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キーマカレー?


 家に帰ると、姉さんが晩御飯を作っていた。


 トントントンと、リズム良く包丁を扱い綺麗に野菜を捌いていく。


「ただいま、姉さん」


「おかえり碧、ちょっと後で話があるんだけど良いかしら?」


「別にいいけど……」


 一体何事だろうか?


 玲奈はこちらを振り返ることなく手を動かしていた。

 どうやら玉ねぎを切っていたみたいだ。


 あれ、少しおかしくないか?


 俺はふと疑問に思った。

 リビングに入った途端、キッチンの方からカレーの匂いがしてきたのだが、姉さんの手元には微塵切りになっている玉ねぎの姿があった。


 普通のカレーならくし切りだと思ってたのだが、珍しくキーマカレーでも作るつもりなのだろうか?

 でも、その割にお肉はひき肉じゃないようだ。


 それに、玉ねぎはもう既に微塵切りになっている気がするんだが……姉さんが手を止める様子はなかった。


 そんな姉の様子に、俺の背筋はゾクリと震えあがる。


 ヤバイ、なんか分からないけど、絶対に良くないことが起きる気がするんだけど……


 まぁ、とりあえず今は何も考えないようにしよう。


 俺は自室に戻って着替えを済ませると、食事をするための準備を整えることにした。



⌘⌘⌘…


「うわぁ、オイシソウなカレーだな・・・」


 食卓に並べられたのはやはり普通のカレーだったようだ。

 しかし、玉ねぎの姿は見当たらなかった。


 あそこまで細かく切られてたし当然だよな……

 きっと、このルーの表面で不自然にポツポツと出ている、もの凄く小さな物体がそうなのだろう。


「碧……」


「はい、スミマセンでした!」


 姉さんの冷ややかな声が聞こえてくると、俺は反射的に頭を下げていた。

 もはや何をしたかなんて関係ない、とにかく謝るべきだと本能が叫んでいる。


「なんで謝るのよ?」


「へ!?、怒ってたんじゃないの?」


「別に怒ってはないわよ。ただ少し聞いておかないといけないことがあっただけだから。

 その様子だと何の話か見当もついてない様子ね」


 まさにその通りだった俺は何度か頷いた。


 すると、姉さんは深いため息をついたあと、自らの携帯を触り始めると、ほんの数十秒で俺の方に画面を見せてくる。


「あっ…………」


 それはRoeleのミュージックビデオだった。姉さんは動画を少し進めてたところでストップをする。

 その瞬間、俺は今回の話の内容を理解した。


「ここに今、ドアップで映ってるこの男性、少しメイクはしてるけどどう見ても碧よね」


 いやぁ、我ながら写りが良いもんだ……


「よっ、世の中、随分と似てる人がいるもんだなぁ」


 俺は無駄だと思いつつなんとか誤魔化しを試みた。

 しかし、姉さんはニヤリと口角を上げて追い討ちをかけてくる。


「なるほどね……じゃあこの前、碧がメイクしてた姿見たんだけど、それはどう言い訳するつもり?」


 はい、そうでした……

 撮影の初日の日、完全に見られておりました!

 しかも、有難いことにこの動画通りのメイク姿ですこと、ハッハ、もう言い訳のしようがありませんな。


 ってな訳で俺は潔く諦めることにした。


「ごめん姉さん、これはちょっとした事情があって、ですね……」


「まぁ、そうでしょうね。

 ふぅ……それにしてもあの有名なRoeleの正体が音葉ちゃんだなんて驚いたわ。どうりであそこまで可愛い訳ね、かなり可笑しいと思ってたのよ」


 どうやらそっちもバレてしまっていたようだった。

 そして、そうとなれば五十嵐さんと音葉の関係にも察しがついてしまったことだろう。


 最近よく思わされるけど、姉さんに隠し事はホントに無駄だな。


「それで、どういうことか説明してくれるのよね?

 もちろん、全部!、包み隠さずに教えてね」


 姉さんからは謎の圧迫感が感じられた。もう俺に黙秘権は残されていないようだ。


 後でバレてしまったことを音葉に謝っておこう……

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