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「うどん屋娘」を聞いた
懐かしい歌を聞いた
十九の頃に初めて聞いた歌
半年と少し先に二十歳になる頃
その二十歳が遥かに遠く感じた頃に
二十歳の可愛い先輩が
好きだと言っていた歌
いつの間にか二十歳は遠く過ぎ去り
あの先輩に会うことのないまま
長い時が過ぎた
変わらないのは木々の緑が見せる
若葉の色の美しさ
それだけは遠い春と同じよう
誰かと会うことすら減り
河原で輪になって歌うことも無くなり
空の高さに見上げることさえ怖くなっていた
そんな今
懐かしい歌を聞いた
まだ二十歳とは言えなくなって久しいけれど
まだ生きている