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例の計画を進めよう


 体育祭も終わり、ひとまず俺の学校生活にも落ち着きが戻ってきていた。

 それなりに楽しめたけど、ホントに心身共に疲れた1日だった。

 

 音葉にはあの昼休み以降、出会うことはなかったが、それは俺が最初に決めた約束事を守ってくれていたのだと思う。

 心の何処かでは、もう一度声をかけてくれるんじゃないかと期待していた部分もあって、本音を言うと少し残念だった。


 でも、彼女も彼女なりに楽しんでくれていたようで、後からメッセージを送ってきてくれた。

 

 —— 碧、今日は本当にありがとう!凄く楽しかった。

 それと今日の怪我の方は大丈夫そう?結構引きずられてたから心配になっちゃって……でも、諦めない碧の姿もカッコ良かったよ。

 また、今度の休日、仕事の都合でにはなっちゃうけど、会えることを楽しみにしてるから。——


 何これ、可愛いかよ……


 さらにその文章の後には、俺の学校で撮ったであろうピース姿の音葉の写真が付けられている。

 それを見た瞬間、俺の指は無意識のうちに保存ボタンを連打していた。


 ハッ!、まるで俺がヤベェやつみたいじゃねーか。


 そう思って我に返ったあと、少し悩んでから念の為もう一度保存ボタンを押しておくことにする。


 少し悔やまれるのは、彼女が身につけていた黒い帽子が少し顔を隠してしまっていたということ。

 どちらにせよ可愛いことには変わりはないんたけど……



 体育祭を終えた翌日の学校ではいつも通りの授業が行われていた。よくよく考えると体育祭が平日に行われていたのにも関わらず、随分と見に来てくれた人が多かったと思う。


 そして、今日の昼休みにいよいよあの作戦を決行する。


 その為には先に邪魔者を退けておく必要があった。


「天音さん、ちょっといいか?」


 授業の休み時間のタイミングで俺は天音さんに声をかけた。

 すると、普段遠目から天音さんのことを伺っている隠れファンクラブの人間達の視線が一気に俺に向いた気がした。


「くそぅ、アイツ、我らの天音さんに声をかけるなんて……

 まぁ、いいあんなやつどうせ適当にあしらわれて終わりだろ」


 中山君を含めそんな声が聞こえてきたが、今は無視しておこう。

 そんなことよりも、今はもっと重要なことがある。


「……碧君、私に何の用かしら?」


 いきなり名前呼びだったことには驚いたが、律真と呼ばないのには、姉さんが関わってそうな気がするな。


「あ、アイツ名前呼びだと!?」


 そんな、事情を知らない外野の生徒達の驚愕に満ちた声が聞こえてくる。


「天音さん、話の前で悪いんだけど律真って呼んで貰ってもいいかな?」


「えっ、それはちょっと、玲奈さんのこと呼び捨てにしてるような感じがして……」


 やはりそうか……


「じゃあ律真君とかならどうだ?」


 しかし、天音さんは首を横に振った。


「やっぱり、失礼な気がするのよね」


 ホントに天音の中での姉さんって、どんな存在なんだよ。

 神聖視とまではいかなくとも、その一歩手前までは確実に来てるよな。


 バイト先の先輩ってそんなもんなのかもな……


 まぁ、よく分からんが、とりあえず本題にはいるか。

 俺は周りに聞こえないように少し声のトーンを落として喋りかける。


「分かった、そっちはとりあえずそのままでいいや。

 それより用件の方なんだが、今日の昼休み屋上で弁当食べるのやめとかないか?」


「私は別に貴方と一緒に食べてたつもりは一切ないんだけど……」


 言い方からして、そう捉えられてしまったが細かいとこは気にしないことにする。


「実は今日、屋上で予定があって来ないで欲しいんだ」


「言っとくけど屋上は公共の場よ。私物化することは断じて許さないわ」


 天音さん、ホントに結構屋上気に入ってたんだな……

 そうじゃなくてだな、今日はなんとしても止めなければならない。


「そこをなんとか頼む」


 俺は頭を下げた。

 すると天音さんはポツポツと喋り始める。

 

「屋上に行くなと言うのであれば、それが納得出来る理由じゃないと嫌だわ。どちらにしても、この教室でなんか食べたくないし。一応、食堂っていう手もあるけど、私あんまり人が多いとこ好きじゃないんだよね。……ってなわけだから」


 そう言ってから手振りで向こうに行けと命令されてしまう。

 姉さんの弟だから甘めに見てくれると、そんな甘い考えを持っていただけに少しだけ期待外れだ。


 俺は一旦出直そうと自分の席に戻ろうとする。

 すると、その去り際に「後で人気のないところで話は聞くから、ちゃんと教えてよね」

 俺にしか聞こえないくらいの小さな声でそう言ったのだった。


 なんだ、気をつかってくれただけだったのか……

 俺は天音さんに心の中で感謝した。

 

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