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ねむの木
毎年花が咲くのを楽しみにしていた
合歓の木
まだ花の時季ではないけれど
ふと思いたって眺めに行った
長い石段を上り
木があるはずの場所を見た
景色は変わってゆく
人は死ぬし
街の店や
家々も移り変わる
人より長く生きられるはずの木も
なくなってしまう
夢の様に美しい花
人に話す時にそう伝えた
夏の花
葉が繁っていた斜面には
むき出しの土と
ただ切り株だけが残っていた
永遠に続くものはなく
それは救いでもあるのだけれど
産まれる前からあった
死んだ後にも残ると思っていた
今はもう遠い
夏の夢