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川縁を歩く夢を見た
「長い坂を上り、海を見ている」
そう歌う声が聞こえていた
曇り空の下
けれど何の不安もなく
ただ歩いていた
近くを大きな川が流れている
灰色の建物が並ぶ道を歩きながら
心は凪いでいた
最後に海を見たのは
いつだっただろう
もう何年経つか
友人の結婚式の帰り
電車から見たのだったか
それとも更に前
好きだった人に会いに行き
会えずに眺めた海だろうか
大きな川の川べりを歩いたのも
いつだったか思い出せない
もちろん夢だから
知らない町の
知らない川
あの川がどこかにあるのか
行ったことがあるのか
わかりはしない
ただ
久しぶりに心が凪いでいた