2回目の朝
朝起きると目の前に、シャンデリア!?
あれ……待って……デジャブじゃね?
辺りを見回して見ると、サファちゃんの部屋だった。
確かアタシは病院のベッドで寝てたはずじゃ……?
とりあえず鏡を覗くと、綺麗な金髪の髪に青い瞳の美しいサファちゃんの姿。そして身に纏うは裾長パジャマ!!
まるで一昨日の朝に戻ったみたいだった。一体全体どういうことか。部屋に戻されたのか? それとも昨日のパーティーは夢だったのか? そうだったらめちゃ嬉しいけど。昨日のチアダンスの事は記憶から消したいし。
色々考えていると、突然扉がバッっと開いたかと思うと
「りなちゃんいる!?」
と、ゆいぴーの声が聞こえた。
「居るよー。」
そう言いながらアタシは扉の方に向かう。
ゆいぴーと広い部屋の真ん中らへんで合流すると、ゆいぴーは昨日アタシがパーティー会場から抜けた後のことを説明し始めた。
「あのね、昨日りなちゃんが連行されたあとも、カーネリアン王子がその場を立て直してパーティー自体は続いてね。私はまぁ隙を見てパーティー会場を抜け出してりなちゃん探しにったんだけどさ。全然みつからないらないし、眠くなってきたしで取り敢えず自分の家分からんかったから誰もこなさそうな物置の中で寝てたんだけど。目がさめたら一昨日と同じ悪役令嬢ちゃんの部屋の前だったの。」
「ゆいぴーアタシのこと探してくれたのーーありがとうーーー」
「いえいえ〜」
物置で寝るのはちょっと強すぎるけど。
でもゆいぴーも一昨日と同じとこで起きたって事は、アタシがただ単に部屋に戻されたわけじゃないらしい。
過去に戻ったって事!!?
状況がいまいち飲み込めずに居ると、頭の中に直接声が聞こえてきた。
「おはようございますお二方。」
「この声は!サファちゃん!」
「サファちゃん…………はぁ。はい。そうですわよ。」
サファちゃんはサファちゃん呼びに若干不満があるようだったが、諦めて受け入れてくれたっぽい。意外と心広いな。
「りなさん……だったかしら?」
そえば自己紹介まだだったかも。
「そうそう、アタシはりなで、こっちが親友のゆいぴーことゆいな」
「りなさん。何ですか昨日のおかしな行動は。みていられませんでしたわよ。」
確かに、あの格好でチアダンスはちょっとないな。だけれども!
「アタシ実はさ。ダンス踊れないんだ!サファちゃんダンスの時だけ変わってくれない〜?」
「そんな事できるわけないでしょう。」
即答!
「はい!ケチ悪役令嬢ちゃんに質問です。」
ゆいぴーが突然サファちゃんに話しかける。
「悪役令嬢…………はぁ。何ですか、ゆいなさん。」
意外と怒ったりしないのね、その呼び方。やさしいやん!
「私たち過去に戻されました? もしかして。」
そういえば、この疑問解決してなかった!
「えぇ、まぁ概ねそう言ったところかしら。」
「「何で?」」
あ、はもった。アタシとゆいぴーは顔を見合わせて笑った。
「何で?じゃありまさんわよ。」
婚約破棄はされてないじゃーん。
「あんなのもう婚約破棄されたも同然。いえ、もっとひどいですわ。今後もこのような恥を晒すようなことがあれば、問答無用で今日に戻しますからね。」
どうやら、サファちゃんの納得いく形で婚約破棄回避しなきゃいけないみたいだ。
でもダンス練習するとしたら時間が必要だ。
「もっと前に戻れたりしないの?」
「戻れるのはここからのみですわ。」
「セーブしたとこからって感じだね」
あぁなるほど。確かにこの辺でセーブしてハリセン叩き合ったかも。
「今度こそお願いしますわよ。」
そう言うとサファちゃんの声は聞こえなくなった。
「作戦考えなきゃだね。りなちゃん。」
「そだね。何とかダンス踊らずにパーティーを成功させるしかないよね。」
2人で悶々と考えること数分。
「ヒロインちゃんの好感度でも上げてみる?」
ゆいピーの提案はこうだった。
このゲームのヒロイン、エメラルドちゃんのサファちゃんに対する好感度を上げまくって。つまり仲直りしてエメラルドちゃんから王子に2人ともお似合いだねとかなんとか言ってもらって、王子のサファちゃんへの好感度を上げる。ダンスは、結婚式で踊りましょうとか言って今回はエメラルドちゃんに踊ってもらう。
とにかくヒロインであるエメラルドちゃんから、サファちゃんと王子の恋を応援してもらえば成功するんじゃないかという作戦だ。
「どうかな?」
「良いんじゃない。とりあえずやってみようゆいぴー!」
頭そんな良くないウチらであれやこれや考えったって仕方ない! とりあえずやってみよう!
そう言うわけでアタシはちは、エメラルドちゃんが居るであろうパーティー会場へ向かった。
エメラルドちゃんはパーティーの前、毎回会場の準備をしていた。そこで、明日のパーティーが成功すれば王子はサファイア様と結婚か。と、王子に想いを寄せているエメラルドちゃんは悶々としながら会場準備をする。
そこのエメラルドちゃんの切ない表情が好きなんじゃー!! だけどあそこの音ゲーは最悪。と、会場に向かう馬車の中でゆいぴーはアタシに語った。
会場に着くとアタシたちはエメラルドちゃんを探した。エメラルドちゃんは緑の瞳に茶髪のゆるふわハーフアップが可愛い感じの子だ。
正直パーティー会場は広いし準備してるメイドさんはたくさんいるしで見つけるのは絶対大変だ。
「あ、いたよりなちゃん。」
嘘でした。一瞬でゆいぴーが見つけました。
「ゆいぴー見つけるの早いやばいー」
そう言ってゆいぴーが指さす方を見ると。
なんかすごいオーラ!! ヒロインオーラを放ちまくっている!
エメラルドちゃんの周りにはなんか花みたいなオーラがまとわっていた。
こりゃみつけられる!!!
「よし、突撃してくるゆいぴー!」
「オッケー!私は近くで見守ってる!」
アタシはエメラルドちゃんの方に向かい、声をかける。
「やほーエメラルドちゃん。」
やっぱこう言う時はフランクに行ったほうがいいよね!
エメラルドちゃんが振り向くと同時にアタシとエメラルドちゃんの間にサッと割って入ってきた人がいた。
見ると、アタシからエメラルドちゃんを守るようにこっちを暗い表情で見ている。
この人は確か……ガー、ガー、
なんかカモの鳴き声みたいになっちゃった。じゃなくて。
ガネ、ガネ、そうだ!
「ガーネット!……様! だ!」
「そうですけど。何ですか? サファイア様。エメラルドに何か用事があるのなら、俺が話をうかがいますよ。」
めんどくさっっっっっっっっっ。
そうだ。この人よくサファちゃんからエメラルドちゃん守ってたな。ゲームしてた時はありがたかったけど、逆の立場になってみるとめちゃめちゃめんどくさっっっっっっ!!
「ちょっと見かけたから、お話でもしようかなーって!ガネガネも一緒にどう?」
ガネガネはすんごい疑いの目でこちらを見てくる。
「大したようがないのでしたら、俺たちは準備がありますので。行こう。エメラルド。」
そう言って、ガネガネはエメラルドちゃんの手を引っ張ってこの場を立ち去ろうとした。
「ちょいちょいちょい待って!」
エメラルドちゃんと仲良し大作戦は早々に失敗しそうだった。
まだ一言もエメラルドちゃんと喋ってないのに!