閻魔娘の思いのままに(花)
此処は魂が甦える場所消える場所
良い魂は還れ、悪い魂は消失する
全ては閻魔の差配
そう、今は私、大王花が閻魔様!!!
私のパパは閻魔だけどママは普通の人間。
なのに閻魔代理なんてやってる。
正直荷が重い
誰かの人生(終わってるけど)背負うなんて
将来左右しちゃうなんて怖いじゃん?
全てを消滅させる事も心が痛い
でも悪事を働いた人が還った後、更に悪さして誰かが傷付いたらと思うとかなり嫌!
あーもー判断できない!!
真面目でも無く
要は、良い人でありたいだけの狡い奴です。
何でパパは代理に私を指名したの…
って言っても基本世襲制だからなんだけど
そんな事を考えていると
いつもの声が聞こえてきた
わぁわぁわぁ〜!神様、仏様、
未来の閻魔様〜♡
私の元に東江怜様が向かってくる
いつ見てもカッコいい!
引かれても困るから様呼びは心の中で
呼ばせてもらってます♡
「おい、小娘!またこんな仕事してタダで済むと思ってんのか?」
「ごめんなさ〜い」
口は悪いけど、いつも私の代わりに
仕事を進めてくれている
実は優しい頼り甲斐ある人なんだよね〜
誤解されやすく評価は分かれそうだけれど
私は少なくともそう思っている。
「ほら、そこ、右、次左だ、次も左」
怜は次々と指示を出していく
仕事中に不謹慎だけど…カッコいい♡
ん、右左左?
「え!?待って下さいよぉ〜簡単に決め過ぎですってぇ」
一人は確か他人の借金を背負って
住むところも無くなって仕方なくって…
だった様な…
「さっさと進めないと帰れないだろ、アホか」
「ア、アホって何ですか!?私、一応閻魔代理なんですよ!」
「一応な、俺はお前とここ任されてる責任者なんだよ!」
ごもっともです。
おんぶに抱っこで
名前だけの奴で本当ごめんなさい。
「人殺しは消滅で良いですけど…強盗はお金が無くて仕方なくって…」
「甘い!絆されんな!そんな事言ってたら警察いらねぇーんだよ!」
「怜さん、そんな怒らないでくださいよぉ〜」
「いいか?お金が無くても真っ当に生きてる人間も居るんだし、また問題起こされても責任が取れん!左だ左」
「…わかりました〜」
怜様に従っていよう
今までの失敗の責任は
全て怜様が受けてくれている
襲いかかってくる人や泣く人様々だ
それを全て背負ってくれている。
私が傷付かない様に。
本当に物語に出てくる騎士様の様にカッコいい
あ、でも剣では無く主に武器は扇子だけどね。
そこがまた…カッコ良い!!!
閻魔代理になってから約三ヶ月
私はパパにお願いをしていた
怜様と結婚したい、と
♢
あ、怜様♡
いやぁ、本当にカッコいい
彼女が居ないなんて幸運以外の何者でもない
仕事が終わると全力で走り職場の自動ドアの前で待つ。
怜様は早く帰るからね…なんて思いながら
息を整えドアの前を見ると丁度、怜様が帰宅する所だった。
絶対逃すものか!とぶんぶんと手を振る。
ここは交通の便も良く
流通や商業が発展している都市に比べると劣るが
人通りが多い。気付いて!!!
「怜さーーーーん」
あ、そうそう、
怜様本人にはさん付けで呼んでるのは他にも理由がある。重いかなって思いと、立場的に様付けはいけないかなって思っているんだけど
たまにポロッと出そうになるのよね!
「……」
あ、今こっち見たのに無視した
絶対見たよね?今
「ちょっと、ちょっと怜さん!無視は無いです!無視は!」
「小娘は早く家へ帰れ、俺は予定があるんだ」
よ、予定!?予定って何?もしや女!?
内心は焦りながらも動揺を見せまいと平静を装いスタスタ歩く怜様に付いていく
「どうせ一人でお酒、飲むんですよね〜?」
「…悪いか」
おっ、やったー!女じゃない!
「私が注ぎますって〜」
「缶だ、注がない」
「え!注ぎましょ?私が注いだらもっと美味しくなりますから!」
「…ばーか」
「む、ばかって言わないで下さいよ!本当に馬鹿になりそうです!こう見えてそこそこ勉強は出来るんですからね!」
「はいはい」
返事を聞きホッする
側から見たら喧嘩して見えるかもしれない
この状況も私は楽しいし嬉しくて
もう少し一緒に居たい
帰れって言われないから
付いて行ってOKだろう、きっと
怜様なら来て欲しく無い時は
ハッキリと付いてくんなとか帰れとか言うと思う
わー、ドキドキしてきた
初、怜様のお家…
立派!!!
背の高いマンションへスタスタ入って
いく姿はもう本当にお似合いだった
性格よし、顔よし、
責任者だし
うち、お給料良いからお金もある…ってパーフェクトじゃん!!!
いやー、パパが閻魔で良かったかも
コネが無いと会話すら無理ね
権力でも何でも使えるモノは使って婚約者になる!
ガチャリと鍵が鳴り扉が開くと
怜様が口を開いた
「小娘、警戒心なさ過ぎじゃないか?…一応俺も男だぞ?」
ええ?いつも小娘!って言うから
意識されてないと思っていたのに…!?
私は隠れてほくそ笑む
…くくくくっ!!
「…そうですねぇ、怜さんも気を付けた方が良いんじゃ無いですかねぇ」
「ん?何をだ?」
「何でもないです〜」
言葉を濁し、そうかそうか…と
部屋を見渡す
「そこ座れ」
「はーい」
リビングにあるL字の黒いソファ座り
テーブルに菓子やジュース、酒を出される
怜様が酒を飲みつまみを食べ
テレビを観て良い気分で寛ぎ始めた頃
意識してくれているのかも思えば
家に入っても特に何も無く
少し悲しくなって来た
「ん?」
「なんでですか〜?」
「……は?」
「私に魅力無いですか?」
ここまで来たら勢いだ!!!
ガバっと抱きついて来て押し倒す。
「は?」
「さ、触って欲しいんですぅ」
手を繋いだり…その、キス…したり…
「どういう?」
「女として見てほしいんです〜!」
「いや、ちょ、ま、え?」
「パパには許可取ってますぅ〜後継産むまで…それまで閻魔代理になるなら、交際OK!寧ろ責任取れって言ってました〜!」
「…あんのクソ閻魔…そういう事か」
「……怜さん、私優良物件じゃないですか♡」
「小娘、何言ってんだよ…俺はぜってぇ閻魔の策にはのらねぇからな!」
「そんな事言わずに!!」
「言うわ!!」
ガバッと半分起き上がり怜様を見る。
思いを込めながら。
「怜さんの事が好きなんです!大好きで仕方がないんです!」
「す、す…だい…!?…いや、わかってねぇー」
「お前、人間とのハーフだろ」
「はい」
「…お前の父親と母親見て何とも思わねぇの?」
「……え?」
パパとママを見て?
「お前が慕ってくれてんのは、嫌でも分かるけど俺とお前は寿命が違うだろ」
確かに人間とのハーフだ。寿命も違うだろう。
だけど…、
「…じゃあ、それ抜きにして…私の、事は?」
は?
「寿命が同じだったら!?」
同じだったら、付き合えるの?結婚できるの?
好きになってくれるの?
期待しても…いいの?
「か、可愛いとは思ってる、っ…周りをくるくるついて来て
犬みたいだし?か、勘違いすんなよ!…そうじゃなきゃ…面倒なのに助けたりしねぇ…」
か、可愛い…。
犬と言われても嫌な気持ちは無かった
だって、だって…
その、犬っていうのは照れ隠しなんですか?
もう何なんだろ…顔が真っ赤ですよ?
「…そ、そうなんですか…嬉しいです」
おい。
「お、おい…何喜んで…」
「嬉しいんですっつ!可愛いと思ってくれているんですよね!?」
「好きです」
伝えたい言葉が自然と出てくる。好きだ。と…
「だから…それは、答えられねぇって」
「怜さん、忘れてません?」
「……」
「魂は還るんです」
そう、還る。
「私を何度でも迎えに来て下さい」
何度も何度も…
「記憶を失っても私は何度でも好きになります」
自信があります。
「って言ってみたかったんです♪
けど、私は閻魔の娘ですし!融通効きますって!」
「おい、ちょっと待て」
「はい?」
「融通ってなんだよ」
「記憶、閻魔の権限で記憶消さなければ大丈夫です!なので次期閻魔代理になって下さい!まだまだ先ですが」
「俺の切ない気持ち返せよ」
「えー?」
「えー?じゃねーわ」
なんなんだ
「好きです」
「それ、さっきも聞いたし…俺も、寿命の事さえクリア出来るなら…考えてみても…いい…かもな…」
「え?何です?もう一度…」
「言わねー」
もう一度聞きたくて、催促したけれど
そっぽをむかれてしまった。
「ハッピーエンドですね?」
「…ちょ、まだ決まってねーし、恥ずかしいわ」
恥ずかしくても
ハッピーエンドはハッピーエンドですからね!
これから楽しみですね!