傷の舐め合い、させて下さい
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
ヒューマンドラマですが、読み返すとちょっとあざとい恋愛観があります。
「……」
半泣き状態で道を歩いていたら、先輩に会った。先輩は行儀悪くバー状のお菓子を口に咥え、ただ無表情で貪りながら僕の顔を見る。見詰める事数秒。先輩は食べていたお菓子の端の方を力づくでへし折ると、僕の口目掛けて破片を突っ込んだ。
「ふぁかふぁいふぉうふぁふぃふぃふぉ。ふぁふぃふぃのふぁえふぇ」
「あの……なんて……」
口にたんまりとお菓子を詰め込んだ状態で、これまた行儀悪く口を開く。お陰様で何を言っているか分からない。奇妙な空気に流れ出た涙も引っ込んでしまう。
「泣かない方が良いよ。私の前で。んー……五分くらい彷徨うから、それまで泣くだけ泣きな。そしたらまた戻って来るから」
先輩はそれだけを言うと僕の前から颯爽と姿を消した。稀に見る駆け足だった。
それからきっかり五分後、先輩は戻ってきた。片手には先程口に咥えていたお菓子。封は切られてない。多分この五分間の間に新たに買ってきたものだろう。
僕はと言えば泣けなかった。あの不思議な空気は涙を、負の感情を引っ込ますには充分過ぎるものだったから。
先輩は湿気った瞳を顔を近付けて暫く眺めたてくる。ほんのりと瞼が赤い気がする。しかし問い掛ける前に持っていたバー状のお菓子を胸に押し付けてきた。どうやら『やる』という事らしい。黙って受け取ると、少しだけ笑った。
「泣かない方が良いよ。特に私の前では」
「さっきも言ってましたけど、どういう意味なんでしょう……」
「心が弱ってる時程、一人になった方がいいんだよ? 漬け込む奴がいるから」
先輩は僅かに口角上げて、皮肉げな笑顔になる。言葉通りの悪魔のような笑顔だった。
……言う通りなのかも知れない。弱い心は誰彼構わず縋りたくなる。そしてこういう時の言葉程、後から響く様な罠である事も多い。罠は何時だって甘く、聞こえが良いのだから。
でも……だからこそ……人格が浮き彫りなる。
「私は漬け込む側。悩み聞いた奴に駄賃求めて手を出す輩だよ。だから信頼している人の前か、一人で泣いた方が身のため。しんどい時はお菓子に慰めて貰え。私みたく」
そう言うと、先輩はまた別のお菓子を取り出して、静かに口に入れ始めた。チョコの掛かったクッキーの様だった。
思えば先輩はさっきからずっとお菓子を食べている。僕に会った時からずっと。
「先輩、泣いてたんですか? もし泣いてたなら、僕も泣いて良いですか? さっきの五分間、泣けなかったんで」
「馬鹿言うな。じゃあね」
後に聞いた話だと、僕に会う少し前、先輩は未提出の課題を提出した後だったらしい。それも先輩と折り合いの悪い、厳しい先生の。もしかしたら、先輩も泣いていたのかも知れない。
「傷の舐め合いくらい、させて下さいよ」
しんどい時程お世話になる、お菓子の自動販売機。
あれがあるから、生きていけます。
それは置いといて。国語の教科書宜しく解説でも。
多分、先輩泣いてたと思います。
泣いて、お菓子を食べて、自分で慰めていたと思います。
そこで人と会っちゃったから、縋るつもりだったと思います。
だから『一人で泣け』発現は自分に言ってます。
この後輩ちゃん、結構あざといな〜。と思って見てますよ。
最初は半泣きだったけど、描写見てる限り先輩に気がありそう。
故の最後らへん。弱ってるなら漬け込んで物にしたいという言葉の現れ。
最初は確かにしんどくて、半泣きだった。
けども先輩が優しくしてくれるなら甘えるつもり。
切り替えはえーな。先輩のが心配だよ……。