。まぁせいぜい頑張るのね」


 ………………サファちゃんのツンデレ!!


 分かりやすく話題戻してきたな!!


「甘いものね!ありがとサファちゃん」


「甘いもの〜。手作りのお菓子でも持ってく?」


「いいんじゃない?ちなゆいぴーお菓子作れる?あたしは料理たこ焼きか闇鍋しかできん」


「え?作れないに決まってるじゃないか。もとがあれば作れるけど……」


 あれ? あたしたちもしかして、女子力ゼロ!


「まぁこーゆーのって気持ちだし!」


「だよね、あ、そういやこのお城図書館あったよ。料理本とかもあるんじゃね?」


「ナイスゥりなちゃん!」


 こうしてあたしたちは、ノリと勢いでクッキーを作ることに成功した。


 そう、成功した。うん。うん。


「いや、完璧にクッキーだよね私たち天才だよね」


「うん、誰がどう見てもクッキー。これでカーネリアンっちもイチコロだね」


「色んな意味でね」


「あなたがた、まさかそれを王子に渡すつもりではないですよね」


 サファちゃんが恐る恐る聞いてきた。まさかまさかのマッカサー。


「はーーーーー。あたしたち、どこで道を間違えたんだろう」


「お菓子作り初心者なのに無駄に難しそうなスノーボールクッキーとか作ろうとしたからかな」


「その後、味見して不味かったからマシュマロとか入れたら美味しくなるかなってマシュマロ入れたのがダメだったのかもよ」


「いや、さらに味誤魔化そうとしてココア入れたせいで焼けたか焼けてないかわからず、とりあえず生よりはちょっと焦げてる方がっていっぱい焼いたのがダメだったのかも……」


 あたしたちは目の前にあるクッキー(?)を見つめながら、こいつどうしよう……と固まっていた。


「とりあえず、意外と食べてみたら美味しいかも」


 ゆいぴーが全力作り笑顔でこちらを見ながらそう言ってきた。


 仕方ない!


「セーノで食べてみるか」


「え、あなたがた正気ですか?」


「「せーの!!」」


「「かっっっっっっっった!!」」


 クッキーは固かった。それはもう石のように。薄力粉と強力粉間違えたからかな……?


 それでも何とか食べてみたが。


 不味すぎてあたしたちは言葉も出なかった。


 大丈夫ですか……? と恐る恐る聞いてくるサファちゃんの問いに答えられない位には不味かった。


 あたしたちは終始無言でマシュマロを食べ続けた。口に残り離れない苦いクッキーの匂いを消すために。


「私料理できる人全人類尊敬する」


「それな。作り直そう」


 しかし、時計をみるともう五時くらいになっていた。今から作り直してたら絶対間に合わない。にしてもすごい時間かけてすごいゴミを生み出したのかあたしたちは。


「待って、やっぱ時間なくね?」


「よし、いい感じにラッピングして誤魔化そう」


 ゆいぴーももう投げやりになり始めた。


「お二人とも、正気ですか?」


「サファちゃん。大事なのは気持ちだから」


「そうそう。まぁ私のラッピング技術見てみなって」


 そう言うとゆいぴーはテキパキとクッキー(?)をラッピングしていく。


 中身の見えない袋に可愛いリボンでラッピングされたクッキーはなんかいい感じに見えた。


「ゆいぴー天才! これはいける!」


「でしょ! よしレッツラゴー!」


「ちょっと、本気ですか!?」


 サファちゃんが焦ってあたしたちを止めようとしているが、ここまで作って何もしないで明日のパーティーを向かえるわけにもいかない。


「まぁ、渡さないから大丈夫!」


 あたしたちは不安と凶器を胸に抱え王子のいるお城へと向かった。

 


 

 

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